常に時代の最先端に立つ技術で競われるモータースポーツの世界。その世界において高い評価を得たレーシングカーデザイナーは、ロードカーの開発においても有能なのか?
高名なレーシングカーデザイナーが手掛けた市販車を紹介していく本シリーズの第4回は、ル・マンウィナーにして名デザイナーのキャロル・シェルビーが生み出したマシンを紹介していこう。
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文/長谷川 敦、写真/Newspress UK、Favcars.com
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レースを断念してマシン開発者へと転身
若き日のキャロル・シェルビー(右)。日本では2020年に公開された映画「フォードvsフェラーリ」でマット・デイモンがシェルビーを演じていた。似てる?
1923年、アメリカのテキサスに生まれたキャロル・シェルビーは、1950年代にレース界へとデビューした。当初は実家の養鶏業と掛け持ちのレース生活だったが、みるみるうちに頭角を現して1958年にはF1グランプリにデビューする。F1ではもうひとつの結果に終わったものの、1959年のル・マン24時間レースではアストンマーチンをドライブして見事優勝を飾っている。
順調に思えたシェルビーのレーサー生活だったが、幼い頃から抱えていた持病の心臓病が悪化してしまい、負担の大きいレースには耐えられないと判断して1960年代初頭には自身でのレース活動を終了。以降はシェルビー・アメリカンを設立して後進の育成とマシン開発に専念することになる。
英米連合の傑作は現代でも続く永遠の人気車「シェルビー コブラ」
ACコブラMkI。初代モデルはフォード チャレンジャー4.3リッターV8エンジンを搭載。軽量で高剛性な車体と相まって高いパフォーマンスを発揮した
シェルビー・アメリカンを興して間もなく、シェルビーは1台のハイパフォーマンスカーを開発する。イギリスの自動車会社であるACカーズが開発した車体に、フォード製V8エンジンを搭載したACコブラだ。
ACカーズは1900年代初期に創業された自動車会社で、1950年代には他メーカーからエンジンの供給を受けるかたちで自社モデルの製造を行っていた。
しかし、60年代に入ると同社にエンジンを供給するメーカーがなくなり窮地に陥ってしまう。この時、ACカーズの技術力に目をつけていたシェルビーがフォード製V8エンジンの採用を持ちかけ、すでに存在してたACエースをベースにフォードV8をドッキングしたマシンを開発する。これが後にACコブラと呼ばれるマシンの原型となった。
ACカーズでは、エンジンの変更にあたってエースのボディを拡大すると同時に駆動系やブレーキを強化するなど、アメリカンV8のパワーに耐えられるようモディファイを施した。特にボディの拡大によってオーバーフェンダー化したフロント部の迫力は増し、これがコブラのイメージを決定づけた。
ちなみにベースモデルのACエースを設計したのもレースカーデザイナーのジョン・トジェイロであり、ACエース自体にもレースを想定したデザインが盛り込まれていた。
1962年に発売されたACコブラMkIは、すぐにレースにも投入されて好成績をあげ、ロードカーも好調な売れ行きを見せた。マシンデザイナーとしてのシェルビーの名声も、このコブラの成功によって確固たるものになっていった。
MkIからスタートしたコブラは進化を続け、1965年にはフォードの7リッターV8エンジンを搭載した427S/C(MkIII)が登場する。427とはインチ法で表した7リッターの排気量(427立方インチ)を意味し、S/Cはセミコンペティションの略。これは競技(コンペティション)用モデルをデチューンしたモデルであることが由来だ。
コブラの販売で息を吹き返したかに思えたACカーズだったが、やがてまた経営状態が悪化。その後紆余曲折があって「コブラ」の商標権はシェルビーのものとなる。このため以降はシェルビー コブラの名称が用いられるようになった。
いったんは経営破綻したACカーズだが、経営陣の刷新などによって復活を遂げ、現在ではコブラのボディを使用しつつパワーユニットを電動化したEVモデルなどを生産している。
