『DIME』は創刊35周年を迎えます。DIMEが歩んできたこの35年で我々消費者を取り巻く環境、生活、製品、サービスは想像を超える変化を遂げました。そこで、発売中のDIME6月号では、この先の30年はどうなるのか、企業はどんなビジョンを描きビジネスを進めているかという質問を各業界をリードする企業の広報部に直撃取材しました。
誌面ではスペースの都合ですべてご紹介できませんでしたが、@DIMEではすべての回答をご紹介します。
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取材にご協力いただいた各社の広報担当の皆様、誠にありがとうございました!
TOPIC2 クルマの未来
自動運転やEV化、脱炭素、異業種からの参入など100年に一度の大変革の時代と言われて久しい自動車業界。長年世界をリードしてきた日本の自動車メーカーはその中でどんなビジョンを描いているのか。今回、編集部は日本の大手自動車メーカー9社へ取材を依頼し、回答をいただいた3社を紹介します。
本田技研工業
マツダ
三菱自動車工業
Q1:クルマの販売台数、ニーズは今後どう変わっていくと思いますか?
ホンダ
日本市場についてのお話と理解しますが、人口も減少局面を迎えておりますし、世帯数の伸びも期待できない事から、今後も販売台数は緩やかに減少していくと思います。クルマに対するニーズは、大きな傾向では「所有からシェア」という価値観が更に加速していくと思います。
マツダ
今後さまざまなモビリティが登場していくことが予想される中で、台数が増えていくのか、減っていくのか正直わかりません。
お客様のクルマに対するニーズですが、「移動手段」としてのクルマや「趣味」としてのクルマなどに分かれていくのではないかと考えています。また、クルマを介してどんな「体験」ができるかというニーズも高まっていくのではないかと考えています。
三菱自動車
先進国ではシェアリングサービスの浸透や、移動手段の多様化により需要は減少するのではないかと思います。その一方で、人口増加が見込まれ自動車保有率の低い新興国においては、今後も増加していくと思われます。
30年後に向けては、環境対応規制の強化が進み、再生可能エネルギーの活用も増えると思われ、電動車ニーズは更に高まり、V2Xなどクルマが社会を構成するインフラの一部になる可能性もあると思われます。
お客様のニーズは二極化が進むと思われ、運転や個人の趣味を楽しむためにクルマを所有し、自身のライフスタイルを拡張するためのニーズと、運転から解放され自分の時間を楽しむための移動空間にするというニーズがあると思われます。
Q2:リースやサブスクリプション、カーシェアリングなど、クルマの所有スタイルも大きく変化しました。10年後、20年後はクルマをどのように”持つ”のが一般的になっているとお考えでしょうか。
ホンダ
都市部と地方で大きく状況は違うとは思いますが、地方ではクルマは毎日使う足としての役割があるので10年後、20年後も現在の所有という形態が続いて行くと思います。
一方、都市部はサブスクリプションやカーシェアがかなり伸びていくと思います。
その様な時代変化も踏まえ、Hondaは所有する喜びと利用の気軽さを両立したサブスクリプションサービスHonda Monthly Ownerをスタートしております。
また、お客様の多様なニーズに応えられるよう、カーシェアサービスのEvery Goもご用意しておりサービスの充実を図っています。
マツダ
