WorldRX世界ラリークロス選手権の公式サポートシリーズとしてFIAが推進する完全電気自動車カテゴリー『Projekt E(プロジェクトE)』に向け、オーストリアのR&D企業STARDが開発した“REVelution”キット搭載のEVフォード・フィエスタRXスーパーカーが、同社代表を務める元WRC世界ラリー選手権ドライバー、マンフレッド・ストールの手で記念すべき競技イベント初優勝を飾っている。
WorldRXのプロモーターを務めるIMGと、シリーズ参戦のみならず運営にも深く関与する技術パートナーのSTARD(Stohl Advanced Research and Development)は、2019年WorldRX第9戦ラトビア・リガのイベントでこのEVラリークロスカーを公式にアンベイルし、2020年からの併催クラスとしてEVカテゴリー創設を目指してきた。
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このフルEVラリークロスカーは、現在のラリークロス界でトップカテゴリーとなる“スーパーカー”が搭載する600馬力級の内燃機関に準じたパフォーマンスを標榜し、STARD自身がWorldRXで走らせてきたフィエスタEvo.4のボディとシャシーをベースに“REVelution”と呼ばれる電動パワートレイン・キットを搭載。150kWを発生する3モーター構成で、総合出力は612馬力にも達している。
開発を担当した彼らが“electRX”と呼ぶこのフルEVフォード・フィエスタRXのデモカーは、これまでにもテストやエキシビジョン・イベント参戦で多くのマイレージを重ねてきたが、来月スウェーデン・ホーリエスでの開幕が予定される2020年WorldRXシーズンを前に、ハンガリー中部の小さな村カクチで開催されたハンガリー国内選手権に同車を持ち込み、最終検証を兼ねて実戦エントリーを果たした。
その7月中旬のイベントでステアリングを託されたSTARD代表のストールは、WRCの第一線から退いた後もWorldRXを戦い、マックス・プッシャー代表率いるMJP Racing Team Austriaのフィエスタなどをドライブしてきた。
週末を通じてフォード・フィエスタRX ElectRXのキット性能とパラメータの検証、信頼性の最終確認をテーマに戦ったストールは、クオリファイ、セミファイナルと通じてフロントランナーとして駒を進め、最終的にファイナルではアウディS1 RXクワトロに乗るEuroRXレギュラーのタマーシュ・カライに競り勝ち、記念すべき電動ラリークロスマシンの公式競技初勝利を挙げた。
「昨年のリガで開催されたWorldRXイベントで、この“REVelution”コンセプトを採用したマシンをお披露目して以来、我々のエンジニアはパワートレイン・キットのシステム内容と機能を、とくにユーザーフレンドリーの面に着目して改良し、最適化を続けてきた」と説明するストール・グループ代表であり、同車の開発ドライバーも務めるマンフレッド・ストール。
「ここカクチでの我々のテーマは、ドライバーの視点から実際のレース週末を想定して、キットに施された最終変更がコンペティションの状況を通じてきちんと機能するかを検証し、承認を与えることだった」と続けるストール。
「昨年9月から各地でテストを続け、ヘイデン・パッドンらを始めとする数多くのプロフェッショナル・ドライバーにステアリングを託したおかげで、正直なところ、パワートレイン・システムのドライバビリティは従来のものとはまったく別次元のものに仕上がっている」
「個人的にも、このフィエスタElectRXをドライブすると、ほかのどんなマシンよりもドライバーとして大きな喜びがある。このEV車両とともに表彰台の頂点にカムバックすることができたのは、本当に素晴らしい経験になったよ」
ストールとともにSTARDを創設した現CEOのマイケル・サコウィックも、今回の結果を受け、次のように語っている。
「2020年は全世界にとって、非常に困難で不確実な時期となった。その時間を経て、こうしてトラックに戻れたという事実も本当に格別なものだ。そして我々のフィエスタElectRXは、パドックの面々やライバルチーム、多くのファンに、とてもポジティブな反応で受け入れてもらうことができた」
「それに、大成功と言える検証結果を手にできたことも望外の喜びだ。我々は皆、このコンセプトの開発作業に膨大な情熱を燃やしてきたし、信念を持って取り組んだ。ここに記念すべき歴史的な一歩を記せたことをうれしく思っている」
新生電動ラリークロス・シリーズのProjekt Eは、8月20~23日開催の2020年WorldRX開幕戦スウェーデンで初の実戦を迎える。
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