「最近のクルマは重くなってしまって、運転が楽しくなくなった」というのは、クルマ好きに共通する嘆きです。
確かに昔は、安全基準が今よりずっと低かったので、その分クルマが軽くて楽しかった。いろいろ軽い名車がありましたよね。でも今は中古車価格が高騰し、とてもじゃないが手が出せないという状況になっています。
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そこで、現行車のなかから軽くて楽しいクルマはないのか? あるんです!
よく机上の論理で車重だけを見て、コンパクトカーや軽自動車を中心に軽いクルマと紹介される例があります。ただ単に軽いクルマというだけじゃダメなんです。
実際に乗ってみて「軽いってことはすばらしい!」と感じる「軽くて楽しいクルマ」をモータージャーナリストの清水草一さんが5台選び、その魅力を解説します。
文/清水草一
写真/ベストカー編集部
■現行車のなかから選んだ「軽くてステキなクルマ5選」
記憶の紐を解いてみると、たしかにちょい古のヤングタイマーといわれる1980年代や1990年代のクルマのなかには軽くて楽しいクルマがたくさんあった。
●NA型初代ロードスター:1.6L直4、120ps、車重940~960kg(MT)、1.8L直4、130ps、車重980~990kg(MT)
●GC8インプレッサ:特にスペックCは最強。2L水平対向4気筒ターボ、280ps、車重1240kg
●初代スイフトスポーツ:1.5L、直4、115ps、車重930kg
●AZ-1:657cc、直3ターボ、64ps、車重720kg
●カプチーノ:657cc、直3ターボ、64ps、車重700kg
●インテグラタイプR(B18C 98スペック R)、1797cc、直4、200ps、車重1060kg
●AW11型MR2(後期型):1587cc、直4スーパーチャージャー、145ps、車重960~1120kg
●FC3SマツダRX-7:654cc×2、205ps(前期185ps、後期は205ps、アンフィニは215ps)、車重1250kg(GT-R)
でもこれらのクルマは今、異常とも思えるほどの中古車価格高騰につき、よほどのクルマ好きじゃない限り、オススメできません。
ということで、現行車のなかから、軽くて楽しいステキなクルマを5台選んでみました。ないかといえば、必ずしもそうでもない。特に最近は、軽さで勝負のモデルが結構いろいろ出てきているんです!
■マツダロードスター/車重990kg~1060kg
1.5L、直4:132ps/15.5kgm、価格:255万4200(S)~325万6200円(RS)
車両重量は990kgから1060kg(6AT)。6MTはSの990kg、Sスペシャルの1010kg、RSの1020kg、NR-Aの1010kg。
なにしろ初代のNA型ロードスターよりも、4代目のND型現行ロードスターのほうが少しだけ軽くてコンパクトなのだ。こんなクルマは世界的に見てもほとんどない。世界遺産に当確って感じ!
その走りは、クラシカルで軽快そのもの。クラシカルというのは、タイヤのグリップに頼らずに、しっかりとロールしつつ、素直に警戒に曲がってくれるという意味だと考えてください。
パワーもクラシカルに控え目だが、軽いから非力には感じないし、逆に全開の楽しみを味わえる。1.5Lという排気量が、すべてをいい方向に導いている。デザインも最高だし、本当に涙が出るようなクルマです。
ただこれがロードスターRFになると、車重は1100~1130kgに増加し、メタルトップの分、重心も高くなって、それほどのヒラヒラ感はなくなる。エンジンも2L(184ps)になってノーズが重くなるし。ロードスターRFはかなり別のクルマだと考えたほうがいいです。
■アルピーヌA110ピュア/車重1100kg
1.8L、直4ターボ:252ps/32.6kgm、価格:ピュア/790万~811万円
車両重量1100kg、最高出力252ps、そしてミドシップ。スペックを見ただけで、これぞクルマ好きが求めていたもの! って感じだが、実際乗るとスペック以上にスバラシイ!
真の軽快さを得るためには、車両重量は1トンくらいまで、というのがひとつの目安だが、それはフロントエンジン車の場合。アルピーヌはミドシップだ。ノーズにエンジンがないんだから、鼻先の軽さはロ−ドスターをも上回っている。
エンジンは1.8L、直4ターボ。パワーもあるしフィーリングもすばらしくスポーティ。実は、アルピーヌのエンジンが「すばらしくスポーティ」に感じるのも、ボディが軽いからなのだ!
