フェラーリは主力モデルがハイブリッドV6ターボにスイッチ!
296GTBはフェラーリの市販ハイブリッドカー第3弾である。第1弾は限定車のラフェラーリ(2013年発表)、第2弾は2019年デビューのSF90シリーズだった。SF90は、フロント2/リア1基の3モーター構成の旗艦PHEVモデル。限定車ではないが、価格は5000万円オーバー、スーパースポーツの中でも特別なポジションにある。対して296GTBは、今後の主力車である。つまり1970年代に登場した308GTBを出発点とする2シーターV8ミッドシップの後継車であり、ロードカービジネスの大黒柱だ。
進化するフェラーリ! 究極のV12スーパースポーツ、812コンペティツィオーネのスーパーな走り世界
車名が表しているのは「2.9リッターの6気筒エンジンを積むクーペ」。システム出力は830ps。従来から2気筒減らす替わりに電気モーターと大容量バッテリーを積み込み、性能的にはF8トリビュートを上回った。
マラネロ期待の新世代モデル、そのデビュー試乗会の舞台は、風光明媚で暖かいスペインのセビリア。フェラーリがイタリア以外で新型車の国際試乗会を開催するのは初めてと聞いた。
296GTBには、SF90と同様に、標準仕様に加えてサーキット走行を前提としたアセット・フィオラーノというパッケージオプションが用意される。軽量化にこだわったほか、専用ダンピングシステムや、往年のレーシングカー、250LM風ルックも選べる。
まずサーキットを激走! 速さと完成度に感銘
試乗会はアセット・フィオラーノ仕様でサーキットを攻めることから始まった。何はさておき確認したかったのは、サウンドを含めた120度V6ツインターボのエンジンフィールとバッテリー重量増が及ぼす運動性能への影響だ。
開発陣が「ピッコロV12」と名づけたF163エンジンは、回転上昇とともにクルマ好きを刺激する音質になり、従来のV8ツインターボよりかなり官能的。音圧や外部へのサウンド伝播こそV8NAほどの迫力はないものの、室内では洗練されたBGMを奏でる。ドライブしながらいつまでも聞いていたいと思わせる。
パフォーマンスは超一級。バッテリーに十分な余力があるうちは当然、申し分ない性能だ。モーターアシストは速度やギアによって綿密に制御され、ターボチャージャーの存在を感じさせない。抜群にシャープな味わいをもたらす。さらにトルクをスムーズに上乗せする感覚がある。まるで大排気量の自然吸気エンジンを駆っているかのようだ。間違ってひとつ上のギアでコーナーに入っても、それなりに速く脱出できる。なお、電気の力がなくなっても、急激な性能ダウンは感じない。ロードカーの「サーキット遊び」は、何周も連続して攻めるものではない。現在のセッティングは最良である。
車体とドライバーとの一体感も素晴らしい。重いバッテリーは車体の重心近くに配置され、腰回りに抜群の安心感をもたらす。ここ20年のミッドシップ・フェラーリの中で、最もフィット感がある。
ブレーキを含めたシャシー制御も圧巻だった。マネッティーノ(ドライブモード)をレース、eマネッティーノ(ハイブリッドパワートレーンモード)をクォリファイにして走っていれば、面白いように曲がる。830psのRWDミドシップカーながら、積極的に攻めていけるのだ。まるで怖くない。そのうえ、クルマ任せという感覚もない。アンダーステアなどまるで出ない。急にドライビングスキルが上達したかのようだ。ヴァーチャル世界のような非日常感が安心して楽しめた。だが296GTBは、決して従順な駿馬ではない。CTオフモードをこっそり試すと、自由自在の「腰振りダンスパーティ」だった。
標準仕様では一般道を300kmほどドライブ。足回りのセッティングを変更できるこちらのほうがボクの好みだ。まるで飽きない。足回りはよく動き、フラットライドで心地よい。何より街中でEV走行できるのがうれしい。子供たちがはやしたてる村の中を無音で走り抜けた。彼らの驚く様子が痛快だった。
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みんなのコメント
招待を受けてこの程度しか書けないとは、この記者を選んだフェラーリ社も誤算だろうな。