8世代目となったポルシェ911シリーズ。その中でも特別な存在のタルガ、さらにフラッグシップのターボとコンパクトな718ケイマンの高性能モデルの3つの魅力を探る。(Motor Magazine2021年7月号より)
エレガントな911。第3のボディ「タルガ」
圧倒的に高い完成度ゆえ「もはや注文を付けるところなどどこにもない」と思わせておきながら、いざモデルチェンジで次期型になると「まだこんな伸びしろがあったのか!」と毎度驚かされるのが、歴代のポルシェ「911」というモデルである。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
動力性能を向上させながら燃費性能もアップさせるのは、もはやポルシェというクルマに共通する基本的なテーマ。それに加えて、ADASやコネクテイビティ機能の向上という時代の要請に応えたアップデートや「ワイドボディ」の標準化。「世界初」と謳う音響式の路面状況感知システムを用いたウエットモードの採用、半世紀を超える歴史と新世代モデルであることを視覚的に融合させたまったく新しいインテリアの採用等、見どころは数えきれない。それが今回登場した992型と呼ばれる最新の911である。
この最新世代911だが、バリエーションの拡充は着々と進行し、アッと言う間に大家族となった992シリーズの中にあって「もっともエレガントな1台」と紹介したくなるのが『タルガ』の名が冠されたモデルだ。
クーペ、そしてカブリオレに続く「911第3のボディ」として初代タルガが発表されたのは1965年。当時、アメリカ市場で指摘された横転時の安全対策として、見るからに強固なロールオーバーバー付きのオープンボディとしてローンチされたのがその発端だ。後に、その名を受け継ぐモデルが固有のデザインの持ち主として認知されるに至ったのは、911ならではの長寿ゆえでもある。半世紀を超える時間は世界一級のスポーツカーと認められるモデルに対しても、「サーキットの香りが薄いバリエーション」にも確実に顧客層が存在することを証明したのである。
そうしたキャラクターを反映するかのように、従来型同様に992型のタルガも4WD仕様のみという設定。今回の取材車である最高出力385psを発するエンジンを搭載した『タルガ4』と、最高出力450psとより高性能な心臓を搭載した『タルガ4S』という、ふたつのバリエーションで構成される。
スイッチひとつでオープンボディに変身
そんな最新タルガのルックスが、初代モデルへのオマージュに満ちあふれているのは一見して明らかだ。幅広の「タルガバー」はボディ色にかかわらずシルバーに輝いてその存在感をアピールし、ラップアラウンドデザインが特徴的なリアウインドウも、初代タルガならではの見どころを反復して演じることになる。
一方で、否が応にも時の流れを意識させられるのは、当初はプリミティブな手動によるデタッチャブルトップの脱着という方式だった「変身」の作業が、今や複雑な動きをスイッチひとつ、しかもわずか20秒足らずでやり遂げるフルオート式に進化したことだ。
ところで、タルガはシリーズ中では「もっともサーキットから遠い存在」と、紹介できそうなキャラクターの持ち主とは言え、そこはあくまでも911の一員。変身シーンではエンターテイメント性に富んだ優美な動きを披露する。同じコンポーネンツを用いるカレラ4よりも100kg強、ソフトトップ式オープンボディのカレラ4カブリオレと比べても60kgほど重いものの、いざ発進してみれば「911そのもの」の自在な走りを披露し、そうしたことなどは忘れさせてくれた。
標準の19/20インチに対して、取材車は20/21と1インチずつ大径の前/後タイヤをオプションで装着する。それにもかかわらず、バネ下の動きは信じられないほど軽快で、まずはその乗り味が上質そのものの惚れ惚れとする仕上がりだ。もちろん、ボディの高い剛性感も少しも失われていないし、4秒そこそこという0→100km/h加速タイムが証明するように、動力性能も十二分に強力だ。
確かに911シリーズ中では異端児であるかもしれない。しかし、決して「キワモノ」感を伴わないのがこのモデルでもあるのだ。
911の頂点として存在するのが「ターボ」
そんなタルガから乗り換えると、「やっぱりこれこそが、911のひとつの頂点だな」と、思わず唸らされてしまうのが『ターボ』である。
ポルシェにとって、このネーミングは特定のメカニズムではなく、シリーズ中でもとくに際立って高いポテンシャルの持ち主を指し示すというのはご存じのとおり。1974年に発表された初代モデルが当時としては圧倒的な高性能ぶりで人々を驚嘆させた。それ以降、際立つ走りの能力がカリスマ視され、結果として人々を羨望させるブランド力に至ったのが『ターボ』の名称でもあるわけだ。
911のベーシックなモデル、すなわちカレラシリーズにもターボチャージャーが与えられるようになって久しいが、「これは別格」という思いは、このモデルに乗りアクセルペダルを深く踏み込んだ人であれば即座に感じる事柄であるはず。
なにしろ、フル加速シーンでは(決して比喩ではなく!)ハンドルの感触が明確に軽くなることを実感させられる。そもそもが後ろ寄りという重量配分に加え、怒涛のパワーが強烈なトラクションを生み出すことで後方への強い荷重移動が発生。結果、前輪荷重が減少する「ウイリー」のような状態が生まれ、恐怖心すら伴う、そんな稀有な印象を感じさせられるのだ。
一方、そんな怒涛の加速力を生み出す大容量のターボチャージャー付きエンジンでありながら、それによる神経質さなどおくびにも出さない、日常シーンでのすこぶる軽快な蹴りだし感も印象的だ。
なるほど、シリーズ中にあってもやはり「王者の貫禄」を十分に味わえる特別なバリエーション、それが『ターボ』の名が冠された911なのである。
