開発者インタビューも敢行!
スズキ新型「アドレス125」登場! アドレスV100から31年の歴史を継承しつつ丸みのあるデザインへ
スズキは、都内で新型の原付二種スクーター「アドレス125」および「アヴェニス125」のプレス向け発表会を行った。試乗はかなわなかったが実車に触れることができ、短時間ながら開発者にインタビューもできたのでお届けしたい。
アドレス125のフロントフェンダーとフロントサイドパネルはスチール鋼板!
スズキはアドレス125/アヴェニス125を国内市場向けに発売、都内でプレス向け発表会を開催した。今回はまだ試乗はかなわなかったが、実車に触れて跨って、開発者インタビューも行うことができたのでその模様をレポートしたい。
まずアドレス125の実車を目の前にして感じたのは、レトロ調のデザインで気負わず快適に普段使いができそうだな、ということだった。
実際に並べて比べることはできなかったが、スペックで比較すると従来型のアドレス125よりもわずかにコンパクト。シート高のみ770mmと少し高めだが、従来型の[フラットシート仕様]と10mmの違いであり、軽量な105kgの車体もあいまって不安はなさそうだ。
驚いたのはフロントフェンダーおよびフロントパネルのサイド側が鋼板製だったこと。スチールの上に塗装を施したゆえの質感は好ましく、従来の通勤快速的な位置づけのほかにネオクラシックスタイルのスクーターとしても人気が出そうな雰囲気だ。じつはこの鋼板、生産拠点のインドにおけるカオスな交通ではぶつけ合うようなこともあるため、簡単に叩いて直せる鉄製が好まれる……という冗談のような理由もあるのだとか。
―― フロントフェンダーはスチール鋼板。叩くとカンカンという小気味いい音がする。
―― 写真のヘッドライトはハイビームも点灯している状態。下のポジションライトの脇にあるパネルが鋼板製となっている。
ヘッドライトはLEDで明るく、導光タイプのポジションライトが現代的な雰囲気。メーターはアナログで、燃費のいい運転をするとブルーからグリーンへと変化する「エコドライブイルミネーション」を搭載する。
―― 【身長170cm】跨ってみると、フラットで肉厚なシートが好感触。フロアボードはフラットタイプで跨りやすい。足着きは母指球にしっかり体重が載る。手と足の位置は自然で、大柄なライダーが跨るとハンドルはわずかに手前に感じられるようだが、小柄な方でも扱いやすそうだ。大型のグラブバーは握りやすく、取り回しもしやすい。サイドスタンドとセンタースタンドを標準装備。
―― 低くフラットなフロアボード。足元に安全に買い物袋などが置けるようフックも備え付けてある。タンデムステップはラバー付きだ。 [写真タップで拡大]
シート下スペースは小さめのヘルメットが収納可能だが、フルフェイスは基本的に難しそう。アライヘルメットのジェットタイプ・SZ-RAM4も収まらなかった。これは低くフラットなフロアボードを実現するために、燃料タンクをシート後端に持っていくなどしたスペースのせめぎ合いの結果ではあるが、従来型とてフルフェイスタイプは収納不可だったことを考えれば特に目くじらを立てるようなものではないだろう。ヘルメットホルダーは左右に1個ずつ装備される。
燃料タンクキャップはシートの後ろにあり、シートを開閉することなく給油できるタイプ。これについては公式発表時に賛否もあったようだが、じっさい大きめのリヤキャリアやボックスを取り付けた際に少し邪魔に感じるかもしれない。シートの開閉を煩わしいと感じる向きには歓迎されそうだ。
―― 視認性のいいシンプルなメーター。エコドライブを検知すると青いイルミネーションが緑に変化する。
―― 燃料タンクキャップはシートとテールランプの間に。
―― 純正アクセサリーのリヤキャリア(1万3200円)とトップケース27L(1万3200円)。ケースの取り付けには標準装備のグラブバーを取り外してリヤキャリアを装着する必要がなる。リヤキャリアは2022年12月下旬発売予定だ。 [写真タップで拡大]
―― シート下トランクスペースは容量21.8L。大きめのヘルメットは収まらないが、ヘルメットホルダーは左右1個ずつ装備している。 [写真タップで拡大]
ベースを共有しながら細部はけっこう違うアヴェニス125
エンジンとフレームの基本部分を共有するアヴェニス125も同時に発表された。こちらはスポーティなルックスに仕立てられており、フェンダーやフロントパネルは樹脂製だ。フレームはシートレール周辺の形状が異なるほか、エンジンはECUセッティングで加速感を演出。マフラーはカバーが異なるだけで本題はアドレス125と共通だという。
