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シンプル・イズ・ベスト キア・スポーテージ 1.6 T-GDIへ試乗 逸材クロスオーバー

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シンプル・イズ・ベスト キア・スポーテージ 1.6 T-GDIへ試乗 逸材クロスオーバー

先代になかったスタイリングの自己主張

韓国・キア社の経営陣は、自社の遺産や歴史にこだわることがお好みではないらしい。過去のモデルを振り返れば、理解できなくもないけれど。

【画像】モデルチェンジ キア・スポーテージ 欧州で競合する日本のSUVと写真で比較 全105枚

現在のキアは、躍進を遂げつつある。純EVのクラスリーダーになり得る新モデル、EV6を作り上げるまでの実力を持つに至った。自動車産業全体で見ても、歴史に残りそうな飛躍といえる。

同社のマーケティング部門は、ハイテクでプレミアムなイメージを醸成しようと努めている。前時代の既存モデルは、あまり人目には触れさせたくないのだろう。

5代目へモデルチェンジしたキア・スポーテージだが、実は初代は、マツダ・ボンゴというワンボックスカーのシャシーをベースにしていた。そのイメージを引きずっている読者も、いらっしゃるかもしれない。

だが、2006年にアウディのデザイナーだったペーター・シュライヤー氏を招聘。モデルラインナップとブランドイメージの一新に取り組んできた。その変わり身ぶりは、クルマ好きなら振り返ってみるのも面白いと思う。

最新のクロスオーバー、スポーテージは、欧州の道路環境に合わせてチューニングされた、キア独自のプラットフォームで成り立っている。大胆なスタイリングは好みが分かれそうだが、先代になかった自己主張を備えていることは明らかだ。

オシャレな個性と見るか、少しやり過ぎと捉えるか。英国価格は、3万ポンド(約465万円)を切る。ライバルモデルを挙げるなら、マツダCX-5やプジョー3008が該当する。

操作系の感触や反応に一貫したまとまり

キア最新のクロスオーバーには、幅広いパワートレインが用意された。電動支援の付かない内燃エンジンとしては、ターボで加給される1.6Lガソリンとディーゼルがある。これに、電圧48Vのマイルド・ハイブリッドを組むこともできる。

加えて、1.6Lガソリンに電気モーターを組み合わせた、システム総合229psのハイブリッドと、最上位に当たる264psのプラグイン・ハイブリッド(PHEV)も選べる。

駆動方式は基本が前輪駆動だが、ハイブリッドなら四輪駆動にもできる。トランスミッションは、トルクコンバーター式のATのほかに、デュアルクラッチATも用意された。6速MTは、ハイブリッドではない1.6Lエンジンでのみ選択できる。

先月、既にAUTOCARでは新しいスポーテージのハイブリッド版へ試乗している。今回は、エントリーグレードに当たる、前輪駆動の1.6Lガソリンターボに6速MTという組み合わせだ。

トリムグレードは真ん中に当たる「3」。ダンパーはアダプティブではない、通常のものだった。

5代目スポーテージとしてはベーシックな構成になるが、やはりシンプル・イズ・ベストかもしれない。運転した印象も非常に良かった。

ステアリングと3枚のペダル、シフトレバーの重み付けやフィーリング、反応に一貫したまとまりを感じる。ドライビング体験にそつがない。

フォード・フォーカスのように良い走り

ボディサイズは4代目から成長しているものの、回頭性も良い。その理由は、フロントに搭載されるエンジンが、1598ccの軽いユニットであることが大きいだろう。コーナリングが楽しいとまではいえないが、不満はまったく感じられない。

そのまとまりは、ステアリングの精度やニュートラル傾向の操縦特性、扱いやすいパワートレインなどにも及ぶ。完成度の高いフォード・フォーカスのように良い。

エンジン音が気持ちを高ぶらせたり、有り余るパワーやトルクが湧き出るわけではない。だが質感は磨かれており、とても快活に走ってくれる。

サスペンションのチューニングも素晴らしい。スプリングレートは、クロスオーバー・カテゴリーの中では硬めの部類に入るが、コシがあるしなやかさ、と表現できるレベル。

試乗車のホイールは、ノーマルサイズより1インチ大きい、18インチだった。平滑ではない郊外の路面を揺れで伝えていたものの、市街地での低速走行や滑らかな高速道路なら、穏やかな乗り心地を得られるようだ。

ハイブリッドで四輪駆動のスポーテージなら、車重も増える。印象は、これより劣るかもしれない。

訴求力の高いエントリーグレード

一方で、1.6Lエンジンは刺激に欠ける。小排気量のターボ・ユニットとして考えれば、レスポンスは悪くないし、約1500kgの車重に負けないパワーは引き出せる。設定は燃費重視。回転フィーリングは、ライバルと比較してザラついた印象がある。

インテリアは、全体的にはデザインに優れている。省コストを感じる硬質なプラスティック部品も散見されるが、それを超えて、メルセデス・ベンツのように2面が続いた大きなモニターは、とても見栄えがする。

後席側の空間も、膝まわりはほどほどながら、ゆとりがある。シートレイアウトはホンダHR-Vのように、目立った工夫がないようだ。

5代目スポーテージをまとめると、エントリーグレードの訴求力は間違いなく高い。車内空間に不足なく、走行マナーも褒められる。

運転を心から楽しめるわけではないが、操縦性のまとまりと、6速MTとの組み合わせにには充足感が高い。このクロスオーバー・カテゴリーの中では、新たな逸材といって良さそうだ。

キア・スポーテージ 1.6 T-GDI(英国仕様)のスペック

英国価格:3万945ポンド(約479万円)
全長:4515mm
全幅:1865mm
全高:1645mm
最高速度:181km/h
0-100km/h加速:9.9秒
燃費:14.7km/L
CO2排出量:154g/km
車両重量:1526kg
パワートレイン:直列4気筒1598ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:150ps/5500rpm
最大トルク:25.3kg-m/1500-4000rpm
ギアボックス:6速マニュアル

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