シートほど長い時間、身体を密着させるパーツはない。特に出来の悪い純正シートに悩まされるオーナーにとっては深刻だろう。それゆえにドライバーにとっては、真剣に向き合う必要がある。ここでは“働く男のシート学”と題して、腰痛に悩むドライバーを通じて、シート専門メーカーの老舗「レカロ」の効果を実践。腰痛予防と疲労軽減を重視したシートを装着し、レカロの哲学と理念を体感してみることにした。
正しい着座姿勢へと促すのが”RECARO”の哲学。
クルマにとってシートは極めて重要なパーツのひとつだ。ドライバーが身体を預ける部分となるだけに、その出来によっては、クルマそのものの評価まで左右してしまうことも少なくない。しかも、これが日々仕事で乗り回すクルマになると話はさらに深刻になってしまう……。
特に商用車などは、いい例だろう。中でもハイエースやプロボックスなど、“働くクルマ”として造られてはいるものの、“働く者”のことはあまり考えられていないのが実情だ。現に、私が親しくしているKカメラマンは、多くの機材を詰めることを理由にサクシード(プロボックスの姉妹車)を購入したが、出来の悪いシートのせいで、元々悩まされていた腰痛が悪化し、移動するのも困難な状態に見舞われてしまった。
メーカーに対して悪くは言いたくないが、働くクルマを造っているのであれば、コストばかり安価にするだけでなく、もう少しドライバーファーストの理念をもって、シートにも配慮してほしいと願うばかりだ。
この悩みを解決するには、当然ながらシートを交換するしかない。しかも、腰痛もちにも対応する出来の良さが条件。となれば、その選択肢は自ずとドイツ・シュトゥットガルトに本拠地を置く「レカロ」となる。
何故なら、レカロはシート専門メーカーの老舗で、人間工学に基づいた設計により、多くのドライバーを魅了し続け、今日に至る存在。最近ではフルバケットシートなどモータースポーツシーンでの活躍や純正装着が目覚ましいが、その一方、アフターパーツとして“エルゴノミクス”シートもラインナップし、本当の意味で日常での使用に適した理想のシートを送り続けている。
その中でも今回は“ERGOMED”シリーズという、腰痛予防と疲労軽減を重視したシートを選択した。これは、レカロの中では最もスタンダードなエルゴノミクスシートで、レカロの哲学でもある“デザインはつねに機能の結果として生じるもの”という、レカロの伝統的なフォルムを継承したモデルだ。
このシリーズには、4つのバリエーションが用意され、今回選んだのは、サクシードにはもっとも適していると思われる「ERGOMED-MV」を装着。理由は、その機能性で、このERGOMED-MVは、ミニバンなど背の高い車両向けにデザインされ、乗降性を考慮してシートクッションは他のモデルよりもフラットな形状にしているのが特徴。サクシード(=プロボックス)の着座位置は、意外にも高いため、このERGOMED-MVが最適だと判断した。
腰痛もちに限らず、レカロが優れている理由は、先にも触れたように人間工学に基づいた設計と理念だが、重要視しているのは“着座姿勢”。自然と腰の位置を固定できるよう収まりを良くし、そこから背骨を“S字”に描くよう促すのがポイントだ。つまり、ほぼ自然に背もたれを立たせる方向に向かわせて、正しい姿勢を生み出すシート形状にデザインされている。もちろん、腰の部分には空圧式のランバー機能が装備され、好みに応じてその高さと膨らみを調整できるため、さまざまな体型や体勢に対応する。
さらに、シート本体もさることながら、レカロが用意するシートレールは高さ調整の範囲が広いのも特徴だ。特にこのサクシードは、マニュアル車。クラッチ操作をスムーズに行うことも考慮し、前後それぞれ微調整を何度か繰り返しながら理想のポジションを決めた。こうして細かくセッティングできることはかなり重要で、少しでも妥協すると正しい姿勢を維持するのは厳しくなるから、レカロの配慮は実にきめ細かいと痛感した。
そして、いよいよ初試乗。オーナーであるKカメラマンによれば、明らかに装着前と装着後では、腰への負担に変化が見られたとのこと。というよりも装着後、1時間ほど乗ってみた結果、腰痛の症状が出ることはなかったと語る。しかも、姿勢が正されることもあり、疲れ方まで違うと実感したという。
今回は、まだ装着したばかりだが、この後、Kカメラマンは撮影のために2000kmにも及ぶ距離を移動しなければならい。この時、本当のレカロの真価を知ることになるだろう。その模様を近々にレポートする予定だ。レカロの優れた機能性は、これだけではないから、それも併せてお伝えする。
問い合わせ/レカロコール 0800-919-5881
RECARO専門店「ASM」
今回、装着にご協力頂いたのは、横浜は新山下にショップを構える「ASM(エーエスエム)」。代表を務める金山新一郎氏は、このASM をはじめる前、セコハン藤沢長後に勤務していたが、その当時、レカロシートと出会い惚れ込んでしまい、レカロに「セコハンは中古品販売の事業ではあるが、どうにかしてレカロを扱いたい」と数度に渡って交渉を重ねた。
その結果、念願叶ってレカロとの取り引きがはじまり、やがて2005年にオートバックスによるプレミアムショップ「ASM」が誕生。金山氏はその開店当時よりASMをレカロ専門ショップとして位置づけ、これまで1万脚以上にもわたり販売および取り付けの実績を積み重ねてきた。
金山氏は、レカロのもつ歴史やぶれない姿勢に惹かれ続け、今ではレカロ・ジャパンにフィードバックすることも少なくないという。特にベースフレームに関しては、レカロ・ジャパンが立ち上がってから劇的に進化しているとあって、様々なオーナーに満足してもらえるようになったと胸を張る。このASMには、常時160脚ものレカロシートを展示し、実際に体感できるのが特徴だ。
特に今回のような、4バリエーションあるERGOMEDシリーズを比較することによって、もっとも最適なシートを探し出すことが可能。バケットシートやスポーツシートなども様々用意されているので、是非とも試して頂きたい。金山氏のようにレカロに惚れ込み、以来、装着し続けているオーナーは多い。
【INFORMATION】
所在地:神奈川県横浜市中区新山下2-4-7
電話:045-629-0905
営業時間:10:00~19:00
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