クルマに押し寄せる電動化の波は、確実に大きくなってきた。そして車種も着実に増えている。電気モーター駆動の利便を享受するためには、電力のマネージメント術も大切となる。(Motor Magazine 2021年2月号より)
欧州では大きなインセンティブがピュアEVの販売を後押し
純粋に気候変動への危機感を抱く人が増加したことはもちろん、それが「利益」に繋がると判断した人や企業が続々現れたということもあり、2020年にかつてない勢いでニューモデルがデビューしたのが「電動車」であり、その中でも究極の存在とされるピュアEVだ。
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欧州の多くの地域では、走行時にCO2を出さないモデルに多額の補助金など大きなインセンティブが与えられることで、一気に販売台数が増す結果になった。
彼の地では、現時点で「製造過程で排出されるCO2や、チャージする電力の発電時に発生するCO2に関しては、すべて不問」ということになっているからだ。かくして、あちらでいま発売されている大半のピュアEVは「走行時のCO2排出量が規定値をオーバーした分に課される<罰金>を逃れたい一心から世に送り出された」と解釈しても不自然ではない。
さらに走行時の排出ガスがゼロのモデルには、実際の台数以上の数が売れたとカウントする「スーパークレジット」という制度があるので、なおさら販売に力が入る。
ピュアEVでもアピールされるブランドらしさという特色
それゆえ、グローバルな視点でのCO2削減効果に関しては、いまだ諸説が聞かれるピュアEVではあるものの、日本でも一気に賑やかさを増したこのセグメントの作品には、やはり各ブランドごとのオリジナリティが現れているのも事実。
たとえばアウディ初の量産型ピュアEVであるeトロンスポーツバックでは、コアコンピタンスである4WDシステムの採用はもとより、搭載する大容量バッテリーを巧みに温度管理することや回生効率を高めたことによる長い航続距離の確保など、先進技術の採用をアピールする点がいかにもこのブランド的だ。
一方で、純エンジンモデルと同じ骨格を用いて、スタイリングにも大きな差異は与えていないe-208/SUV e-2008/DS3 クロスバック E-テンスという共通のメカニカルコンポーネンツを用いたPSAの3モデルでは、バッテリー搭載量はあえて抑え目とするなどで「実際の使用過程におけるコストを、純エンジン車と同等とする」というコンセプトを掲げる点が新しい。
対して、ポルシェが送り出すタイカンでは、4ドアモデルながらも後席足元にバッテリーを置かない「フットガレージ」を設けることなどで、911由来のルーフラインや超低重心レイアウトを実現。「スポーツカーメーカー」ならではの特色を見せつける。
いずれにせよ、このセグメントには2021年もニューモデルが続々登場すること間違いなしだ。(文:河村康彦)
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