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日産の名門が原点回帰!! なぜ「NV350」を取った? キャラバンの期待と不安

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日産の名門が原点回帰!! なぜ「NV350」を取った? キャラバンの期待と不安

 2021年10月20日、日産自動車は「キャラバン」のガソリン車をマイナーチェンジし、同日より販売を開始することを発表した。今回のマイナーチェンジで、ガソリン車は車名が「NV350キャラバン」から「キャラバン」へと変更された。

 現行型NV350キャラバンが登場したのが、2012年6月のこと。このフルモデルチェンジのタイミングで、それまで「キャラバン」であった車名が「NV350キャラバン」へと変更された。今回、約9年4カ月ぶりに「キャラバン」へ車名が戻されるかたちとなった。

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 なぜ今回、車名から「NV350」をとったのか。そして、日産キャラバンはこのさき、どのように進化していくのだろうか。

文/吉川賢一、写真/NISSAN

[gallink]

「NV350」をとった理由は「愛着ある名前への回帰」

キャラバンは、仕事の相棒としてのみならず、荷室にバイクや自転車、カートなどを積み込んで遠征や旅行に出かけたりと、レジャーや趣味を楽しむお客さまからも、高く支持されてきた

 日産「キャラバン」は、トヨタ「ハイエース」と共に、「日本の働くバン」として、多くのお客さまに愛用され続けられてきた名車だ。

 広く使い勝手の良い荷室空間や、堂々とした存在感のあるエクステリア、仕事の相棒としてのみならず、荷室にバイクや自転車、カートなどを積み込んで遠征や旅行に出かけたりと、レジャーや趣味を楽しむお客さまからも、高く支持されてきた。

 筆者の知人にも、キャラバンをキャンピングカー仕様に改造し、遠征先で寝泊まりできるようにしていた方がいる。箱型ボディならではの広さは、自宅と遜色ないほどに快適に過ごせるのだそうだ。

 ちなみにNVは「日産(NISSAN)のバン(Van)」、350は「車両総重量3,500kgクラス」を意味している。同様に、NV100クリッパーは「1000kgクラス」、NV200バネットは「2000kgクラス」となる。

 また、欧州日産には、全長4.5mほどのNV250、全長5mほどのNV300、全長6mオーバーのNV400、という商用バンもある。海外でも販売される商用車であるため、名称でおおよそのサイズ感が分かるように決めた、日産商用車のネーミングルールであった。

 冒頭でお話ししたとおり、今回、約9年ぶりに、ガソリン仕様の車名が「キャラバン」へ回帰されたわけだが、商用バンの「NV150AD」も2021年5月のタイミングで車名を「AD」に変更している。

 その理由について日産の広報担当に伺ったところ、「これまで日産のLCV (Light Commercial Vehicle:小型商用車)のグローバルでの認知向上という観点で、NV/NTを付けることをルールとしてきましたが、日本において実際のお客さまの認知は、キャラバン、ADもしくはADバン、とされているのが実情でした。今後はお客さまに、これまで通りの車名でマネージしようとする決断をしました」とのことだった。

 日本市場ではNV350といった機能的な名称よりも、長年使われてきて愛着がある「キャラバン」ブランドに修正したほうがビジネス的に良い、という判断したようだ。

日産の「新顔」採用!! AT多段化で燃費と静粛性も改善

マイチェン後のキャラバン。エクステリアはフロントグリルとフロントバンパーを、ナバラやフロンティアといった海外向け日産SUVが採用を始めた「インターロックグリル」へと刷新してきた

マイチェン前のNV350キャラバン

 今回のマイナーチェンジのポイントのひとつは、エクステリアの変更だ。フロントグリルをナバラやフロンティアといった、日産の海外向けSUVが採用を始めた「インターロックグリル」へと刷新、フロントバンパーも変更し、グリルに付いたNISSANロゴも新形状となった。

 ボディカラーも3色を追加。雪原を想起させる「ピュアホワイトパール」、漆黒の夜空をイメージした「ミッドナイトブラック」、アウトドアシーンで存在感が光る「ステルスグレー」の新色を加え、全8色のラインアップとした。また、特別塗装色にはスクラッチシールドを採用している。

 インテリアも小改良されている。メーターには、視認性、操作性を大幅に向上した新型のファインビジョンメーター(5インチTFTディスプレイ付)を採用。ステアリングは新形状のD型ステアリングホイールを採用し、シートトリムは生地を刷新するなど、質感も大幅に向上させている。

