8月5日に正式発表された新型シビックは、先代モデル同様に6速MT車が設定されている。マツダのようなほぼ全車にMT車を用意するメーカーもあるが、ホンダは軽自動車以外でMT車を設定しているのはシビックだけだ。
近年、全体的にMT車を設定する車種は減っている傾向があるなかで、なぜ新型シビックにはMT車が設定されたのか?
ホンダの本気は米国で大暴れ 355馬力V6ターボ、アキュラTLX「タイプS」とインテ復活の狼煙
文/岡本幸一郎
写真/ホンダ、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】新しくなったシビックを徹底チェック!
■シビックMT設定の意義は"操る喜び"という価値
2021年6月24日に世界初公開された11代目シビックが、8月5日に正式に発表、9月3日に発売となる。
予想されたとおり日本向けはハッチバックスタイルのみ。2022年にはハイブリッドとタイプRを導入する予定であることもすでに明らかにされたが、従来型では日本での販売がふるわず、2020年8月をもって販売終了となっていたセダンの導入は、やはり見送られた。
新型シビックは8月5日正式発表、9月3日発売だ。旧型で設定されていたセダンの導入は見送られハッチバックのみとなった
ハッチバックのみで月間販売計画台数が1000台とされたのは、もう少し盛ってもよい気もしなくないが、従来型の数字を見ると、まあ妥当かなと思う。
注目すべきは、従来型と同じく6速MTが設定されたことだ。周囲をみわたすと、マツダのように多くの車種にMTをラインアップしていて、各車種のMTの販売比率を知ると意外なほど高くて驚かされるメーカーもあるのだが、いまや日本ではMTがますます希少になっているのは周知のとおり。
日本ではMTがますます希少になっているのは周知のとおり。ホンダの登録車としては現状シビックのみとなっている
ホンダも一部の軽自動車にはMTを設定しているものの、登録車ではシビックのみとなる。
ではなぜホンダは新型シビックにもMTを設定したのか? 理由はいたってシンプルだ。ひとつは従来型でもシビックハッチバックを購入するユーザーの実に約3割も6速MTを選んでいたことを受けて、シビックでMTを選ぶユーザーのニーズに応えるために継続して設定するはこびとなった。
もうひとつは従来から引き継いでいるシビックならではの操る喜びをより体感してもらうため。もともとシビック自体、実用性にも優れるスポーティなコンパクトカーとして親しまれてきた。そのスポーティな側面をより楽しめるMTは、シビックには欠かせないというわけだ。
シビックの先代モデルで販売構成比の約3割が6速MTだったのも、新型にMT車を設定する後押しとなった
■シビックは伝統的にMTが人気だった!
一方で、従来型で3割ものシビックユーザーがMTを選んでいたわけだが、やはりあえてシビックを選ぶ人は、根本的にクルマ好きの人が多い傾向といえそうだ。
どんなに2ペダルのトランスミッションが進化しようと、クルマ好きにとってはMTこそ本命だ。できることならMT車に乗りたいと考える人は大勢いる。
MTがますます貴重になってきたからなかで、MTの設定があり、スポーティなイメージもあるシビックは、タイプRでなくてもクルマ好きのハートを掴んでいるわけだ。
写真は先代モデル。もともとシビックオーナーはMTを好んで選ぶ傾向があるという。中古車相場もMTのほうがCVTに比べてやや割高
MTの人気が高いのは中古車も同様で、シビックのMTを指名買いする人が少なくないことを受けて、相場もCVTに比べてやや割高となっている。
新車の車両価格がCVTと同一とされたのは、ユーザーがトランスミッションの違いを価格に影響されることなく、本当に好みで選んでいただきたいというホンダの思いによる。
■絶対的な価格は上がっているが、実は先代と同じ価格!?
その価格について、「LX」が319万円、「EX」が353万9800円と、このクラスのクルマとしてはやや割高感があり、従来型と比べると一見やけに金額が上がったように感じるところだが、新型はHonda CONNECTに対応したナビが標準装備となったため、その分価格があらかじめプラスとなっているからだ。
新型シビックはHonda CONNECTに対応したナビが標準装備。先代より価格が上がっているように感じるが、オプションだった装備が新型では標準装備になった差分だという
やや金額ははるが利便性に優れるシステムをすべてのユーザーに使ってもらえるよう標準装備したのは、ホンダの良心と捉えるべき。それ以外にも新型シビックはさまざまな点で熟成を図っているが、基本部分での価格は従来型と変えていないという。
新型は見た目のイメージは従来型の延長上にあるが、以降のホンダ車に導入される新世代プラットフォームの「ホンダ アーキテクチャー」を初めて採用したのをはじめ多くの部分で刷新されており、走りの質も大幅に高まっていることも予想される。
中身が大幅に向上して価格が不変ということは、むしろ実質的には値下げと考えてよいほどだ。
「ホンダ アーキテクチャー」を採用した新型シビック。1.5L VTECターボエンジンと6速MTによる走りは、さらに進化したとのこと
肝心の1.5L直噴VTECターボエンジンと6速MTについても、さらに進化している模様だ。リリースによると、エンジンについてはアクセルを踏み込んだ瞬間から力強く加速する応答性と、高回転域までよどみなくパワーが増大するリニアな出力特性としたとのこと。
6速MTは、シフトレバーのショートストローク化と高剛性化により、スポーティかつダイレクト感のあるシフトフィールを目指したという。
■「爽快シビック」の実力はいかに
すでに新型の試乗レポートもちらほら出てきたタイミングで、ベストカー本誌にも掲載されているのでぜひそちらもご覧いただきたい。
が、筆者が従来型で気になっていたこととして、回すとパワフルで気持ちよいものの、同じ1.5Lターボのなかでも高出力版のシビックはオーバーシュート気味に過給されるためやや扱いにくいことや、アクセルオフにしても過給が残る傾向が見受けられ、回転落ちも遅いことなどが挙げられる。
そのあたりは開発関係者も認識していて、エミッションとの兼ね合いでやむをえなかったとしていたが、せっかくシビックのMTなのだから、多少はそこを目をつぶっても本来の走る楽しさを優先してもよかった気もしている旨を述べていた。
おそらくそのあたり新型では改善されていることと思う。また、もともとよかったシフトフィールもさらに改善されているようで、ますます操る楽しさが増していることに違いない。
先代ではエミッション対策のために走りの面で課題があったという。新型でどこまで改善されたのか、要チェックだ
おりしもホンダはそう遠くない将来に電動化を本格的に進めていくつもりであることを明らかにしたばかり。一方でこうした、タイプRではなくても、内燃エンジン車の楽しさを満喫できるクルマを忘れないあたりもホンダらしく、当面はいろいろ楽しませてくれることと思う。
まずはこうして「爽快シビック」をコンセプトとする新型シビックにもMTをひきつづき設定してくれたホンダの心意気を称えたい。
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みんなのコメント
数字で見るほどの巨大感?はなく、ホンダのコンパクトカーによくある前に向かってスラントの目立つボンネットでもなく、車両感覚が掴みやすく操ることが楽しそうなデザインだと思いました。クルマが、MTで運転したい!と思わせてくれるデザインだと思います。
フィットにもBASICあたりに設定を、ぜひお願いしたいです。
タイプR登場前に是非試乗してフィーリングを確かめてみたいものですが。
MT試乗車を用意してくれないんですよね。