もくじ
どんなクルマ?
ー 3代目アルファード/2代目ヴェルファイア マイチェン
ー 第2世代トヨタ・セーフティ・センスとは?
どんな感じ?
ー ヴェルファイアの内装が……シビレる
ー V6の走りは? LTAの作動は?
「買い」か?
ー アルファードHV車も試す
ー 社長のクルマになったアル/ヴェル
スペック
ー ヴェルファイア・エグゼクティブ・ラウンジZ(V6)のスペック
ー アルファード・エグゼクティブ・ラウンジ(HV)のスペック
どんなクルマ?
3代目アルファード/2代目ヴェルファイア マイチェン
2015年早々に登場した3代目アルファード/ヴェルファイア・ブラザーズの、3年目のマイナーチェンジ・モデル。これを3.5代目と呼ぶべきか、それとも3代目後期型と表現するのが適当か、どっちでもええやん、というべきか。
3代目Jソウル・ブラザーズ、じゃなくてアル/ヴェル・ブラザーズが登場したとき、「新しい高級車の概念を創造することを目指し、『大空間高級サルーン』をキーワードとして開発」されたと発表された。その目論見は大成功。発売1カ月後の受注台数はアルファードが約2万台、ヴェルファイアは約2万2000台にも達した。月販目標は前者が3000台、後者が4000台に過ぎなかった。営業は少なめに見積もるのがつねとはいえ、びっくらぽんの数字だ。かつて日産エルグランドが開拓した国産高級ミニバン市場を3代目はガバチョと大きく広げ、しかもその市場の75%を占めるに至った。
3.5代目は335万4480円から750万8160円までという、「いつかはクラウン」さえうっちゃる価格である。クラウンの一番高いモデルは618万3000円に過ぎない。そんな高級車が昨年12月25日の発表からおよそ1カ月でアル1万4000台、ヴェル1万1000台受注している。あわせて2万5000台!! プリウスとアクアを足したぐらい売れている。
マイナーチェンジにあたっての方針は「基本価値の向上」といたって真っ当だ。すでにアル/ヴェルを持っている「ロイヤル・ユーザー」へのアピールも当然考えている。目立つのはアルファードのフロント・マスクがやや立体的になったことだ。メッキの量をやや減らしてもいる。なんとなく「トランスフォーマー」の善玉のオプティマスプライムを思わせる。リアはガーニッシュを拡大して腰高感を薄めた。
第2世代トヨタ・セーフティ・センスとは?
ヴァルファイアは上下2段構造を強調し、特に「エアロタイプ」は「ダンベル形状」と表現される下側のグリルが大きくなった。こちらは「トランスフォーマー」の悪役のメガトロンに似ている、かどうかは別にして、なんとなく悪役っぽい面構えなのはこれまで通りである。
機械的には、3.5ℓV6エンジンの主要部品を一新、トヨタとして国内初の8速ATと組み合わせたのが目玉だ。これは海外で販売されている現行カムリ用のV6+ATを移植したわけである。エンジンは従来型の最高出力280ps/6200rpm、最大トルク35.1kg-m/4700rpmからそれぞれ301ps/6600rpmと36.8kg-m/4600-4700rpmへと大きく向上。ギアボックスの多段化により、効率がアップし、動力性能が上がると同時に燃費は14%アップしている。
乗り心地とハンドリングを改善するため、開口部まわりの接着剤を増やしてボディ剛性を上げ、足回りはダンパーの動きを調整することで若干硬くしている。アル/ヴェルを足として使うトヨタの役員からの要望であったそうな。ここだけの話。
メーカー的に訴えたいのは、最新の予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」が全車に標準装備されたことだろう。単眼カメラとミリ波レーダーの性能向上により、自転車の運転者や夜間の歩行者も検知可能な「プリクラッシュセーフティ」、レーダークルーズコントロール作動時に車線維持をするためにステアリング操作の一部を支援してくれる「レーントレーシングアシスト(LTA)」を搭載する。微妙な表現だけれど、LTAはもちろん、「やっちゃえ日産」、つまり自動運転方向のシステムということになる。
どんな感じ?
ヴェルファイアの内装が……シビレる
試乗したのは、新しい3.5ℓ V6+8ATに、ホワイトの本革シートを得たエアロ仕様のヴェルファイア・エグゼクティブ・ラウンジZ(7乗り)、車両価格718万3080円である。場所は横浜みなとみらい地区の一般道と首都高速で、ごく短時間ということをお断りしておかなければならない。
それにしても、エアロ専用の真っ白内装は雪国というより、夜の帝王という雰囲気である。2列目のシートをセパレートにした最上級グレードの「エグゼクティブ・ラウンジ」は当初全体の3%程度を見込んでいた。いざ売り出してみたら10%程度を占めるという想定以上の人気だった。これを受けて、さらに幅広いVIPニーズに応えるべく、エアロ仕様専用として新設された。
防汚処理加工を施したホワイト色のプレミアムナッパ本革シートとシルバー木目調の専用加飾(パネル)なのだ。じつにヤンキー好みというべきでしょうか。「先進的でモダンな室内空間を演出」とリリースにはあるけれど、このようなある種のアウトロー文化こそ、世界中で求められているものなのかもしれない。
V6の走りは? LTAの作動は?