911Tの意思を継ぐ高性能モデル「ケイマンT」
一方、今や911シリーズにも迫る存在感をアピールするまでに成長したミッドシップレイアウトの持ち主が、718シリーズ。水冷式の水平対向エンジンを筆頭にすべての部分に新開発アイテムを採用し、1996年に誕生した初代ボクスターをルーツとする。その中でもこのほど日本に上陸した最新のバリエーションが、ボクスターとケイマンの双方に設定された『T』グレードだ。
あれ? その名称どこかで耳にした覚えがあるぞ! という人の脳裏に刻まれているのは、2017年末に発表された『カレラT』であるはず。991後期型の911カレラをベースに生み出されたこのモデルは、リアシートをオプション扱いとして吸音材なども削減の上、リアとリアサイドのガラスを薄板化するなどで軽量化し、同時にベース仕様比で20mmのローダウンを行った「PASMスポーツシャシー」を採用。「シンプルでも高性能な、911の純粋主義を象徴するモデル」と紹介された1台だった。
「純粋な形のドライビングプレジャーを追求」と謳われつつ登場した718Tも、基本的には同様のコンセプトを採用。ローダウン化された「PASMスポーツシャシー」やスポーツクロノパッケージ、デファレンシャルロックを含むトルクベクタリング「PTV」などを標準装備とし、タイヤもベースグレード比では一挙に2インチアップとなる20インチのアイテムを採用している。
ただし、911カレラTと比べてすっぽりと抜け落ちているのが、軽量化に関する話題。そもそもリアシートを備えないためその省略による軽量化策は図れず、ガラスの薄板化や吸音材の削減といった話題も謳われてはいない。
実際、報告されている車両重量は、ボクスターT/ケイマンTともに標準仕様と同一の1455kgという値。これをやはり標準仕様と変わらない2Lのフラット4ターボ付きユニットで駆ることになるので、0→100km/hデータも4.9秒という同一値が報じられている。
911ターボ比では100mmも幅が狭く、全長もひと回り以上コンパクトであるために、ワインディングロードでは「まずはコンパクトさが心地良い」と思える場面が多かった。一方、そんな身軽さこそが特徴のモデルゆえに、「できれば『S』グレード用の2.5Lユニットを積んで欲しかった」と思えるシーンに遭遇したことも事実だった。
端的に言って、ガソリンユニット用としては稀有で贅沢な可変ジオメトリーターボが奢られたうえに500ccが上乗せされた『S』グレード用エンジンに比べるとパフォーマンスの違いは歴然。とくに3000rpm以下の領域では「線の細さ」が目立ち、パフォーマンスが売りのグレードながら、時に物足りなさも漂った。
それにしても改めて実感させられたのは、同じ「ポルシェのスポーツカー」でも、そのキャラクターはかくも個性に富んでいるという事実。プライスリストを眺めると驚くほど多くのバリエーションがあるが、そこには緻密なマーケティングに基づく明確な理由が存在するということなのである。(文:河村康彦/写真:永元秀和)
ポルシェ 911タルガ4 主要諸元
●全長×全幅×全高:4519×1852×1297mm
●ホイールベース:2450mm
●車両重量:1740kg
●エンジン:対6DOHCツインターボ
●総排気量:2981cc
●最高出力:283kW(385ps)/6500rpm
●最大トルク:450Nm/1950-5000rpm
●トランスミッション:8速DCT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・67L
●WLTCモード燃費:8.9km/L
●タイヤサイズ:前235/40R19、後295/35R20
●車両価格(税込):1760万円
ポルシェ 911ターボ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4535×1900×1303mm
●ホイールベース:2450mm
●車両重量:1715kg
●エンジン:対6DOHCツインターボ
●総排気量:3745cc
●最高出力:427kW(580ps)/6500rpm
●最大トルク:750Nm/2250-4500rpm
●トランスミッション:8速DCT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・67L
●WLTCモード燃費:8.0km/L
●タイヤサイズ:前255/35R20、後315/30R21
●車両価格(税込):2500万円
ポルシェ 718ケイマンT 主要諸元
●全長×全幅×全高:4379×1801×1276mm
●ホイールベース:2475mm
●車両重量:1455kg
●エンジン:対4DOHCターボ
●総排気量:1988cc
●最高出力:220kW(300ps)/6500rpm
●最大トルク:380Nm/2050-4500rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:MR
●燃料・タンク容量:プレミアム・54L
●WLTCモード燃費:12.3km/L
●タイヤサイズ:前235/35R20、後265/35R20
●車両価格(税込):842万円
[ アルバム : ポルシェ911タルガとターボ、そして718ケイマンTの本領に迫る はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
ターボは991の時には、リアステアは標準装着だったけど992に成ってオプション設定に成った?
成ってなければ、リアステアの装着されたタルガとターボの乗り味と718ケイマンとの乗り味の差が出る筈だけど、筆者には感じられる事は無かったのかなぁ?