 スカイラインなどにも採用されている長時間ドライブでの疲労を軽減する「スパイナルサポート機能付きシート」も全車標準装備。なお、運転席と助手席のシートバックとクッションには、シートヒーターも装備した。

 また、インテリジェントエマージェンシーブレーキを全車標準採用したことで、全車がサポカーS(ワイド)の対象となった。さらに、「インテリジェントルームミラー」をEXグレード以上に標準装備、「インテリジェントアラウンドビューモニター」(EXグレード以上に標準装備)の機能性も向上させている。

 そして、大きめの変更ポイントが、トランスミッションが5速ATから7速ATに多段化し、燃費と高速走行中の静粛性が改善したことだ。WLTCモード燃費は8.3km/L、マニュアルシフトモードも追加された。

 ライバルのハイエースの6速ATに対して、ギアは増えたが、ハイエースの燃費は9.3km/Lであり、燃費性能は依然として及ばない状況だ。

現行型キャラバンに求められるのは「軽量化」

 2012年6月の登場から、9年が経過したキャラバン。ライバルのハイエースも、現行モデルの登場は2004年と、現時点で17年が過ぎている。どちらも長寿ではあるが、小改良によって商品力が維持されており、安定して売れ続けている。

 年間で平均5万km以上も走る、この手の「働くクルマ」に求められる要素は、「積載能力」、「壊れてもすぐに直せること」、そして「車両価格」だ。乗り心地や音振にはある程度目をつぶり、その他の長所で選ぶクルマなので、あえて豪華けんらんにする必要はない(アフターパーツでカスタムする方は多くいる)。

 そうした点で現行キャラバンをみていくと、キャラバンはやはり、「燃費」が弱点だ。ただ、一般的な乗用車のように、ハイブリッドやe-POWER、高度なクリーンディーゼルエンジンなど、パワートレインの変更で燃費向上を目指すのでは、上記の「働くクルマに求められる要素」が失われてしまう。キャラバンには、「軽量化」によって燃費向上を目指す、ということが求められる。

 基本骨格をいじって合理的な軽量化設計をするとなると、大変更が必要だが、未来永劫、この手の「働くクルマ」への需要はなくなるはずがない。早めに手をうって、ハイエースとの差を埋める必要があるのではないだろうか。

欧州日産の商用車に切り替わることはない

欧州日産のプリマスター。現行型の標準仕様(L1H1)のサイズは、全長4999×全幅1956×全高1971mm、ホイールベース3098mmとデカい

 2021年9月、欧州日産は、「NV250」と「e-NV200」の後継モデルとなる新型小型商用車「Nissan Townstar(タウンスター)」を公開した。同時に、NV400とNV300の後継モデルとして、「Interstar(インタースター)」と「Primastar(プリマスター)」も今後導入予定であることも発表している。

 日本のキャラバンがすでに9年目を迎えたモデルであることを考えれば、この「Interstar」や「Primastar」を「次期型キャラバンとして日本導入すればよいのでは?」とも思えるが、そうはいかない。

 日本市場で販売されている4ナンバーサイズのキャラバンは、全長4695mm×全幅1695mm×全高1990mmとひとまわり小さく、スーパーロングボディ(最長5230mm、車幅1880mm)であっても、Primastarのほうが車幅は76ミリも大きい。ハイエースも4ナンバーサイズは、全幅1700mm以下。もし日本でこのPrimastarを見れば、相当大型なバンに見えるだろう。

 日本で活躍しているキャラバンやハイエースは、全幅を1700mm未満におさえながらも、大量の荷物を積載し、しかも最小回転半径はコンパクトカー並(キャラバン、ハイエースとも2WDで5.0m)と、小回り性能に優れている。

 このキャラバンやハイエースのサイズ感こそが日本で商用バンとしてもっとも使い勝手のいいサイズ感であり、海外製のバン(しかもルノー開発のOEM車)のおおらかな車幅は、日本市場で受け入れられることは難しい。  

 やはりキャラバンには、今の姿のまま、時代に沿った進化が望ましい、と考える。

[gallink]

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みんなのコメント

10件
  • 耐久性とメンテナンスのし易さを上げれば少しずつでも顧客を増やしていくことができるんだけどな。
    そういった基本的なことから始めなければ差は埋まらない。
  • あとは耐久性だよね。アフリカで50万キロ以上走ってる車体とかあるの?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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