■「人と知をつなぎ、モビリティの未来を支える」がミッションの技術展
公益社団法人自動車技術会が主催する「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」(通称:人テク)が、2024年5月22日から5月24日の3日間にわたってパシフィコ横浜(横浜市西区)で開催されました。
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人とくるまのテクノロジー展は「人と知をつなぎ、モビリティの未来を支える」というミッションのもとに行われる、自動車技術のための国内最大の技術展です。
リアルでの開催が31回目となった「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」では、例年のパシフィコ横浜「アネックスホール」に「ノース」も加え、展示会場を拡大して開催されました。
さまざまな最新技術や、製品、コンセプトカーなどが展示された同展示会ですが、今回はくるまのニュース編集部が気になった、日立Astemo、AGC、東海理化のブースの様子を取り上げ、リポートします。
■日立Astemo 次世代モビリティ形態の4輪車「インホイールEV」に注目!
日立Astemoは、電動車両向けの高効率モーターやインバーターをはじめとする電動パワートレインシステムと、エンジンコントロールユニットやインジェクターといった、燃焼、吸気、潤滑、熱マネジメントを最適化するエンジンマネジメントシステムを提供する企業です。
同社のブースでは「IoV展示ゾーン」「クロスドメイン展示ゾーン」「AD/ADAS展示ゾーン」「xEV展示ゾーン」「先進シャシー展示ゾーン」「MC展示ゾーン」と6つのゾーンに分けてさまざまな技術や製品を紹介、展示していました。
なかでも特に注目を集めていたのが「インホイールEV」と名付けられた次世代モビリティ形態の4輪車です。インホイールEVには、クルマのホイールの中に装着が可能な電気モーターである「インホイールモーター」を搭載しており、実際に走行テストも行われています。
インホイールEVの内装に目を向けると、前席には「BRIDE(ブリッド)」、後席には「SPARCO(スパルコ)」のスポーツシートが装着され、前席の中央には、左右に傾けるだけで車体を操縦することができる「Smart SBWS(スマート ステア・バイ・ワイヤー・システム/機械的なリンクが存在せず、完全なる電気信号で伝達する方式)」が設置されています。
ブース担当者に話を伺うと「『Smart SBWS』をステアリングの代わりにすることで、広い車内空間を実現しています。また、実際に行っている走行テストでは(速度などを)制限しているものの、展示車両に装着しているスポーツシートが必要になるくらい、車両自体のポテンシャルは十分にあります」とインホイールEVの可能性について言及しました。
また、インホイールEVにアクセルとブレーキペダルが存在しないことについて担当者は「走行テストの際はブレーキとアクセルペダルは装着しますが、将来的にはアクセルとブレーキペダルも『Smart SBWS』のようなコマンドで対応することを見据えているため、あえて展示車にはアクセルとブレーキペダルを装着していません」とインホイールEVが実用化された未来の姿について示唆しました。
■AGC 「FIRカメラ搭載フロントガラス」で交通事故の低減に貢献
AGCは自動車用ガラスをはじめ、オートモーティブ、ディスプレー、半導体やライフサイエンスと、人々のニーズに応えるためにさまざまな事業を展開している企業です。
今回、同社のブースには「FIRカメラ搭載フロントガラス」「車載用 LiDAR 構成部材」「車載用ディスプレイ低反射カバーガラス」「高機能フッ素ゴム」「フッ素樹脂電線被覆材」「高機能フッ素樹脂コンパウンド素材」などが展示されました。
ブースで人々が立ち止まって見ていたのが、次世代センシング技術として紹介された「FIRカメラ搭載フロントガラス」の実物と、その有効性を示す内容が投影された動画です。
ADAS(高度先進運転支援システム)のメインセンサーとして使われる可視カメラは室内に設置されますが、人の目では見えない物体の温度を映像化し、夜間の物体認識を向上させる「FIRカメラ」は、クルマのフロントグリル周辺に搭載されることが一般的です。
しかし同社は「FIRカメラ搭載フロントガラス」により、可視カメラとFIRカメラをフロントガラスの室内側に一体搭載することを提案しています。
同社は、可視カメラとFIRカメラを室内側に設置することによって、高い位置かつワイパーの払拭範囲にカメラ設置が可能となり、その結果、先行車や障害物に遮られることがなく、雨天でもセンサー認識能力を維持することが可能。そして、可視カメラとFIRカメラの視差が少ないためセンサーフュージョン(複数のセンサーから得た情報を組み合わせて処理すること)に有効という3つの特長とメリットがあると説明します。
ブースで投影された映像内で同社は、可視カメラには限界があるとして、認識できない歩行者をFIRカメラによっていち早く発見し、その結果夜間の歩行者の交通事故を防ぐADASの実現を後押し。AGCの技術は、社会課題である交通事故の低減に貢献すると紹介しました。
■東海理化 「インテリジェントコックピット」で近い将来の車内空間を体感
東海理化は、各スイッチやシフトレバーをはじめとする人の意思をクルマに伝えるヒューマン・インターフェース部品をはじめ、キーなどのセキュリティー部品、シートベルトといった生命を守るセイフティ部品などを開発、製造、販売する企業です。
同社のブースでは「インテリジェントコックピット」や「脱輪予兆検知システム」「UWB幼児置き去り検知システム」「電流センサモジュール」などを展示しました。
最も注目を集めていたのが「インテリジェントコックピット」です。「人がクルマを操作する世界から『人をとらえ、意思を読み取り、人に応える』世界へ」をコンセプトとした室内空間であるインテリジェントコックピットですが、同社は、人の体験価値を高め、クルマの価値を拡張することを考え、これまで進化させてきました。
実際に車内に乗り込むと目を引くのが、ステアリングです。ステアリングには「スマートステアリングスイッチ」と名付けられたスイッチが搭載されており、スマートフォンのような多機能ステアリングスイッチにより、フリック操作やなぞり操作を実現。従来のステアリングスイッチ以上に直観的な操作が可能となっています。
オーディオの操作はもちろん、SNS投稿、メッセージの返信など車室外のデバイス、コンテンツの操作も可能となっており、将来的に機能の追加やアップデート、さらにはユーザーに合わせたカスタマイズも想定しているとのことです。
また、ステアリングスイッチ内シフトバイワイヤを搭載することによって、ステアリングを把持(はじ)したままでシフト操作が可能。シチュエーションに応じて最適なシフトポジションを車両側から提案することにより、スムーズなシフトチェンジが実現できるようになっています。
さらに、ステアリングには心電センサーを内蔵することで、心電波形を検出。感情や疲労を推定し、結果に合わせた対応を自動で行うことで安全運転を支援します。具体的には、測定結果により音楽や空調、天井投影プロジェクタなどを自動で制御が可能とのことです。
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開催3日間で合計7万5972人が訪れ、大盛況のうちに幕を閉じた「人とくるまのテクノロジー展2024」。さまざまな製品展示や、最新の技術が紹介されましたが、参考で展示されたコンセプトモデルや、紹介された技術が実用化する未来は、そう遠くないかもしれません。
「人とくるまのテクノロジー展2024」は愛知県での開催も予定しています。会期は2024年7月17日から7月19日までの3日間で、場所は愛知県常滑市のAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)です。
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