新しいV6はトルクが増え、さらに多段化のおかげで、2150kgもの重量にかかわらず、苦もなく動き始める。100km/h巡航は1500rpmという低回転ぶりで、ミニバンとしてはいたって静かだ。3列目シートから運転席に話しかける声は、運転席ではよく聞こえる。運転手の声が3列目まで届きにくいのは、声の方向から致し方ないかもしれない。後ろを振り向いてしゃべるのもなんだし。
乗り心地は前述のごとく、やや硬くなった。筆者が個人的にたまに乗る機会のある4気筒のマイナーチェンジ前モデルと比較すると、明らかにフラット感が増している。
乗り心地とハンドリングの改善は、LTA作動時に自動的にステアリングを切った際、ボディをスムーズに動かすためでもある。実際、LTAは「ステアリング操作の一部を支援する」だけで、クルマを自動的に自在に曲げることはしない。白線を感知するとちょこっとだけ動く。たとえば45度ぐらい曲がっていると、ボディが曲がり切らず、手アンダーになる。つまり操舵の量が足りず、切るタイミングは遅すぎ、という感じでまっすぐ行こうとする。LTAはあくまでレーンをトレースするためのアシストでしかない。
とはいえ、この巨体が白線に従いながら曲がる様はなかなか興味深い。自動運転ってヤツはハラハラ、ちゃんと曲がるのか心配で緊張する。ゆるやかなカーブだったら、ちゃんと曲がる。全自動運転時代は確実に近づいている。
「買い」か?
アルファードHV車も試す
このあと、アルファードのハイブリッドのエグゼクティブ・ラウンジに試乗した。こちらはエアロではないため、同じエグゼクティブ・ラウンジでも純白の内装ではなくて、木目調パネルにベージュの内装で、保守派には落ち着く。
ハイブリッドはモーター駆動の4WDで、例によって重たい電池をリアに搭載している。車重は2240kg もある。
重い車重に合わせ、ダンパーはちょっぴり硬くなっている。トルキーな2.5ℓ直4とモーターのコンビネーションにより、V6並みによく走る。ただし、直4は上まで回すと、ややうるさい。街中での動力性能ではV6と遜色ないものの、滑らかさと静かさ、高級感でV6に一日の長がある。
社長のクルマになったアル/ヴェル
アルファード/ヴェルファイア・ブラザーズは3代目にしてニッポンの社長さんのクルマとして定着しつつあるという。中国、東南アジアでは100%ショーファー・ドリブンで使われている。
あなたがアジアの社長さんなら「買い」である。プリウスゆかりのFFのプラットフォームで、全長5m近い大型ミニバンを日本の法定速度内でならほとんど不満なく走らせることができるのだ。これこそ開発陣の苦労の賜物だろう。とはいえ、オートカー読者諸兄はおそらく西洋かぶれの飛ばし屋でありましょうから、そういう西洋かぶれにとってミニバンなどアウト・オブ・眼中でありましょう。心の広いひとには新鮮に思えるかも……だけれど、根っから走り屋は、マイチェン前よりよくなったとはいえ、この手は買ったらアカン。
ヴェルファイア・エグゼクティブ・ラウンジZ(V6)のスペック
■価格 718万3080円
■全長×全幅×全高 4935×1850×1935mm
■最高速度 –
■0-100km/h加速 –
■燃費 10.6km/ℓ
■CO2排出量 219g/km
■車両重量 2150kg
■パワートレイン V型6気筒3456cc
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 301ps/6600rpm
■最大トルク 36.8kg-m/4600-4700rpm
■ギアボックス 8速オートマティック
アルファード・エグゼクティブ・ラウンジ(HV)のスペック
■価格 735万8040円
■全長×全幅×全高 4945×1850×1950mm
■最高速度 –
■0-100km/h加速 –
■燃費 18.4km/ℓ
■CO2排出量 126g/km
■車両重量 2240kg
■パワートレイン 直列4気筒2493cc
■使用燃料 ガソリン+電気
■エンジン最高出力 152ps/5700rpm
■エンジン最大トルク 21.0kg-m/4400-4800rpm
■モーター最高出力 143ps(前)/68ps(後)
■モーター最大トルク 27.5kg-m(前)/14.2kg-m(後)
■システム最高出力 197ps
■ギアボックス 電気式無段変速機
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