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『ニッサンR90CK(1990年)』驚速披露でル・マンのポールを獲得も逸勝したもうひとつの“R90”【忘れがたき銘車たち】

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『ニッサンR90CK(1990年)』驚速披露でル・マンのポールを獲得も逸勝したもうひとつの“R90”【忘れがたき銘車たち】

 モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは1990年のル・マン24時間レースを戦った『ニッサンR90CK』です。

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 1990年、ニスモは1989年よりタッグを組んでいたローラのモノコックをベースとしながらも、ボディカウルなど多くの部品をニッサン内製へと切り替えた独自のグループCカー『R90CP』を仕立てた。そして、この『R90CP』の誕生を皮切りにニッサンは国内選手権を席巻していくようになっていった。

 その一方で同じ1990年。同じニッサンながら欧州を中心に転戦する世界スポーツプロトタイプカー選手権(WSPC)を戦うニッサン・モータースポーツ・ヨーロッパ(NME)やアメリカのニッサン・パフォーマンス・テクノロジーInc(NPTI)はローラのオリジナルを活かし、NMEが改良したマシンでル・マン24時間レースなどを戦った。そのマシンが今回紹介する『R90CK』である。

 『R90CK』は3.5リッターV8ターボエンジンのVRH35Zを搭載するなど、基本的な構成は『R90CP』と同様な部分もあったがサスペンションに加えて、特にボディカウルが『R90CP』とは異なっていた。

 『R90CP』はリヤウイングがカウル一体型の作りとなっていたが、『R90CK』では独立式のリヤウイングを備えていたほか、フロントカウルについても『R90CP』とは異なるデザインを採用していた。そんな『R90CK』は1990年のWSPC第2戦モンツァでデビューを果たすと、6月のル・マンにおいて早速驚くべき速さを見せつける。

 1990年のル・マンにはNME組2台、NPTI組2台という計4台の『R90CK』が送りこまれたのだが(この4台の『R90CK』にニスモの『R90CP』、サテライトチームの2台を合わせて計7台のニッサン車が1990年のル・マンには挑んだ)、そのうちNMEの24号車がマーク・ブランデルのアタックで、2位のポルシェ962Cに実に6秒以上もの大差をつける3分27秒020というタイムをマークしてポールポジションを獲得。

 さらにNPTIの83号車が4位、NMEの25号車が5位と予選トップ5に3台の『R90CK』が入る高いパフォーマンスを披露したのだ(予選3位はニスモの『R90CP』だったため、トップ5に4台のニッサン車が入った)。

 この24号車のポール獲得劇は1基だけ用意された予選用スペシャルエンジンを使用したことによって達成されたものだったのだが、これがポール争いをしないという陣営内の事前の申し合わせを破るもので、ニッサン陣営内で内部分裂が発生。結果、これが決勝で勝利を逃す原因のひとつとなってしまう。

 迎えた決勝レース。フォーメーションラップで25号車がトラブルにより戦列を離れてしまったものの、レースがスタートするとまずポールの24号車が首位を争い、スタートから4時間が経過するころにはトップにつけていた。しかし、トヨタとの接触とその後のタイヤパンクで上位争いから脱落し、最終的にはトラブルで深夜にリタイヤとなってしまった。

 しかしニッサン勢はそれだけでは倒れず。その後、NPTIの83号車がトップ争いへと加わった。しかし、83号車はジャガー勢と首位を争っている最中、ゴム製の燃料タンクが損傷するトラブルで緊急ピットイン。この燃料タンクについては事前に損傷が予期されていて、その対策をNMEは行っていたが、その情報共有がNMEとNPTIとの間でされておらず、結局83号車は長時間のピット作業ののち、リタイアを決定した。ニッサン陣営内での連携がとれていれば防げた可能性も大きい、悔やまれる結果だった。

 こうして優勝を狙える位置につけていながらも連携不足などによってその可能性のあるマシンたちが次々と戦列を去り、最終的にニッサン勢の最上位はトラブルを抱えながらも24時間を走り抜いた長谷見昌弘、星野一義、鈴木利男という日本人トリオがドライブした『R90CP』の5位だった。

 翌1991年は湾岸戦争の影響などを表向きの理由としてニッサンはル・マン参戦を断念したため、1990年という最大のチャンスを逃し、ニッサンはル・マンの舞台から一時姿を消すことになったのだった。

 1990年のル・マン以後、この“CK”はWSPCや翌1991年のデイトナ24時間などで活躍をすることになるのだが、日本でもノバエンジニアリングというプライベーターにより、新たな活路を見出すことになる。このノバエンジニアリングが高めた『R90CK』のストーリーはまた別途、お伝えしよう。

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