ダートコースでの迫力あるスピード競争
「ダートトライアル」、通称“ダートラ”をご存知だろうか? 文字どおり、未舗装のダートコースで1台ずつタイムトライアルを行う競技で、日本で独自に進化してきたモータースポーツカテゴリーだ。コンマ秒を競うだけあって、勝つためには競技マシンのセッティングやドライビングテクニックにいたるまで緻密な完璧さが求められる。陸上100M走やスピードスケートなど、スピード競技にはどこかつき物である、分かりやすい迫力ある華麗な動きもダートラにはあり、ギャラリーとしても見てみたいシーンがたくさんある競技なのだ。
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ラリーと違ってドライバーひとりでの戦い
未舗装路ということで、ラリー競技のグラベルラウンドをイメージしがちだが、ダートラの舞台は常設のオフロードコースとなる。ラリー競技のスペシャルステージと違って、その距離も距離にして約2km、時間にして1分30秒~2分前後とかなり短い。
設定されたコースを攻める走行戦略をドライバー自らがイメージし組み立てる。 当然、長い行程をゆくラリーとは違ってコドライバーが不要なことから、ドライバーひとりで第1ヒート、第2ヒートと計2回のアタックを展開する、といった競技だ。
それゆえにオフロードコースという状況下においてのダートラ車両は、他のラリー、ラリーレイドなどのスポーツ競技車両では及びもつかない最速マシンでもある。F1の予選のように、ダートトライアルではモンスターマシンがオフロードコースを舞台に激しいタイム争いを展開しているのだ。
このダートラ、日本国内の各エリアで地方選手権やジュニア選手権が開催されているが、最高峰のシリーズとなるのがJAF戦の「全日本ダートトライアル選手権」で年間8戦の予定でシリーズが開催されている。2020年は新型コロナウイルスの影響により多くのラウンドが中止となったことから、開幕戦の京都(京都コスモスパーク)、第2戦の北海道(オートスポーツランド砂川)、第3戦の福岡(スピードパーク恋の浦)の3戦のみでタイトルが争われることとなっている。がそれでも、各ラウンドで激しいバトルが展開されたのである。
マシン改造範囲の広いDクラスが頂点
バトルの激しさは、全日本ダートトライアル選手権のトップクラス、Dクラスがいちばんとも言える。Dクラスの競技車両は改造範囲が広く、パイプフレームにカウルを被せたレーシングマシンも参戦可能なのだ。
代表的なマシンをあげると、
WRXのパワートレインを移植したスバルBRZ
ランサーのシステムを搭載した三菱ミラージュ
ラリー競技用のR5仕様車をダートラ仕様に仕立てたフォード・フィエスタR5
ランサーのパワートレインを移植したトヨタ・カローラスポーツなど、専用のモンスターマシンが集結している。
集うドライバーの顔ぶれもDクラスで6連覇を果たしているレジェンドの谷田川敏幸選手を筆頭に、国内外のラリーで活躍してきた田口勝彦選手や鎌田卓麻選手、炭山裕矢選手など強豪揃いとなっているだけに、いかにハイレベルの戦いが展開されているかが分かるだろう。
さらに、ダカールラリーで活躍する三浦昴選手がトレーニングを兼ねて三菱ランサーでSA・SA2クラスに参戦するなど、実に多彩な顔ぶれとなっている。
競技車両のクラス分けも多く個性的マシンぞろい
そのほかにも、全日本ダートライアル選手権は数多くのクラスが設定されていることから、車種バリエーションが多彩で賑やかだ。
三菱ランサーやスバルWRXなどの4WDスポーツのほか、スズキ・スイフトやマツダ・デミオ、ホンダ・シビック、トヨタ・セリカ、フィアット500AといったFFモデルもエントリー。さらにトヨタ86やスバルBRZなどのFRスポーツまで様々なマシンが参戦していることも全日本ダートトライアル選手権の特徴だ。
タイムを争う競技に集うキャラクターの凄さ、まさにダートラはレースやラリーとはまた違った魅力を持つカテゴリーとなっている。
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