絶大なコブラ人気は今でも健在であり、アメリカのスーパーフォーマンス社がキャロル・シェルビーからライセンスを得てリプロダクションモデルを生産している。正式なライセンスモデルだけに、新規生産とはいえ正真正銘のシェルビー コブラであることは間違いない。伝説の名車が新車で購入できることがコブラの人気を証明している。
アメリカンマッスルカーをさらにマッスル化「シェルビー GT350/500」
シェルビーの名を冠して1965年に登場したGT350(写真は1966年型)。レースを想定した徹底的な軽量化とエンジンのパワーアップで高性能を獲得している
コブラへのエンジン供給によってシェルビーとの関係を深めたフォードは、1964年に発売したマスタングのハイパフォーマンスモデル製作をシェルビー・アメリカンに依頼した。その目的はレース出場のためのホモロゲーション取得であり、ハイパフォーマンスモデルには小改造でレース出場が可能な性能が求められた。
この依頼を受けてシェルビーが製作したのがGT350だ。マスタングをベースにボンネットの軽量化やサスペンションの強化、デフのLSD化などを行い、エンジンはフォード製チャレンジャー289HPをベースにシェルビー・アメリカンがチューンしたコブラ298V8エンジンを搭載。エアコンや後部シートも取り除かれるなど、まさに公道を走るレーシングカーとして開発されている。
フォードではこのマスタングの上級モデルにあたるマシンをシェルビー GT350と呼び、正式にはマスタングの名称を与えていない。それだけ当時のアメリカでシェルビーの名前には知名度と訴求力があったということになる。
GT350は後に排気量をアップしたGT500にリニューアルされ、1969年までに約1万5000台が生産された。そして2007年、シェルビー GT500はフォードの手によって復活する。フォードではこの時期にGT40などの往年の名車をイメージしたモデルをリニューアル生産していて、6代目マスタングの開発にあたってキャロル・シェルビーの意見を取り入れたシェルビー GT500を発表した。
2015年になると今度はシェルビー GT350も復活。これは初代モデルの登場から50年を記念したアニバーサリーモデルとして企画された。このモデルにキャロル・シェルビーは関与していないが、フォードは初代モデルの開発に尽力したシェルビーに敬意を表してこの名称を採用した。
優勝請負人としてのキャロル・シェルビー「フォード GT40」
ル・マン出場のためのホモロゲーション取得用に製造されたGT40のロードバージョン。ただしロードモデルの製造はシェルビーではなくFAVが担当している
1964年、フォードは自社のイメージ向上を狙ってル・マン24時間レースでの優勝を目指すことになる。そのためにイギリスにフォード・アドバンスト・ヴィークル(FAV)が設立され、このチームがイギリスのレースカー・ローラ6をベースに開発したのがGT40だ。GT40は同年のル・マン24時間レースに出走するが、熟成期間の短さもあって出場3台がすべて夜明けを迎えることなくリタイアという惨敗に終わる。
この結果を重くみたフォードでは、シェルビー・アメリカンにGT40の開発を委託。シェルビーはマシンの改良を行うと同時に、自らチームを率いてかつてドライバーとして制したル・マン24時間レースに挑むこととなる。
雪辱を期して参戦した1965年のル・マン24時間レースではまたしてもレース序盤に全滅してしまい、シェルビーの立場も危ういものになる。だが、ここでくじけずにGT40の開発は継続され、1966年には悲願の優勝を1-2-3フィニッシュという最高の結果で達成する。以後GT40は1969年までル・マン24時間レース4連覇を成し遂げた。
GT40の成功によってキャロル・シェルビーの名声はさらに高まり、アメリカを代表するスーパーカー開発者の地位をゆるぎないものにした。その後はクライスラーとも共同で数多くのモデルを手掛け、1970年代後半にレースやロードカー開発から引退。2012年に89歳でその生涯を閉じたが、アメリカの自動車史においてその存在は今でも燦然と輝いている。
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