マニアック評価
レクサスのスポーツクーペ「RC F」がマイナーチェンジを受け、新たなモデルも追加された。レクサスの「F」モデルは、「公道からサーキットまでシームレスに走りを楽しめる」ことをコンセプトに開発しているが、もはやサーキット専用とも言える「パフォーマンスパッケージ」を新規設定したのだ。そのパフォーマンスパッケージに富士スピードウェイのレーシングコースで試乗することができたのでお伝えしよう。
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大馬力のマシンを意のままに
パフォーマンスパッケージはスーパーGTに参戦するGT3マシンのRC Fやデイトナ24時間レースへの参戦車両など、モータースポーツで培った技術を応用したモデルだ。CFRP製のボンネットやカーボンセラックブレーキ、チタンマフラー、固定式リヤウイングなどを備え、運動性能を追求している。目指すところは限界領域における優れた操縦安定性の実現というわけだ。
レーシングコースでの試乗は残念ながらウェットで、パフォーマンスパッケージの持つ本来の力量を感じることはできなかった。だが、アクセルペダルでライントレースをコントロールできる扱いの良さは体感する。またV型8気筒でありながら、ノーズの重さを感じさせず、そして7000rpmまで気持ちよく回るNAならではの高回転パフォーマンスなど、随所にそのレベルの違いを感じさせるところがあった。
RC Fはリヤデフに世界初の機械式左右トルクベクタリングをするTVDを搭載しているが、このパフォーマンスパッケージにはトルセンLSDを搭載し、ナチュラルな動きをドライバーのコントロール下に置くことを狙いとしている。
こうしたスペックや開発の狙いからすると、このパフォーマンスパッケージはサーキット専用モデルと言っていいだろう。レーシングカーを公道も走れるようにディチューンしたくらいのイメージだ。車重もこのパフォーマンスパッケージは70kg軽量化され、突き抜けたスパルタン仕様のモデルだった。
運動性能のさらなる向上
一方で、パフォーマンスパッケージ以外の「RC F」では、レクサス本来の公道からサーキットをシームレスに走れるというポイントに磨きをかけ、そして「カーボンエクステリア・パッケージ」を設定している。このカーボンエクステリア・パッケージは名称のごとくRC Fに可動式のリヤウイングを装備し、通常はトランックリッドに格納しているタイプ。またボンネットはパフォーマンスパッケージ同様、CFRP製を装備する。そして、リヤデフはTVDを装備したモデルだ。
RC Fは従来モデルから20kgの軽量化をし、レスポンスに優れたハンドリングと限界領域でのコントロール性を目的に、タイヤも新規専用開発している。ミシュランはRC F専用タイヤとして金型を起こし、市販のパイロットスポーツ4Sとは異なるトレッドデザインを持つ専用タイヤを開発。採算度外視で、レクサス、ミシュランの技術者のプライドをかけて専用タイヤを設定したということだ。
ポイントとなるチューニングでは、その専用タイヤのほか、エンジンマウント、サスペンションメンバーブッシュ、ステアリングブッシュなどの剛性をあげ、サーキット走行においても操縦安定性を狙った仕様としている。
エンジンではエアクリーナーの形状変更、スロットル制御変更をして出力をあげ、レスポンスを向上させている。またデファレンシャルをローギヤ化し、サーキットにおけるアクセルでの車両コントロール性の向上を狙っている。
このカーボンエクステリアパッケージは、レーシングコースで3ラップのみ走行したが、ウェット路面ではそのパフォーアンスを感じる間も無く、コースアウトやスピンをしないようにコントロールするのがせいぜいだった。ただコーナーによっては、スロットルのコントロールで積極的にタックインが使えることもわかり、もう少し試乗してみたいと思ったところで終了した。そのため評価は難しいが、パフォーマンスパッケージ同様、操舵角は一定のままでも狙ったラインへの出し入れが可能というコントロール性は理解できた。
エンジンは5.0L・V8型のNAで、481ps/546Nm。驚くような数字ではないが、レクサスは数字に表れないすっきりとした奥深い走りを信条としているから、このパフォーマンスになんの不満があるのだろうという印象だ。富士スピードウェイというレーシングコースでも、有り余るパワーと気持ちよさを感じられるわけで、数字では語れない性能を磨いていることがよくわかる。
RCにも試乗
この日また、2018年10月にマイナーチェンジした「RC」の公道試乗も同時に行なっていた。こうしたRC Fのマイナーチェンジを経験すると、RCにもそのキャラクターのベクトルが共通であることを感じる。一般道での走行においてもスロットルによるクルマの動きがコントロールできるようになっているのだ。
近年は、電子制御の発達もありクルマの挙動を電子制御しているモデルが多い。タックインなどは皆無だし、ニュートラルステアと感じさせるモデルが多い。そうした中、RCは操舵角を一定に保ったまま、アクセルを開けていくと徐々にアウトへ膨らむ、また閉じればイン側へ切り込むなどコントローラブルと言えばそうなのだが、市販車両でそうした動きをするモデルは珍しいと思う。
同じトヨタグループのクルマでレクサスRCやRC Fでは、そうした性格を目指し、そしてスープラは、アクセルやブレーキで動かすというより、ステア操舵の方向にしか車両は進まない。つまり同じメーカーでもスポーティなハンドリングの方向性はいろいろある、ということになると思う。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
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