さまざまな所有の仕方、使い方が出てくると思いますが、どのようなかたちが一般的になっているかは予想できません。
三菱自動車
所有スタイルの変化に加え、クルマを持たずにクルマを利用できる選択肢も一般化してきました。将来は自動運転により、移動手段としての幅が広がり、結果クルマを所有しなくても移動の自由が持てるようになると思われます。ただし、将来的にも所有いただく喜びや利便性のため、お客様の状況に合わせた所有も存在し続けると思います。
10年後、20年後は所有や利用の様々な選択肢が存在し、お客様のご志向やライフスタイル等に合わせ選んでいただいている姿が一般的になると考えております。
Q3:SUVブームと言われて久しい昨今ですが、クルマのスタイルとして次に来るのはどのようなクルマでしょうか。
ホンダ
難しい質問ですね。。。当面はSUVブームが継続すると見ています。また今後は自動運転・電動化・コネクティビティ技術の発達により、移動中も駐車中も車内空間で安心に快適な滞在時間を過ごせるような空間価値中心のスタイルのクルマがブームになっていくかもしれません。
マツダ
SUVは既にスタンダードカーとしてお客様から認識を獲得していると考えています。次に来るクルマがどのようなジャンルのクルマか予想はできませんが、SUVはこの後もしばらく人気が続くのではないかと考えています。
三菱自動車
人生を豊かにするSUVスタイルは今後も主流としてしばらく続くと思われます。人とモノを運ぶという基本的なクルマの機能に加え、高い安全性を兼ね備えたSUVは、足元を見てもスタイリッシュ・スポーティなものから、スペーシーなもの、逞しく無骨なものまで多くのスタイルが生まれており、今後もニーズの多様化に合わせた新たなSUVのスタイルが生まれてくると考えています。
Q4:完全自動運転は実現しますか? また実現にはどのような課題があり、実現はいつ頃になると思いますか?
ホンダ
クルマだけの世界であれば、完全自動運転は実現すると思います。2050年頃には実現すると期待したいですね。課題は車車間通信整備による事故回避ができるようになることかと思います。
Hondaもまずは2021年中に、GMのBoltをベースとしたクルーズの試験車両を活用し、日本での共同開発の一環として、国内での技術実証の開始を目指しています。
マツダ
完全自動運転は技術だけではなく、インフラや法整備など多くの課題解決が必要になると認識しています。そういった背景も含めていつ頃実現できるかは予想できません。
三菱自動車
技術的には実現可能と考えており、地域や場所、用途を限定することで早期実現は可能と考えています。当社は日産・ルノーとのアライアンスの中で実現に向け取り組んでおり、具体的な時期については回答を差し控えさせていただきます。
Q5:ベンチャー企業などが「空飛ぶクルマ」を開発していますが、クルマが空を飛ぶ日は来ますか?
ホンダ
その日は来ると思います。将来はそんな世界を期待したいですね。
Hondaは二輪に始まり、四輪・パワープロダクツ・航空機で“移動と暮らしを”をKeyに、一人ひとりが、より自由に移動により自由に暮らす世界を目指して参りました。
その様な考えのもと、Hondaは将来の新価値を創造する新たなモビリティの研究にも着手し、「生活の可能性が拡がる喜び提供」のフィールドを拡げて参りたいと思っております。
マツダ
Q4の回答と同じです。
三菱自動車
コメントは差し控えさせていただきます。
Q6:クルマの進化で交通事故は防げるようになるでしょうか?
