自ら運転するクルマで向かったのは、メルセデス・ベンツ博物館。フロントウインドウ越しにその外観が目に入った瞬間、脳裏に浮かんだのはフランク・ロイド・ライトが設計したニューヨークのグッゲンハイム美術館だった。
クルマで訪れたメルセデス・ベンツ博物館。駐車場は、建物の地下にある。2006年に竣工したメルセデス・ベンツ博物館は、ベン・ファン・ベルケルとカロリン・ボスによって設立されたUNスタジオが設計。グッゲンハイム美術館を連想させたのは、外観からすでに螺旋状であったからだ。
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博物館のエントランスには、8カ国語で「入口」の案内が書かれている。駐車場にクルマを停め、さっそく博物館の入口へ向かう。まず、ここで日本人としては嬉しい発見がある。八カ国語で「入口」と案内が掲げられているのだが、そのうちのふたつが「入口」という漢字である。日本人ならその書体の違いで、中国語と日本語の2つの言語で表記されていることに気がつくだろう。中国語の書体でも同じ「入口」と読めるので、どちらか一方の表記があれば不都合はないのだけれど、こうしたこまやかな心遣いが、遠い異国の地では、わけもなく心に沁みるのだ。
戦前のメルセデス・ベンツのレーシング&レコードカーを連想させるフォルムを持つ、シルバーのエレベーター。見上げると、建物のてっぺんまで吹き抜けになっており、SF映画にでも出てきそうな金属製の乗り物がコンクリートの壁をスルスルと上下しているのが目に入る。まるで映画のなかで描かれている未来都市の断片を見ているかのようだ。
チケットを購入すると、まずはこの金属製の乗り物=エレベーターに乗って最上階へと運ばれる。エレベーターの窓からホールに目をやると、向かい側のコンクリート打ち放しの壁に映像が映し出されていて、エレベーターの動きに合わせてその映像も上へと上昇していく。映像には自動車が登場するのだが、上に登っていくにつれ、現代のクルマから過去のクルマへと時代を遡っていくストーリーになっている。
博物館内ではエレベーターの動きに合わせて、コンクリートの壁に映像が投影される。ただの移動も楽しめる配慮がうれしい。地上34mの最上階に到達してエレベーターの扉が開くと、そこで待っていたのは原寸大の白馬の模型。つまりエレベーターは、エントランス(=現在)から最上階(=自動車が生まれる以前)までをつなぐタイムマシンに見立てられているのだ。
馬は、自動車の前身である馬車の動力であるだけでなく、人類が乗馬を覚えてから飛躍的に移動の距離を伸ばし、移動にかかる時間を短縮した乗り物であった。まずはここから自動車の歴史を紐解いていこうというわけだ。
最上階でエレベーターを降りると、馬の蹄の音でドアが開き、白馬が迎えてくれる。馬車時代から現代へと歴史を辿りながら展示は続いていく。最上階からは、螺旋状にスロープを下りて行きながら、展示物を鑑賞するという方式だ。これはグッゲンハイム美術館と同じ動線であるが、メルセデス・ベンツ博物館では螺旋状のルートひとつだけではなく、別のルートも用意されている。
自分の思うままに、館内を観て回る展示内容は、「レジェンド」と「コレクション」、そして「Fascination of Technology(技術の魅力)」の大きく3つのパートに分かれている。「レジェンド」と「コレクション」のテーマに沿って階下に下りながら鑑賞していくと、最後に「技術の魅力」コーナーにたどり着くという構成だ。
あまりにも有名な自動車の祖となるダイムラーとベンツが作った、ベンツ・パテント・モトール(左)とベンツ・ヴェロヴァーゲン(右)。最上階のエレベーターホールで白馬の模型に迎えられたあと、最初に通るのは、「レジェンド1:パイオニア/The Invention of the Automobile」の部屋だ。ここで出会う展示車両は、ゴットリープ・ダイムラーが発明した世界初の四輪自動車「モトキャリッジ」と、カール・ベンツが発明した最初のガソリンエンジン三輪車「パテント・モーターカー」の2台。メルセデス・ベンツの歴史のはじまりから、スタートである。
緩やかなスロープを下りていくと、「レジェンド2:メルセデス/Birth of the Brand」のフロアへ。ダイムラーのクルマにメルセデスという女性の名前がつけられた現存する最古のクルマ「40 PS メルセデス・シンプレックス」を始めとして、1900年代初頭のクルマが展示されている。
1902年から製造された40PSシンプレックス。最高速度はおよそ80km/hだった。そのままスロープをたどると、「レジェンド3:変革の時/Diesel and Supercharger」のフロアへと下りていくことになるが、ここは「コレクション1:Gallery of Voyagers」のフロアともつながっている。時間が許せば、ぜひとも「コレクション1」の展示車両も見て欲しい、特に幼い子ども連れならばなおさら。というのも、子どもが喜ぶ働くクルマの展示が多いからだ。
「コレクション1:Gallery of Voyagers」は、バスも展示されるほどの広さ。「レジェンド」のテーマは7つ、「コレクション」のテーマは4つに分かれている。館内は「レジェンド」のテーマに沿って、螺旋のスロープを下りていくメインの動線と、各フロアでサブ的に展示されている「コレクション」のテーマを階段でつなぐ動線の2種類がある。