車重はアドレス125の105kgに対し107kgとわずかに重いが、ヘッドライトユニットがフロントパネルに収まっている(アドレス125はハンドルと一体化)ためか、少なくとも取り回しにおけるハンドルの切れはこちらのほうが軽快に思えた。
―― こちらもヘッドライトはLEDで、導光タイプのポジションライトとともにフロントパネルの中央に配置される。縦目2灯のスポーティなデザインがポイントだ。写真は左がロービームで右がハイビーム。 [写真タップで拡大]
アヴェニス125のメーターはLCDデジタルになっており、電源オンで「GO」の文字が表示される。表示項目自体はオド/トリップに燃料残量、電圧などだが、電圧表示はボタンで切り替える必要があったアドレス125に対しアヴェニス125は常時表示されているなどの違いがある。
―― 【身長170cm】跨りでは、段付きのスポーティなタイプでシート高780mmと、アドレス125よりも10mm高い設定なのだが、スリムな形状からか足着きに大きな違いはなし。着座位置はアドレス125よりもスポーティさを感じる前寄りで、後席はややタイトな設定だ。グラブバーはしっかり役目を果たしてくれそうだが、アドレス125ほどの大きさはない。サイドスタンドとセンタースタンドはこちらも標準装備。
―― シート下トランクスペースの容量は21.5Lで、感覚的にはアドレス125とほぼ同じ。アライのSZ-RAM4は同じく収まらなかった。こちらも同じくヘルメットホルダーが2か所に付く。 [写真タップで拡大]
―― 燃料タンクキャップはヒンジタイプで、オープン時に置き場所に悩む必要はない。キャップまわりの形状の違いからか、燃料タンク容量はアドレス125よりも0.2L大きい5.2Lだ。
―― エンジンスターターはセル&キック併用式。セルが苦しくなっても燃料ポンプが動く電圧が残っていればキックで始動可能とのこと。
―― こちらもフロアボードはフラットタイプ。タンデムステップはスポーティな金属の無垢だ。 [写真タップで拡大]
なお、こちらもトップケース27L(1万3200円)およびトップケースキャリア(1万3200円)が純正アクセサリーとしてラインナップされる(写真はなし)。
【開発者に聞く】デザインは大きく変わったが、快適性と利便性はしっかり造り込んだ
発表会では、アドレス125が使用環境の厳しいインドでセールストップ(インド名はアクセス125)に輝いていること、それをグローバル化したことなどが語られた。フレームは従来比-1.5を達成、コンバインドブレーキは前φ190mmディスク/後φ120mmドラムを採用(2車で構造は異なるが得られるメリットは同じ)だそうだ。
―― アドレス125/アヴェニス125の開発者
また、短時間ではあるが開発者にインタビューすることができたのでお伝えしたい。お話をしてくださったのは、チーフエンジニア・森井秀史さん、デザイングループ・斉藤航平さん、エンジン実験グループ・杉 芳典さん、プラットフォーム設計グループ・松下太亮さんだ。
そうです。ベースはアドレス125(インド名はアクセス125)ですが、これをクラシックコミューターのスタイルにしたうえで多様化し、グローバルに展開することにしました。ベーシックなアドレス125、スポーティなアヴェニス125、ラグジュアリーなバーグマンストリート125EXという位置づけです。
──アドレス125は従来モデルからずいぶん形が変わりました。
アドレスという名称は長くスズキの中で継承してきたモデル名ですので、それは残したかったんです。でも、デザインは位置づけを変えて流行に左右されないシンプルさを追求しましたが、快適なスクーターというコンセプトは現行モデルと変えていません
快適性と利便性は現行モデルと同等にしていますし、エンジンは空冷の従来型を熟成することで、新排出ガス規制に適合しながらも出力には妥協せず、最高速度はわずかに及ばないものの燃費を改善しながら低中速トルクはきっちり追求しています。空冷のいいところは、軽量コンパクトな点。細かいところを少しずつブラッシュアップすれば空冷のままでもいけると判断しました。
──従来は通勤快速というイメージで捉えられてきましたが、それが少し変化したような?
2017年モデルのアドレス125から、通勤快速ではなく“通勤快適”という言葉を用いてコンセプトを表現しています。そうした意味では前モデルから変わっていません。若いユーザーの嗜好が快速よりも快適に変わってきたこともあると思います。そのコンセプトはそのままに、グローバルで大切な“多くのお客様に好かれるデザイン”、“嫌われないデザイン”を与えました。
──嫌われないデザインというのは、ユーザーだけでなく取り巻く環境からも目を付けられないように、ということでしょうか?
