クルマに盛り込まれた数多くの先端技術。なかにはその後の主流になるものもあれば、アイデア倒れに終わったものもある。今回は、注目すべき先進性を持ちながらも成功できなかった悲運のクルマ&技術を見ていこう。
文/長谷川 敦、写真/ホンダ、スバル、トヨタ、いすゞ
「なんでー!?」姿を消しちゃったけどやっぱりスゴかった!! 先進的すぎた「国産自動車技術」5選
■自動車の歴史は先端技術の歴史
高度なガラス成型技術を駆使してデザインどおりのウィンドウ構成を完成させたスバル アルシオーネSVX(1991年)。このモデルについては後の項で紹介する
自動車は、機械製品であることや市場規模の大きさからその時代の先端技術が投入されることが多い。その昔、ホンダ創業者の本田宗一郎氏はモータースポーツのことを「走る実験室」と呼んでいたが、公道を走るクルマにもそうした側面はある。
とはいえ、安全に関わる技術は充分な検証の後に市販車に採用されるため、実験的な新技術は運転効率を高めるタイプのものが多い。
そして100年を超えるクルマの歴史において数えきれないほどの新技術が投入され、そのなかの少なからぬものが早すぎる投入時期ゆえに定着できず消えていった。
今回スポットを当てるのも、そうした時代の先端をいく技術が投入されたものの、残念ながら商業的な成功を収めることはできなかったクルマたちだ。
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■コンセプトは抜群! しかしやっぱり早すぎたふたつの技術
■世界初のカーナビゲーションシステム「ホンダ2代目アコード/ビガー」
現在のクルマには当たり前のように装着されているカーナビゲーションシステム。ほぼ確実に目的地まで導いてくれるカーナビだが、実用化にこぎつけるまでにはさまざまな紆余曲折があった。
そんなカーナビが初登場したのが1981年。ホンダから「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」として2代目アコードと兄弟車のビガーに装着されたものが世界初の市販型カーナビだった。
このシステムは人工衛星を利用する現在のGPSナビとは異なり、新開発のガスレートジャイロセンサーとタイヤ回転からの距離センサーで方位と移動量を検出し、16ビットCPUで現在位置を計算、表示するというもの。
地図は現在のようなデジタル式ではなく、半透明のフィルムに印刷したシートをブラウン管の画面に被せるスタイル。当然ながら、このシステムでは移動によって自車の位置が変わると地図を差し替えることになる。
エレクトロ・ジャイロケータの発想自体は後のGPSナビにつながるものであったが、地図フィルムの準備や差し替えをしなくてはならず、さらに地図フィルムのない場所では使えないなどの難点があった。
結局、このエレクトロ・ジャイロケータは定着せず、本格的なGPSナビの登場(1990年のユーノス コスモに搭載)まで約10年待つ必要があった。
■自動制御のマニュアルミッション!? 「いすゞ 初代アスカ/2代目ジェミニ」
現在の自動車用オートマチックトランスミッション(AT)は、流体を利用するトルクコンバーター(トルコン)式とベルト駆動のCVT式に大別される。どちらもドライバーのアクセル操作量と車速に応じて自動的に変速(CVTの場合は無段階変速)が行われ、シフト&クラッチ操作は必要ない。
しかし、かつてはマニュアルトランスミッションの機構そのものに自動変速機能を盛り込んだ意欲的なシステムが存在した。それがいすゞのNAVi5だ。
New Advanced Vehicle with Intelligentの頭文字をとってNAVi5と命名されたこのシステムは、従来の5速マニュアルトランスミッションのクラッチ&シフト操作をコンピュータが自動的に行う。
通常の乾式クラッチを使用するため、トルコンやCVTでは避けられない駆動伝達ロスがなく、5段変速による効率的な走りを可能にするこのNAVi5はクルマの未来を担う機構として1984年に登場した。
NAVi5は同年発売の初代アスカと2代目ジェミニに採用されたが、その完成度は高いとはいえず、運転時の変速タイミングに違和感を覚えたり、手動変速モードでの操作にコツが要求されたりなどの弱点もあった。
その後、他社から多段式ATが登場するとNAVi5の優位性も減ってしまい、同システムの採用はアスカ&ジェミニのみに留まった。
現在では、マニュアルトランスミッションと同様の変速方式でもクラッチ操作が不要なモデルも増えている。その思想を40年前に具現化したという点において、NAVi5の挑戦には意味があった。
■驚異の加工技術で時代の先端を走ったクルマたち
スバル アルシオーネSVX。アルシオーネの後継モデルだが、技術的なつながりはほぼなく、海外ではシンプルなSVXの名で販売された。ウィンドウの造形に注目