時刻によって陽の差し方が変わるので、様々な表情を見せる階段の回廊。この「コレクション」のフロアをつなぐ階段の通路は、眺めも素晴らしく、光にあふれる回廊となっている。建築好きには外せないおすすめのルートだ。
メインのスロープ、眺望のよい階段の2つのルートのいずれを選択しても、最後のテーマである「レジェンド7:シルバーアロウ/Races & Records」にたどり着くようになっている。各フロアは一方通行ではないので、好きな順路で展示車両を閲覧し、博物館の建物自体のダイナミズムを存分に感じるのがいいだろう。
建物は螺旋状になっているため、反対側の展示の様子も見ることができる。博物館そのものが作品メルセデス・ベンツ博物館の醍醐味は、当然ながら展示車両にある。しかし、それに劣らないほど館内の空間を味わうことにもあると言っていい。建物中央の吹き抜けは、見上げてもよし、見下ろしてもよしの圧巻のスケール。違うフロアの展示車両を、吹き抜け越しに眺めるという楽しみ方もある。展示車両を近くで鑑賞するだけでなく、空間の中のひとつの彩りとして眺めてみるのもいい。
展示車両を見下ろしながらスロープを下る。いろんな角度から車両を鑑賞できる仕組み。博物館内には、風光明媚な観光地にあるような「カメラポイント」も設けてある。自動車博物館というと、展示車両だけを写真に収めがちだが、メルセデス・ベンツ博物館では館内の空間、建築そのもの、そして展望所のように窓から見渡す景色、どこをファインダーで切り取っても絵になる。
螺旋のスロープを下りていく途中さえ、まるで劇場のようで新鮮な発見に溢れている。開放的な空間であることにも起因しているが、来館者が展示車の前など、ひと所に滞留することなく、ほどよい間隔でばらけているのも心地よい。展示車をいろいろな場所から眺められるように設計されていることと、博物館の空間そのものにも見どころがあるからだと思う。
「Fascination of Technology(技術の魅力)」のフロアへは、直線の階段でアプローチする。まるで公園にでもいるかのように、館内のいたるところにあるベンチに座って、自分の時間を楽しんでいる来館者の姿が多数見受けられた。展示車両を見終えたらさっさっと退館するのではなく、こうした博物館の楽しみ方にも憧れる。
「レジェンド」、「コレクション」のテーマを見終えた後は、最後に「Fascination of Technology.(技術の魅力)」のフロアに収斂する。メルセデス・ベンツのベースはまさしくここにあり、この技術力を土台にして現在に至るまでの数々の名車たちが生まれてきたのである。こうした技術がメルセデス・ベンツを支えてきたことに間違いはない。もっとも下のフロアに「技術の魅力」の展示を配置したのは、それを博物館全体の空間構成で表現しているのかもしれない。
レースと深い繋がりを持ち続けたメルセデス・ベンツの歴史。ドイツのナショナルカラーをまとったレーシングカーが並んだ姿には圧倒される。「技術の魅力」のコーナーは、メルセデス・ベンツの研究、設計、開発、製造を研究者や技術者の視点から見るインスタレーションである。ここでは、時代によって変わるクルマへの要望──移り気なカスタマーの好みや、安全や環境対策による法的基準など──に対応するための車両開発の裏側を垣間見ることができる。まさしくメルセデス・ベンツは自動車を発明し、自動車の発展に貢献してきたメーカー。そうした自負が強く伺えるインスタレーションだ。
そしてこのフロアへはスロープではなく階段で降りていくのだが、その前にメルセデス・ベンツのレース活動の足跡を辿る「レジェンド7:シルバーアロウ/Races & Records」を通らなければならない。レース活動の展示と車両開発の展示を近くにもってきているのは、メルセデスにとって、レース活動は車両開発の実験場であることを象徴しているかのようだ。
そして館内のどこをとっても見どころ満載で圧巻されるメルセデス・ベンツ博物館のなかでも「レジェンド7:シルバーアロウ/Races & Records」のコーナーでは、さらに圧倒される。
レストランやカフェ、ミュージアムショップは、博物館に入館しなくでも利用できる。歴代のレースカーやレコードカーが、バンクのついたサーキットコースをまるで疾走するかのように展示されている光景は、カーマニアではなくとも見惚れてしまいそうなほどのスケールだ。
レストランやカフェも併設されており、地下には純正アクセサリーやミニカーなどを豊富に扱うショップも用意されている。日本のディーラーにはない純正アクセサリーも販売されているので、お土産にも丁度いいだろう。
さらに、地下の通路で繋がっている隣の建物は、広々としたショールーム。博物館を見学してメルセデス・ベンツの素晴らしさに感化されたら、その足で現行ラインナップを物色できるという、まさしくスリーポインテッドスター三昧の1日を過ごせる名所である。
Mercedes-Benz Museumメルセデス・ベンツ博物館
営:9:00~18:00(受付は17:00まで)
休:月曜
住: Mercedesstraße 100, 70372 Stuttgart, ドイツ
TEL:+49 711 1730000
URL:https://www.mercedes-benz.com/en/classic/museum/
文・尾崎春雪 編集・iconic
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