マクラーレンの量販プラグイン・ハイブリッドカー、新型「アルトゥーラ」。GQ JAPANライフスタイル・エディターのイナガキが、ちょこっとだけ乗ってみた感想を綴る。
0~100km/h、2.9秒!
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新型アルトゥーラにスーパーカーの新世界を見た。実車に乗り込み、ほんの数百mしか走っていないが、断言していい。走りはもちろん、内外装も新世界の基準が感じられる。
新型アルトゥーラを知らない向きに説明すると、2021年に登場したプラグイン・ハイブリッドのスーパーカー。エンジンは新設計の「M630」3.0リッターV型6気筒ガソリンツインターボ・エンジンで、これにモーターを組み合わせる。システム最高出力は680ps、最大トルクは720Nmを発揮。トランスミッションは8DCTだ。
プラグイン・ハイブリッドゆえに電動走行も可能で、満充電時はバッテリーのみで30kmほど走行できる。モーターのみの最高スピードは130km/hに設定。日常使いは電動でカバー出来るだけの実力を有する。
日本ではデリバリーが始まったばかりで、メディア向けの試乗機会もほぼない。今回、特別にマクラーレン・オートモーティブが主催した「マクラーレン・トラックデイ・ジャパン2022」(2022年11月3日)でステアリング・ホイールを握る機会を得た。
試乗会場は富士スピードウェイ。が、レーシングコースではなく、駐車場「P7」。本格的なコースや公道走行は叶わなかった。それでも、限られた駐車場内を走らせるだけでも新型アルトゥーラの実力を実感出来た。
マクラーレンのほかのモデルとおなじく、ディヘドラルドドアを開け、室内に乗り込むとシンプルな造型が目に飛び込む。ただし、クオリティと使い勝手は大幅に高まっていた。たとえば電動調整式のステアリング・ホイールやシートの動きは明らかに滑らかになったし、インフォテインメント・システムはApple CarPlayおよびAndroid Autoに対応。これまでマクラーレンの純正ナビゲーションの使い勝手はあまり良くなかっただけに、ユーザーにとっては朗報だ。
実際、インフォテインメント・システムは操作性が向上し、各種機能にもアクセスしやすくなった。そのほかのスイッチ類も扱いやすい。
インテリアの進化同様、走りの進化も目を見張るばかりだった。まずは乗り心地の良さだ。
整備された駐車場の敷地内ゆえ、評価はあくまで限定的と前置きしたい。その上で現行の「GT」よりしなやかに感じた。どうやらフロントカメラなどで得た情報をもとに減衰力を制御する「プロアクティブ・ダンピング・コントロール」を搭載した効果のようだ。不快な突き上げは皆無。パイロンによって作られた“擬似コーナー”でも、ロールはよく抑えられており、まさに“オン・ザ・レール”感覚を楽しめた。
しなやかな足まわりとはいえ、モーターの大トルクはしっかり受け止める。だから、アクセルを踏み込んでもボディに無駄な動きはない。それでいて速度は瞬時に上昇する。0~100km/hの加速タイムが2.9秒の実力はハンパない。駐車場のなかでは100の実力のうち1も引き出せなかったが、アクセルペダルの踏みしろの先にポテンシャルを感じざるを得なかった。
新型アルトゥーラでもうひとつ驚いたのがオーディオシステム。Bowers & Wilkinsが手がけたもので、同ブランドはマクラーレンとパートナーシップを結んでいる。双方が協業でオーディオシステムを手がけているので、車種ごとに最適化を実現。新型アルトゥーラではプラグインハイブリッドの特性にあわせてチューニングが施されたという。
実際、モーター走行時に音量を高めると車内はまるでコンサートホールにいるかのような迫力あるサウンドを楽しめた。車外からのロードノイズなどは丁寧に処理されており、無駄な雑音は皆無。メルセデス・ベンツ「Sクラス」やBMW「7シリーズ」といった高級大型セダン並みの音質だった。
乗り心地の良い新型アルトゥーラに乗って好みの音楽を堪能していると、「これは本当にスーパーカーなのか?」と、不思議に思えてきた。個人的には長距離ドライブに適したGTカーの要素を強く感じた。
マクラーレンにはミドシップレイアウトながらゴルフバッグを積めるGTをラインナップする。車名からわかるように、マクラーレンとしてはこちらをGTカーとして据えているはずだ。
にもかかわらず、新型アルトゥーラにもGTカーとしての顔を持たせたのが面白い。価格も近しいから(アルトゥーラ:2965万円、GT:2695万円)購入時は悩みそうだ。
文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)
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