一般的なクルマのウィンドウはガラスで作られていて、それは窓ガラスのような平板ではない。
多くのクルマが曲面ガラスで構成されたウィンドウを持っているが、ここで紹介する2台のモデルは、その曲面率がとんでもないことになっていて注目を集めた。
■ジウジアーロの力作だったが……「スバル アルシオーネSVX」
最初に登場してもらうのはスバルが1991年に発売したアルシオーネSVX。1986年にデビューしたスポーティクーペの初代アルシオーネを大幅にリニューアルしたこのSVXは、先代とはまったく異なるスタイルで世間を驚かせた。
直線を基調にしたフォルムの先代アルシオーネに対し、イタリアのジウジアーロがデザインを手がけたSVXでは曲面で構成されたボディを持ち、その際たるものがグラスtoグラスのラウンドキャノピーだった。
ガラスがルーフにまで回り込むデザインは斬新で、それゆえにサイドウィンドウの開閉にも特殊な方式が用いられた。
当然ながらこのウィンドウを製造するためには従来の技術では対応できず、日本板硝子が開発した特殊なプレス工法で製造が行われた。
■意欲的なデザインだったものの……「トヨタ セラ」
2台目に紹介するモデルがトヨタのセラ。1990年にリリースされたこの2ドアクーペモデルもまた、アルシオーネSVX同様に3次曲面を多用し、なおかつ面積の大きいウィンドウを有していた。
セラの特徴は上方に開くポップアップ式のバタフライウイングドアにもあり、このドア上部がほぼガラスで構成されるという意欲的なデザインを採用。リアウィンドウも含めてグラッシーキャビンと呼ばれた。
リアのガラスには熱線が装備され、さらにアンテナなども取り付けられるため複雑な加工が要求されたが、ウィンドウの製造を担当した旭硝子がこれに応え、見事にウィンドウを完成させた。
ほぼ同時期に発売されたアルシオーネSVXとセラは、この時代のバブル景気を象徴する存在ともいえたが、残念ながらバブルはやがて弾けてしまい、どちらのモデルも後継機種を残すことなくその歴史を終えている。
■すべて機械で制御された4WSシステム「ホンダ3代目プレリュード」
前輪の操舵に応じて後輪を同方向、または逆方向に操舵して、コーナリング性能を高めたり旋回半径を小さくしたりするシステムが4WS(4輪操舵)。
現在の4WSでは後輪の操舵方向や操舵量をコンピュータで制御するのが一般的だが、これをすべて機械的に行うモデルも存在していた。それがホンダの3代目プレリュードだ。
4WSシステム自体は3代目プレリュード以前からあったが、量産車への採用はほとんどなく、作業車などの特殊車両に用いられていた。だが、プレリュードが4WSを装備したことで、この技術にも注目が集まるようになった。
そして3代目プレリュードの4WSは、機械式制御であったこともポイントのひとつ。このシステムでは、ステアリングの操作角度に対応して、前輪と同方向から逆方向まで後輪の舵角方向と切れ角を連続的に変化させる。
機械式にもかかわらず、車速とハンドル操作量に応じて後輪を最適に操舵する舵角応動型4WSシステムの採用は量産車世界初だった。プレリュードの4WSでは、前輪舵角が小さい時は後輪が前輪と同じ向きに転舵する同位相、前輪の操舵量が多くなると後輪は逆位相方向に動いた。
機械式4WSの利点はシンプルなことによるトラブルの少なさだが、緻密な制御という点においては電子式に分がある。それもあって4代目プレリュードでは4WSの制御が機械式から電子式に変更されている。
今回紹介した技術は、そのどれもが直接花開くものではなかったが、思想やノウハウが後の時代に与えた影響は大きく、クルマの歴史において重要な価値があるのは間違いない。
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みんなのコメント
プレリュードと同じプロペラシャフトで後輪の操舵するという仕掛けは
確か5代目(エディー・マーフィの)セリカもやったかと思います。
(次の丸目4灯の6代目もそうだったかな?)
しかし4輪操舵というのは、特に狭い場所での車庫入れなど慣れないと
自分の意図した通りにクルマが入れない…下手するとリヤフェンダー
あたりをこすってしまうということがあったりするので、場合によっては
不便な機能であったのかもしれません。
私がかつてユーノスの客だったころ、同じ店舗にマツダ店(後のアンフィニ店)
が併設されており、そこでセンティア(同MS-9)という3ナンバーの大型サルーンが
販売されていました。
これも件の4輪操舵で、セールスマンが店のリフトに本車を載せる時、
この機能のおかげで相当難儀していたのを見かけたことがありました。
センティアはまた車幅もデカかったですから…
俺みたいな古い人間には、昔はそうだった懐かしいとか思えるけど、知らない人にとっては、そんな不便なもの性能の劣ったものを言われても「は?」だよな。