ホンダ
なるように期待したいですし、またなると思います。クルマの進化で交通事故を防げるようになることは、今後のクルマの責務であると同時に価値にもなると思います。
Hondaもこの領域に力を入れて行きます。
マツダ
事故ゼロを目指してマツダプロアクティブセーフティというドライバーの「認知・判断・操作」をサポートするという考え方で技術開発を進めています。
三菱自動車
クルマの安全技術の向上より、道路交通事故の削減に寄与すると考えております。当社は、交通事故ゼロのクルマ社会に向けたR&D安全理念を掲げ、安全技術の開発と、交通安全教育・普及の2つの側面から取り組みを進めています。
Q7:政府が掲げる2050年カーボンニュートラルの実現、また菅総理の施政方針演説における2035年までに新車販売で「電動車」を100%にするというビジョンについて、どのようにお考えでしょうか。
ホンダ
かなりチャレンジングな目標だと思いますが、チャレンジし甲斐のあるビジョンだと思います。
マツダ
マツダも2050年時点でのカーボンニュートラル化にチャレンジします。そのためにマルチソリューションで環境負荷低減とお客様のニーズを両立するという方針で技術開発を進めています。2030年にはマツダが生産するクルマは100%電動化する計画です。
※電動化はEV化を意味するものではありません。
三菱自動車
施政方針演説についての具体的なコメントは差し控えさせていただきます。当社は、外部シナリオや当社独自のシミュレーションなどから長期的な展望を検討し、2030年までに電動車比率50%を現在の目標と設定しており、今後もPHEVを中心とした電動化を推進していきます。
Q8:Q7のビジョンは実現するでしょうか、また最大の課題はなんでしょうか。御社として脱炭素社会に向けた取り組みなどがあれば教えてください。
ホンダ
Hondaも2050年のカーボンニュートラルの目標は掲げていますし、実現すると思います。
最大の課題は、バッテリーのコストダウンだと思います。お客様にも価格メリットがあり、メーカー側も事業性が成り立つような形にできるようにしないといけませんね。
Hondaとしては社会の要請に応え、「存在を期待される企業」である為に、電動化を推進していきます。
マツダ
Q7の回答と同じです。
三菱自動車
電動車普及の大きな課題の一つは、最重要部品の電池です。性能面では、エネルギー密度や安全性、寿命の向上、コスト面では、生産性や材料調達の向上、そして二次利用の促進などがあります。脱炭素社会に向けては、電動車や燃費向上技術の開発、生産工程における省エネ機器の導入、オフィスや販売店での再生可能エネルギーの導入など、様々な取り組みを推進しています。
Q9:アップルをはじめ、家電メーカーなど異業種の企業もEVの開発を進めていますが、その動向をどう見ていますか?
ホンダ
正直脅威だと感じています。しかしながら、長年自動車を造り、販売してきたHonda及びHonda販売網には、交通安全に対する思想や、点検、修理を通じてお客様と長期的に関係を築くノウハウについては「一日の長」があると思っています。
マツダ
今後異業種が参入して競争が激しくなってくることは確実なので、「走る歓び」を提供してきたマツダの強みを活かしながら、マツダらしい商品や体験を提供していきたいと考えています。
三菱自動車
当社は電動車の研究を1966年から開始し43年後の2009年に世界初の量産型EV『i-MiEV』を発売しました。そして2013年に世界初のSUVタイプのプラグインハイブリッドEVを投入するなど、クルマメーカーとして新たな価値を追求し続けてまいりました。異業種企業のEV開発については、その業界で培ってきた技術が投入された新しいEVの動向、誕生に注視しております。
Q10:この先クルマメーカーに求められる役割はどう変化していくと思いますか?
ホンダ
持続可能な社会を創るための、カーボンフリーな商品提供など、社会をリードするような役割が更に求められると思います。
その意味では、環境や安全面でより質の高い商品を適正な量で供給し、循環型社会を創っていく役割をより期待されているのかなと思います。
Honda自身は2030年ビジョンのステートメントに、「すべての人に、『生活の可能性が広がる喜び』を提供する」と掲げています。
これをとことん追求して、たくさんの幸せを生み出すことに貢献していきたいですね。
マツダ
まず、大前提として地球環境や事故などの社会課題への対応が益々求められてくると思います。その課題に対応しながら、生活を豊かにするための基盤としてのクルマや、人間の移動欲求や操る楽しさへの欲求に応えるクルマなど、求められる役割はさまざまに変化をしていくと思っています。
マツダは、元気に人間らしく生きるためのツールとして人々から愛されるクルマを作り、求められる役割を果たしていきたいと考えています。
三菱自動車
自動車の役割がハードとしての「クルマ」から交通システム全体としての「モビリティ」に変化してきています。クルマメーカーもそれに伴い、幅広くモビリティの可能性を検討し、誰もが・いつでも・どこへでも自由に移動でき、見たいものをみて、会いたい人に会うことのできる、そのような機会を提供する役割に変化していくと考えています。
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