リッチフィールド・モータース
text:Richard Lane(リチャード・レーン)
日産GT-Rのスペシャリストで、英国チューニングメーカーのリッチフィールド・モータースは、この夏、ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェでの、公道走行可能な量販車の新しいラップ記録を樹立しようとしている。
現在の記録を保持するのは、マンタイ・レーシングが開発し、700psを超える、ポルシェ911 GT2 RS MRだ。
標準的なGT2 RSよりもアグレッシブなサスペンション・ジオメトリと大きなダウンフォースにより、2018年にランボルギーニ・アヴェンタドールSVJを破り、6分40秒の量販車最速ラップを更新している。
スーパーカーが、それぞれのメーカーのサポートと期待を一身に受けていたのに対し、家族経営のリッチフィールドは、このチャレンジを「楽しい」アップグレード・パッケージの経験と受け取っていた。
創業者のイアン・リッチフィールドによると、限られたリソースで、巧妙にボックス化する必要があったと言う。
スウェーデンのサスペンション専門家オーリンズの専門知識を得たり、テスト施設や空力性能が改善されたMIRA試験場の風洞でのスケジュールを確保する際に、個人的なつながりが役に立ったと、リッチフィールドは言う。
R35 GT-Rプロジェクトをコンセプトステージから支え、日産とポルシェのニュルブルクリンクでの戦いに携わる田村宏志からも、スピードを飛躍的に上げるコツについてアドバイスを受けている。
ラップ記録の争いは戦々恐々としているように思われがちだが、実際は、はるかに友好的だ。
現在、ポルシェのスポーツカープログラムを幅広く展開しているマンタイ・レーシングのエンジニアは、リッチフィールドと経験を共にしたいと考えている。
関係者はみな真の愛好家なのだと、リッチフィールドは言う。
GT-R LM1 RS
GT-R LM1 RSは、1200psの出力を実現するよう調整された3.8LV型6気筒エンジンを搭載した、R35 GT-Rのバージョンであり、インディカー仕様のターボチャージャーと大きなインタークーラー、その他の修正が加えられている。
シェルの大部分は標準のままだが、GT3仕様のロールケージを取り付けたにも関わらず、標準モデルより35kg軽量化されている。
ボンネット、リアウイング、バンパーは、GT-RニスモGT3レーサーから直接供給を受けている。
GT3標準によく似た、最新のアストン マーティン・ヴァンテージのアルコン製ブレーキに、GT1仕様のカーボン・セラミック・ディスクを装着している。
アンダーボディのフルフラット化とディフューザーを充実させるために、GT3ウイングのサイドエグジット・エキゾースト(シリンダーバンクごとに1つ)が変更されている。
これまでに、リッチフィールドはニュルブルクリンクを2度訪問し、ジオメトリと空力性能の向上に努めている。
おそらく挑戦前にもう一度ドイツを訪問することとなるだろう。
このクルマは、オリジナルのGT-Rよりも400kg軽く、総重量は約1770kgと言われており、パワーウエイトレシオは約900bhp/tとなる。
リッチフィールドは、「このクルマは、間違いなく新しいラップ記録を樹立するでしょう」と胸を張る。
挑戦の日
挑戦の日、リッチフィールドはトラックを貸切ることはできない。
おそらく、その日トラックで予定されているプログラムの最後の、1度のホットラップとなるだろう。
ノルトシュライフェのスペシャリスト、モルティス・クランツがハンドルを握る。
クランツには「エゴがなく、並外れて速い」と、リッチフィールドは言う。
すべての瞬間がドラマチックなものになるだろう。
ミシュラン・パイロットカップ2Rタイヤでは、午前中と比較して14秒もの差が出ると言われている、気温の低い午後遅い時間帯を狙う。
GT2 RS MRとは異なり、このGT-R LM1 RSをGT-Rのパッケージとして提供する予定はないが、リッチフィールドは、クルマを再現するのに約30万ポンド(4298万円)かかると見積もっている。
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