1974年の初代登場からずっと、Cセグメントハッチバックのベンチマークとして人気のゴルフ。その8代目が本国での発表から少し遅れ、ついに日本にもやってきた。初代から変わらぬ、実用性とシンプルでクリーンなデザインの両立という基本コンセプトのもと、電動化とデジタル化が進められた新型ピープルズカーの走りとは?
全長以外は縮小された、良心的ボディサイズ
1974年の発売以来、世界各国で累計3500万台以上、日本で約90万台を販売してきたピープルズカー、VWゴルフが8代目にフルモデルチェンジした。
思いおこせば2013年、ゴルフ7の発表会は国立代々木競技場第一体育館で、初代ゴルフのデザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロ氏と、当時のVWのデザインを統括していたワルター・デ・シルヴァ氏が来日してトークセッションを行うなど、大黒柱のお披露目にふさわしいそれはそれは盛大なものだった。
あれから7年、2015年のディーゼルゲートを経て電動化の波が一気に加速する。2019年のフランクフルトショーではVW初の量産BEV「ID.3」をワールドプレミア。同社の新しい電動プラットフォーム・アーキテクチャー、「MEB(モジュラー・エレクトリックドライブ・マトリックス)」をベースしたもので、ショー会場で現車を見ながら、これが新世代のゴルフになるのかと、少し複雑な想いを抱いていた。
しかし、ショーからわずか1カ月後の2019年10月、8世代目のゴルフが発表された。新型コロナなどの影響もあって日本にやってくるのに随分と時間がかかったし、残念ながらド派手な発表ができる環境にもないが(仮に予算があったとしても代々木競技場はオリンピック会場なので使えないだろうし)、いずれにせよ待望の上陸である。
ボディサイズは全長4295mm、全幅1790mm、全高1475mm、ホイールベース2620mm。これは先代比でそれぞれ+30mm、-10mm、-5mm、-15mmと全長のみ延びたもののそれ以外は縮小と、欧州車全体としてボディが拡大傾向にあるなかでピープルズカーらしい良心的なサイズにおさめられた。ボディ骨格は先代同様の横置きエンジン用モジュラープラットフォーム「MQB」をベースに、サブフレームまわりなどを強化した改良版が使用されている。
エクステリアデザインは先代よりもシンプルな面構成でさらにシャープになった印象だ。ボディサイドのスライスラインは、先代ではドアハンドルの下に配されていたが、新型では位置を高め、ドアハンドルを経由してテールランプへと一直線に伸びている。初代ゴルフから歴代モデルに受け継がれているブーメランを思わせる太いCピラーは、新型でも継承された。また空力特性を改良し、Cd値は先代の0.3から0.275に低減している。前後に配されたVWのエンブレムは2020年に変更されたフラットで細身の新デザインのものになった。
全グレードが“電動化モデル”に
新型のハイライトの1つがデジタル化だ。物理スイッチをできるだけ廃してディスプレイを中心としたコックピットは、直線基調のシンプルな造形。ドライバー正面のメーター類は10.25インチの液晶ディスプレイに、その右側には灯火類&デフロスター用のタッチパネルが備わる。そしてダッシュボード中央には10インチのタッチ式ディスプレイを備えたインフォテインメントシステムがドライバーに向けて少し傾斜して配されている。ディスプレイ下部には機能に応じて指1本、2本と使いわけてオーディオなどを操作するタッチスライダーが備わっていたが、少々慣れが必要だと感じた。
センターコンソールでは、シフトセレクターがバイワイヤ化されたことでコンパクトなシフトスイッチとなった。そして、前方のあきスペースにスマートフォンのワイヤレスチャージングを配置する。このあたりの構成はベースを共にする新型アウディA3とも同じものだ。また本国仕様では、「ハロー、フォルクスワーゲン」のウェイクワードで起動する音声認識システムも備えているというが、今回の試乗車では確認できなかった。メルセデス・ベンツ、BMW、アウディの各社がすでにこのCセグメントにも採用している点に鑑みれば、いずれ標準化されるのだろう。
先代でもいち早く採用していたADAS(先進運転支援システム)はさらに進化した。中でもステアリングホイールに静電容量式センサーを採用したことで使い勝手が向上している。標準装備の「トラベルアシスト」(0~210km/hで作動する同一車線内全車速運転支援システム)を使用する際は、ステアリングを軽く握っているだけで、高度レベル2の自動運転が味わえる。長距離ドライブには欠かせないものだ。
