日産がピュアEVの最上級モデル「アリア」を発表したのは2020年7月のこと。この時点で発売は2021年半ばにまず日本から、というコメントが出た。しかし、コロナ禍や半導体不足という不測の事態も重なり、発表は延びた。ようやく発売され、納車が始まったのが2022年5月。それも「B6」の2WD車のみが発売されたのだ。さらに待つこと約2年。2024年3月にようやく「アリア」の全グレードが発売された。「B6 2WD」に加え「B9 2WD」「B6 e-4ORCE」「B9 e-4ORCE」「B9 e-4ORCEプレミア」が揃った。今回は「B6 FWD」と「B9 e-4ORCEプレミア」を乗り比べてみた。ちなみに「B6」と「B9」の違いは、バッテリー容量の違いで「B6」は66kWh、「B9」は91kWhとなっている。
広くてフラットな室内空間
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今や日産の乗用車シリーズの中では、1BOXの「エルグランド」を除けば、最も大型のクルマが「アリア」だ。最上級の「プレミア」は「B9 e-4ORCE」に先進運転支援システム「プロパイロット2.0」や20インチ専用アルミホイール、255/45R20のタイヤ、本革シートなどが標準で装備されている。
車両本体価格は「B6 2WD」(659万100円)、「B6 4WD」(719万5100円)、「B9 2WD」(738万2100円)、「B9 4WD」(798万7100円)、「B9 4WDプレミア」(860万3100円)となっている。もちろん、この価格から補助金が国や自治体から出ているので、その金額が差し引かれる。
パワーユニットだが「B6」は、電池容量66kWh、最高出力218PS、最大トルク300Nm、「B9 e-4ORCE」は電池容量91kWh、前後のモーターが同じなので出力は218PS+218PS=436PS、トルクは600Nmだが、システム出力は395PS、600Nmになる。「B6 2WD」(FF)車から試乗した。
充電量は98%、可能走行距離は379kmと表示されている。試乗車は総走行距離500km強の新車。ちなみにカタログ上の一充電走行距離はWLTCモードで470kmだ。「アリア」の室内は広い。全長は4.6mを切っているが、全幅は1.85m、全高は約1.7mある。しかも前席はコンソールの張り出しが少なく、床もフラットなので、助手席とのサイドスルーもできる。
後席も着座位置はやや高めで、前方視界も良好。床もフラットで中央席の乗員も足を伸ばせる。スペースも広い。唯一気になるのは、後席ドアウインドウが全開にしても下1/3が残ってしまうことだ。居心地は悪くない。後部の荷室も奥行き、左右幅ともに1m以上ある。床下のサブトランクは、深さ110mm確保されているので実用的だ。200Vケーブルも入るが、これは荷室手前左右に設けられたポケットにも収納できる。床面のボードは荷室の中ほどに立てることができ小さな荷物はボード手前に置け、便利だった。これがe-4ORCEだと、床下部分に駆動モーターなどが搭載されるので、サブトランクはなくなってしまう。
スタートからの動きは軽快、ハンドリングは直進性が強い
センターアームレストに内蔵されているシフトを動かして、Dレンジにシフト。ドライブモードはスポーツ/スタンダード/エコの3モード。スタンダードを選択した。スタートからの動きは軽い。そしてハンドリングは直進性が強い。高速走行での直進性のよさは、安定感があり、気を使わずにロングドライブができる。コーナリングは直進性との戦いだ。FFスポーツらしい感覚だといえるだろう。
スポーツモードに切り替える。重めの操舵力は変わらず、コーナーでの直進性も強い。乗り心地は硬め。ゴツゴツとした動きにカドはないが、硬い。タイヤはブリヂストンの「アレンツァ」235/55R19を履いていた。
動力性能はDレンジ、スタンダードモードで0→100km/hの加速は6秒台後半。1モーター、218PSだが、車両重量が1920kgとシリーズで唯一2000kgを割っている軽さがこの加速性能を可能にしたのだろう。充電は自宅の200V、3kWで行なってみた。14%減ったところで充電してみると、100%まで3時間44分と表示された。このレベルなら日常使いでも不満はない。ちなみに試乗中の電費は6.1~6.5km/kWh。5km/kWh台より上なら、十分好い電費といえるので「B6 2WD」は合格だ。
そして、ようやくデリバリーが始まった「B9」だ。こちらは4WDの「e-4ORCE プレミア」。先進運転支援システムや20インチ専用ホイール、本革シートなど特別な装備を標準設定したモデルだ。パワーユニットは電池容量91.0kWhでカタログでは218PS+218PS=436PS、300Nm+300Nm=600Nmになっているが、システムパワーは395PS、600Nmになる。車両重量はプレミアムで2210kg。同時に試乗した「B6 2WD」より290kgも重い。EVというのはモーター+電池がいかに重いか、ということだ。
しかし、乗り始めて加速計測をしてみると、0→100km/hの加速は5秒台前半。「B6」より1.5秒以上速いのだ。スタートからの電力を消費しているとはいえ、電池容量の大きさの威力はすさまじいものがある。走行距離だが受け取った時は99%充電され、走行可能距離は461km。WLTCCモードでは560kmなので、かなり短くなっている。直前に試乗した状況が走行距離に反映されるので、かなり踏みこんだ試乗をしたのかもしれない。
試乗は「スタンダード」モードでスタート。4WDのドライブモードは「スポーツ」「スタンダード」「エコ」に「スノー」モードが加わっている。走り出して、ちょっと気になったのは低速域での直進性。スタート直後にハンドルが軽くなり、一瞬不安な感じがしたのだ。4WDのビタッとした動きにやや欠けていたのだ。これがシステム的な理由なのかは不明だが、少し気になった。
走り出しからはやや重めの操舵力で、4WDでもやや直進性は強め。「スポーツ」モードに切り替えると重さと硬さは強くなった。タイヤはダンロップの「SPスポーツMAXX」255/45R20を装着していたが、19インチタイヤとの違いは大きくはなかった。
充電は200V、3kWで、73km走行して16%減。83%から100%までの充電時間は5時間4分と表示された。電費は4.1~4.3km/kWh。もう少しの伸びを期待したい。今回の試乗は「B6 2WD」 と「B9 e-4ORCEプレミア」だったが、次は「B9 2WD」と「NISMO e-4ORCE」にも試乗してみたい。
• 関連情報
https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/ariya-details/specifications.html
文/石川真禧照 撮影/萩原文博
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みんなのコメント
次は〇〇に乗りたいって知らんがな。
結局B6がいいってこと?