踏んだ時のレスポンスは軽さに比例する。だから、同じエンジンを積むメガーヌRSと比べると、フィーリングまで段違いにステキに感じる。もうこれ以上のスポーツカーはこの世に必要ない! というくらい運転が楽しい。
ライバルの718ケイマンも同じミドシップで非の打ち所のないスポーツカーだが、車重は1410kg(2Lフラット4ターボ、300ps、673万円)もある。軽さこそ、アルピーヌ最大の魅力と言っても過言ではないだろう。
■スイフトスポーツ/車重970~990kg
1371cc、直4ターボ:140ps/23.4kgm、価格:183万6000円(MT)、190万6200円(AT)
「ロードスターやアルピーヌは2シーターじゃないか。そんな実用性のないクルマは買えないぜ!」とおっしゃるあなた。実用的なクルマにも、軽さを楽しめるモデルはありますぜ!
車両重量は6MTが970kg、6ATでも1トンを切る990kg。エンジンは140psの1.4Lターボ。スペック的にもしっかり合格だが、実際乗ってもまさに合格。フツーに走っているだけでも楽しいクルマだ。
ボディはノーマルのスイフトよりはるかにしっかりしているし、ハンドリングも軽快。エンジンは実用トルクが豊かで、軽く踏むだけでスッと加速してくれて気持ちいい。
これも軽さのなせる業!!! トップエンドではちょっと回転が苦しそうになるけど、そんな上まで回すことなんて滅多にないので問題ない。
それと、スイスポは「追い込むとアンダーステアになる」といわれているが、これまたそこまで攻めるなんてこたぁフツーしないので、まずカンケーないですよ! スイフトスポーツの楽しさは日常の楽しさなのだ。
サーキット走行が趣味の人は、それなりに仕立てればいいし。もちろん居住性もフツーにあるので、ファミリーカーとしてもまったく合格。
惜しむらくは、195/45R17というタイヤサイズだけ。もうちょっとコンフォートなタイヤでいいと思うのですが、まあとにかく、軽くて楽しいクルマであることは間違いない。
■アルトワークス/車重670~740kg
658cc、直3ターボ:64ps/10.2kgm、価格:150万9840円(FF、5MT/5AGS)
車両重量670kg~740kg。厳密にいうと、5速MTはFFが670kg、4WDは720kg。5速AGSはFFが690kg、4WDが740kg。軽さに関しては世界最強クラスだ。これだけ軽いスポーツモデルが現行モデルに存在するんだから、「最近のクルマは重くてイカン」なんて言えないはずだぜ!
パワーは軽の自主規制で64psだが、トルクは10.2kgmあるので、動力性能的にはロードスターに近く、実にちょうどいい。これくらいが公道で使い切れるパワーの上限といってもいいのかもしれない。
ターボRSと同じエンジンだが専用チューンで0.2kgm向上していて、トランスミッションも1~4速をハイギアードするとともにクロスレシオ化。シフト操作もショートストロークで小気味いい。
居住性もまったく問題ない。さすがに4人乗ったら、ラゲージは超ミニマムになるけど、昔の人はスバル360に家族で乗ってたんだから、大丈夫といえば大丈夫でしょう。
最大の問題は、モテないオーラが強烈だということだ。しかしあなたが中高年なら、いまさらモテることもあり得ないので、その点も問題なかろうて。涙涙涙。
■ルノートゥインゴ・インテンス/車重1010kg
897cc、直3ターボ:90ps/13.8kgm、価格:194万円(6EDC)
車両重要1010kg(インテンス)。そしてRRレイアウト。軽さに関してはこれも最強クラスに属する。ノーズが軽い分空を飛ぶみたいに加速するし、フツーに四つ角曲がるだけで、昔のポルシェ911みたいなリアの張り出し感がある! もうメチャメチャ楽しいッス!
ただし、エンジンは絶対にターボモデルがいい(897cc、直3ターボ、90ps/13.8kgm)。ノンターボのZENは960kgしかないが、パワーとトルクが大きくダウン(998cc、直3、71ps/9.3kgm)するので、さすがにあんまり軽快には感じないのだ。
軽快さってのは、やっぱり軽さとパワーのバランスがもたらすもので、ただ軽いだけだと曲がるのが楽しいだけになって、アクセルレスポンスを楽しめないじゃないですか。
だから個人的にはビートは非力すぎてあんまり楽しいと思いませんでした。S660も同様です。トゥインゴも、ターボモデルが断然軽くて楽しいっす。
一番オススメはフツーの「インテンス」。GTは足回りがぐっとスポーティになって限界が高くなって、それが軽快さを削いでしまっていた。軽さの楽しさってのも、意外と微妙なものなのですね。
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