新型のもう1つのハイライトは、フォルクスワーゲンとしては初めて48Vマイルドハイブリッドシステム(MHEV)を採用したことだ。最高出力110ps/最大トルク200Nmを発揮する1リッター3気筒の「1.0eTSI」と、150ps/250Nmを発揮する 1.5リッター4気筒の「1.5TSI」の2種類がある。
それぞれにベルト駆動式オルタネータースターターと48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたものだ。スターターとしてだけでなく、小型電動モーターとして車両の発進時にトルクを発生し、エンジンをサポートする。トランスミッションは7速DSGを組み合わせる。
確実な進化で、3気筒エンジンもスムーズな走り
最初は1リッターの「eTSI Active」に乗った。ここまでダウンサイジングして本当にちゃんと走るのか? という懸念はアクセルをひと踏みした瞬間に吹き飛んだ。MHEVのアシストがしっかりときいているようで、停止時からのスタートでももたつくことがない。大人3人乗車で高速道路を走ってみたが、まったく違和感なく少しアクセルペダルに力をこめればスムーズに加速していく。言われなければこれがリッタカーだとは誰も気づかないはずだ。アクセルペダルから足をはなすと、積極的にコースティングする。カタログ燃費は18.6km/L(WLTCモード)だけれど、それくらいの燃費は普通に使っていても出そうだ。
サスペンション形式は先代同様、グレードによって差別化されている。「1.0eTSI」は、フロントはマクファーソンストラットで、リアはトーションビーム式となる。先代では路面からの大きな入力があったときにバタつく印象があったが、この新型では構造部材に大幅な軽量化を施したこともあって、乗り心地が洗練されていた。組み合わされるタイヤサイズは205/55R16といまどき控えめなものだが、ピープルズカーとすればリーズナブルなものだ。
1.5eTSIの「eTSI R-Line」は、GTIが登場するまでのあいだもっともスポーティな仕様となる。バンパー形状が異なり、またタイヤサイズも225/45R17とサイズアップされる。シートもR-Line専用のスポーツタイプになるが、表皮はファブリックとスウェード調のマイクロフリースとのコンビで、ホールド感と座り心地のよさを両立したものだ。
1.5eTSIは最大トルクの250Nmを1500回転で発揮するだけあってとても力強く走りだす。そしてアクセルペダルに力を込めれば、MHEVのアシストもあって気持ちよく加速していく。またR-Lineにはドライビングプロファイル機能が備わっており、通常の「コンフォート」に加え、「エコ」、「スポーツ」、「カスタム」といった、エンジンやシフトプログラム、ステアリングトルクなどのキャラクターをスイッチひとつで切り替えることが可能だ。リアサスペンションは4リンク式へとアップグレードされていることで、快適性が高められている。スポーティ仕様といってもゴツゴツ感などを感じることはなく、終始フラットでワインディング路を走るようなシーンでも適度なロールを伴いながら気持ちのよいハンドリングが味わえる。
Cセグメントは、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディといったジャーマン3の躍進やマツダ3など日本勢の台頭もあって、群雄割拠している。またVWは電動化シフトで先の「ID.3」に注力したことで、このゴルフの開発がおろそかになってしまったのではないかとまことしやかな噂も耳にしたが、どうやらその心配はなさそうだ。確実に全方位的に進化を果たしている。
車両価格は、エントリーグレードの「eTSI Active Basic」が291万6000円、「eTSI Active」が312万5000円、1.5 eTSIの「eTSI Style」が370万5000円、最上級の「eTSI R-Line」が375万5000円、とリーズナブルなもの。やはり最新のゴルフが魅力的なピープルズカーであることは、いまも変わらないのだ。
文・藤野太一 写真・河野敦樹 編集・iconic
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みんなのコメント
旧型の在庫を売るのに2年かかったので新型で儲けを出さねばならないのだろう。
1ℓの廉価版を高値設定でも喜んで買うゴルフユーザー。
本国と北米仕様のパワフルなエンジンはラインナップから外されている。