2017年2月23日に新型のMINIクロスオーバーF60型がデビューし、その詳細はこちらでお伝えしている。その新型MINIクロスオーバーに試乗する機会があり、サイズアップした新型MINIの魅了を探ってみた。
<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>
■ポジショニング
もともとMINIはBセグメントのプレミアムモデルとして人気を得ているモデルだが、2015年に国内販売を始めたクラブマンからサイズアップをしている。そして今回の2017年発表のクロスオーバーの2モデルが従来のMINIがポジションしたBセグメントからB+、あるいはCセグメントのプレミアムモデルへと移行した。
将来のMINIのラインアップ展開として、小さいからミニという概念から離れ、プレミアム・ブランドとしての成長を目指す方向でマーケットに対応したボディサイズ、装備、機能性などを見直しつつ進化させていくわけだ。
そうした視点から、今回のクロスオーバーはクラブマン同様、北米、中国マーケットがメインであり、ボディサイズの拡大は必然として行なわれている。また、SAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)としての個性を際立たせ、プレミアムSAVに相応しいデザイン、装備、機能を持たせてフルモデルチェンジしたのが、このクロスオーバーということになる。
ターゲットのライバルとなるのはメルセデス・ベンツGLA、先ごろ導入されたアウディQ2あたりで、他にフォルクスワーゲン・ティグアンなどが挙げられる。
■コンセプト
こうしたポジショニングで、より個性を際立たせるために「冒険」「挑戦」「発見」といった言葉がキーワードにあり、こうしたライフスタイルに訴えるモデルという位置づけだ。したがって、ライバルとは一味違う個性を持ち、言い換えれば、個性的なモデルであることがMINIブランドらしいということになる。
そしてボディサイズは、マーケットニーズに反応するためにも拡大され、全長4315mm、全幅1820mm、全高1595mmで、先代と比較して全長で+195mm、全幅で+30mm、全高で+45mmというサイズアップを図っている。
プレミアムコンパクトセグメントのSUVに相応しいSAVとするために、上質なデザイン、ドライブフィールを特徴としていることも見逃せない。こうした特徴をアピールすることで、従来のMNIファンを満足させつつ、新しい顧客獲得へのツールとしてのポジションに立っていることもよくわかる。
■デザインと機能性
エクステリアは、ひと目でMINIとわかるデザイン・エレメンツを多く残しつつ、フェンダーを黒くカバーするフェンダーアーチや特徴的なショルダーライン、丸四角風のライト類のデザインなど、個性的でかわいらしさと力強さを感じさせるデザインだ。
インテリアではよりプレミアム感が強くなったと感じる。いずれも高級感があり、好印象。デザインモチーフはやはり丸型を基調としたデザイン・エレメンツで構成しているが、細部、デコレーションなどを踏まえると、ひとつ上のクラスの高級感を作っていることが分かる。それでいて、アクセルペダルやブレーキペダルのデザインは楕円とする遊び心も残していて楽しい。
例えば運転席のシートはレーザーなのだが、ステッチに工夫がありサイサポート部(太もも裏)はステッチデザインが異なる。そしてそのサイサポート部だけ稼動する構造で、様々な体型にフィットさせることができる。もちろん、電動パワーシートも装備しているといった具合だ。
クロスオーバーを印象づける装備として、ピクニック・ベンチという装備を搭載した。これは収納可能な装備で、リヤトランクアンダートレイに格納されている、クッションシートをテールエンドに取り付けるとベンチとして利用できるというアイディア装備だ。アウトドアでちょっとしたブレイクに利用できるように、という装備だ。
■エンジン
クロスオーバーに導入されたパワートレーンは2.0L ・4気筒のディーゼルターボだけのラインアップ。が、出力違いで2パターンある。MINI クーパーDは150ps(110kw)/330Nmで、クーパーSDは高出力版で190ps(140kw)/400Nmというスペックになる。トランスミッションはいずれも8速ATを搭載している。
ちなみに燃費だが、クーパーDは21.3km/Lで、SDの高出力エンジンは20.8km/Lとなっている。いずれもクリーンディーゼルとしてエコカー減税対象モデルであり、自動車取得税、重量税が免税され、翌年度は自動車税が75%減税される。
このディーゼルはNOxキャタライザーを使用しているため、尿素SCR、アドブルーなどは使わないタイプでいわゆるメンテナンスフリーだ。ただ、今後の規制強化を考えると次世代ディーゼルはアドブルーを採用していくことになるだろう。実際、3月に発表された新型5シリーズの2.0Lディーゼルターボはアドブルー仕様になり、今後のディーゼルには必須の要件になってくるからだ。
ちなみに、先代MINIクロスオーバーのユーザ—指向は8割程度がディーゼルをチョイスしていたというデータだという。このあたりからも今回ディーゼルだけのラインアップ展開とした裏付けと言える。また、2017年初夏までにはプラグインハイブリッドモデルの導入が確定しており、ディーゼルとPHEVという2本立てになる予定だ。
■乗ってみて
ファーストインプレッションは、「横幅が広い」だ。現行3シリーズの全幅が1800mmなので、さらに+20mmワイドの新型クロスオーバー。先入観としてMINIという概念が刷り込まれているため、広いなーと感じることひとしお。さらに天井高も高くヘッドクリアランスも十分にある。とても乗用車の比ではない。だから全体にデッカク広いというのが印象だ。
トグルスイッチのスターターボタンでエンジンを始動。ブルンとボディを振動させガラガラとディーゼル音?をたてるが、一般的にはエンジン音として認識される程度だ。車内で窓を閉めた状態だとエンジンがかかっていることが認識できるレベルでディーゼルのネガはないと思う。
試乗車はSDグレード。つまりMINI COOPER SD CROSSOVER ALL4グレードだ。現状のトップグレードで、オンデマンド式のAWDを搭載。油圧クラッチを利用する前後トルク配分を変化させ、最適な駆動トルクを配分するタイプだ。
試乗は箱根のワインディングだが、こうしたAWDの特徴を特に体感することはなく、FFなのかAWDなのか気にする場面は存在しない。
ハンドリングは相変わらずMINIらしかった。サイズも大きくなりすこしはゆったりした動作になるのかと想像したが、クイックに反応するハンドリングで、MINIらしい高い俊敏性を感じさせるハンドリングだった。これはMINIに対する期待値を満たす、想像どおりのクイックさという印象を持つだろう。
ひとつ思うのは、プレミアムCセグメントであれば、もう少し低速時の操舵力は小さくてもいいような気がする。ハンドルが軽いという印象は軽薄にも感じるかもしれないが、BMWの傾向として、いつもハンドルが重いと思う。MINIブランドは男女問わず、年齢を問わずの幅広い富裕層相手になるだけに、低速時のハンドルの重さを軽くするというのはいかがだろうか。
パワーに関しては全く不満がない。ハイパワーモデルのSDグレードということもあるが、ディーゼルの特性を生かした低速からの大トルクは走りやすい。それはワインディングでもアクセルを大きく踏み込むことなく、グングン坂道を登っていく。今回は高速道路の走行はしなかったが8速ATということもあり、回転を上げずに、3/8もアクセルを開ければすべてのクルマを置き去りする強い加速が得られるはずだ。これぞディーゼルのドライバビリティであり最大の魅力だ。
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