はい。エモいとかレトロとかのほうが目を付けられにくいんです。
──自然に街に溶け込めるっていうことですね。生産国のインドではどのように受け止められているのでしょうか?
インドでは今回のアドレス125のようなデザインが普通のものとして受け止められます。また、アヴェニス125のようなスポーティなデザインも一般に受け入れられるようになってきていますね。そうしたグローバルな嗜好に合わせたのがこれら2車ということになります。
──日本だとアヴェニス125のほうがスタンダードなデザインと受け止められるかもしれませんね。
そうですね。ちなみにアドレス125は男性からも女性からも愛されるように、細部にも、たとえば跨った時に角が当たらないようにとか、曲面の構成には気を遣いました。特別に新しい技術を盛り込んだわけではないのですが、成熟したスクーターになったと自負しています。
──グローバルだと、各仕向け地によってさまざまな要望があると思います。まとめるのは大変だったのでは?
A.S.E.A.N.では低いシートが好まれる等ありますが、さまざまな国に車両を持ち込んでテストすると、我々の先入観からすると意外なほどアッサリと受け入れてもらえた印象です。デザインに関しても、男性女性ともに抵抗なく。もちろん、車両としてはアジアにありがちなスピードブレーカー(カマボコ状の段差でブレーキをかけさせる道路上の設置物)をトラブルなく乗り越えられるようにとか、冠水してしまっても簡単には壊れないようにバッテリーを上の方に搭載するといったノウハウは注入しています。
──整備性についても発表会では言及がありました。マフラーを外すことなくリヤタイヤが交換できるとか。
整備性はどの国でも求められます。これは日本だからとか海外だからといった基準の違いはありません。先ほどの”冠水してもショートしにくい”バッテリー位置については、整備性も考慮した結果です。
──給油口の位置については一部で気にする声もありましたが。
グローバルでは新型の給油口の位置にしてくれという要望が多かったんです。海外では跨ったまま給油する(してもらう)スタイルのところもあり、そうした国ではいちいちシートを開けなければならない構造は嫌われる傾向なんです。
──グローバル機種らしいエピソードですね。(といったところで残念ながら時間切れ)
時間の都合でやや尻切れトンボになってしまったが、スズキが愛情をもって育んできたアドレス125は中身のコンセプトを変えることなく熟成され、スポーティ版のアヴェニス125も同様に快適性と使い勝手に期待できそうだ。
おまけ:気になるのはバーグマンストリート125EXも日本に導入されるのかということだが、そこは教えてもらえなかった。ただし含みはありそうな雰囲気だったので、芽がないわけではなさそう。続報をお届けできるよう、情報収集していきたい。
SUZUKI ADDRESS 125[2023 model]
主要諸元■全長1825 全幅690 全高1160 軸距1265 最低地上高160 シート高770(各mm) 車重105kg(装備)■空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 124cc 8.7ps/6750rpm 1.0kg-m/5500rpm 無段変速 燃料タンク容量5L■タイヤサイズF=90/90-12 R=90/100-10 ●価格:27万3900円 ●色:青、赤、白、黒 ●発売日:2022年10月18日
―― SUZUKI ADDRESS 125[2023 model]ダークグリーニッシュブルーメタリック
―― SUZUKI ADDRESS 125[2023 model]ダークグリーニッシュブルーメタリック
―― SUZUKI ADDRESS 125[2023 model]パールミラージュホワイト
―― SUZUKI ADDRESS 125[2023 model]マットブラックメタリックNo.2
SUZUKI AVENIS 125[2023 model]
主要諸元■全長1895 全幅710 全高1175 軸距1265 最低地上高160 シート高780(各mm) 車重107kg(装備)■空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 124cc 8.7ps/6750rpm 1.0kg-m/5500rpm 無段変速 燃料タンク容量5.2L■タイヤサイズF=90/90-12 R=90/100-10 ●価格:28万4900円 ●色:白、灰、黒 ●発売日:2022年10月21日
―― SUZUKI AVENIS 125[2023 model]パールミラージュホワイト/マットフィブロイングレーメタリック
―― SUZUKI AVENIS 125[2023 model]マットフィブロイングレーメタリック/ラッシュグリーンメタリック
―― SUZUKI AVENIS 125[2023 model]グラススパークルブラック/マットブラックメタリックNo.2 [写真タップで拡大]
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