創設者兼初代王者トラビス・パストラーナの手により、2018年に産声を挙げたNitroRXナイトロ・ラリークロスは、今季よりその名称を一新。従来からのシリーズコンセプトをより鮮明に打ち出すことを狙い、これまでのNitroRX改め『Nitrocross(ナイトロクロス)』へと生まれ変わり、6月16~17日にオクラホマ州ジェイのミッドアメリカ・アウトドアで開幕のときを迎えた。
全10戦で構成された9カ月にわたるシーズンのオープニングラウンドでは、王者ロビン・ラーソン(ドレイヤー&レインボールド・レーシング・ウィズ・JCレーステクニーク)やクリス・ミーク(XITEエナジー・レーシング)ら実力派を退けた、フレイザー・マッコーネル(DRR JC)が初代ウイナーの栄冠を手にした。
インディ途中離脱のコナー・デイリー、DRR加入で新生ナイトロクロスに本格参入「刺激に満ちている」
本格的にNitroRXとしてシリーズを開催した2021年のチャンピオンであり、オーガナイザーとしての顔も持つパストラーナは、このナイトロクロス創設当初より「ヨーロッパにルーツを持つ単なるミックスサーフェースのシリーズではなく、その進化版である」ことを折りに触れて強調してきた。
そうした本人の意図がより色濃く反映された今季は、ダート路面をベースとしつつ、ハイバンクのターンと大きなギャップを持つジャンプスポットなど、そのトラック設計をさらに強化。これらはすべて、モトクロスのスター選手でもあるパストラーナの経験や意図が反映されたものとなっている。
その最高峰クラス“グループE”では、最高出力1080PS(800kW)、0-100km/h加速約1.4秒というフル電動ワンメイクEV『FC1-X』が、グローバル選手権への成長を目指した昨季より導入されており、新年度も“ケン・ブロック・チャンピオンシップ・トロフィー”と名付けられたチャンピオンの栄冠を目指し、引き続き同車での勝負が繰り広げられる。
一方、この2023-24年シーズンに導入される新たな競技フォーマットでは、各グループでプラクティスヒート最速となったドライバーがトップクオリファーのセッションに進出。ここで敗退した残る3名は予選グループに振り分けられ、バトルヒートを経てファイナル進出を目指す、というもの。それ以外のチームは、決勝日午前の予選ヒートなどを経て、全8台によるファイナルの出場権を争う。
■優勝争いに挑んだミーク、足回り破損で散る
オクラホマ州で約1週間にわたり開催された『ビジョンズ・オフロード2023』のイベント内に組み込まれた今回の1戦は、初日の金曜から荒天に見舞われてセッションがディレイ。バトルファイナルは土曜日の朝に変更されるなど、いきなり短縮スケジュールを強いられる。そんななか、パストラーナやケビン・エリクソン(オルスバーグMSE)、アンドレアス・バッケルド(DRR JC)といったおなじみの面々が優位に立つ。
明けた土曜も、本来なら8台によるファイナルは6周勝負になるところ、猛暑による路面状況を考慮して3周に短縮されると、それでもシリーズ史上最長トラックのお陰で雌雄を決するに充分なレース距離が確保される。
ここで主導権を握ったのはポールシッターとなったマッコーネルで、スタートから流れ落ちるように突入するハイバンクのターン1で、僚友のチャンピオンを押しやるように首位を堅持。この動きの余波で、4番手発進だったミークがジャンプアップ。スタートの混乱に乗じて2番手に進出する。
1周目にジョーカーを消化したマッコーネルに、続くラップで反応したミークがサイド・バイ・サイドで復帰して優勝争いに意欲を示すと、ここで両者は接触。この衝撃でXITEエナジー・レーシングのFC1-Xはサスペンションを破損し、その勝負に早くも終止符が打たれることに。これでポジションを引き継いだラーソンとケビンを従え、今季も活躍の場を広げるジャマイカ出身マッコーネルが、昨季に続く2勝目を飾った。
一方、開幕直前に参戦を表明したインディカー出身のコナー・デイリー(DRR JC)は、電動の競技車両もラリークロス自体も初体験のデビュー戦ながら見事にファイナル進出を果たし、最後尾ながら8位完走のリザルトを残した。
「まったく新しい環境だが、素晴らしいクルマだった。パワーは信じられないほど瞬間的で、それらがどう機能するかは新鮮だったよ。ギアボックスもそうだし、ジャンプもね……。トラックが少し乾けばスムーズで、狂ったように滑ることもなく本当に速いと感じた」と、そのドライビング世界を堪能した様子。
続いてユタ州ソルトレイクシティで開催される次戦はダブルヘッダーとなり、今回と同じく8月18~19日の金曜、土曜開催のスケジュールが組まれている。
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