大径ターボで320psと44.1kg-mを獲得
優れたチームワークは、期待以上の成果を残すことがある。自動車業界を振り返れば、アウディRS2 アバントが約30年前にそれを証明していた。今でも、その魅力はまったく色褪せていない。
【画像】ポルシェとの見事な競作 アウディRS2 現行のRS4とRS6、TT RS B7型サルーンも 全104枚
1990年代初頭、アウディはブランドイメージを向上させ、BMW M社を焦燥させる、高性能モデルを提供したいと考えていた。既にS2と呼ばれる、直列5気筒ターボエンジンと四輪駆動システムを融合させたクーペやワゴンを完成させていたが、不充分だった。
そこでアウディは、有力な協力相手を探した。シュツットガルトのポルシェが名乗りをあげ、コードネーム「P1」と呼ばれる新型の開発がスタート。アウディは従来以上の高性能モデルを得ることができ、ポルシェは経営資金を得ることができた。
今では想像し難いが、当時のポルシェは業績が厳しかった。両社にとって、悪い条件ではなかったといえる。
ポルシェはそれまでの技術を活かし、サスペンションとブレーキを再設計。S2に搭載されていた2.2L直列5気筒エンジンにも手が加えられ、大きなターボチャージャーが組み合わされ、最高出力320psと最大トルク44.1kg-mが引き出された。
またRS2では、964型や993型911のハードウエアの一部が用いられている。柔らかいカーブを描くアルミホイールやフォグライト、ドアミラーなどは、ポルシェのものだとわかるだろう。
0-48km/h加速はマクラーレンF1より鋭い
RS2が生産されたのは、ポルシェのツッフェンハウゼン工場。当時はメルセデス・ベンツ500Eも生産されており、過去にはポルシェ959も作られていた、由緒正しき場所だ。
1994年から1995年という短い期間に、2891台がラインオフ。当初の予定は2200台だったが、市場の反響が大きく増産されている。
既に誕生から30年近くが経つRS2だが、改めて目の辺りにすると、その完成度には驚かされる。ドライビング体験は、想像以上にモダンで洗練されている。
ステアリングホイールは軽く回せ、一定の情報が伝わってくるため、コミュニケーションが取りやすい。乗り心地は硬めながら、不快なほどではない。
大径タービンを採用しただけあって、エンジンのターボラグは大きい。アクセルペダルを踏み込んでも、3000rpm以下では目立った反応を得られない。しかし、レブカウンターの針がそこを超えると、我慢していたものが弾けるように、一気呵成に加速を始める。
1994年にRS2へ試乗したAUTOCARでは、0-97km/h加速を試し、4.8秒でこなすことを確認している。アウディの公称値は5.4秒だったにも関わらず。
加えて、0-48km/h加速だけを見れば、スーパーカーのマクラーレンF1よりも鋭かった。もちろん、現在でも不満なく速く感じるはずだ。
最新のRS4にも受け継がれる特徴
カーブが連続する道では、四輪駆動システム、クワトロの確かなトラクションが活きる。回転数を維持すれば、強力なパワーで脱出できる。トランスミッションは、運転する楽しさを増大させる6速マニュアルが標準だった。
とはいえ、限界領域で深い喜びを与えてくれるタイプではないだろう。操縦性は安全志向で、自在にリアを振り回せるような滑沢さは備わらない。本格的なスポーツカーやBMW M3に並ぶ、ドライビング体験を叶えてはいない。
ポルシェの技術力が落とし込まれた、高速で実用的なアウディのステーションワゴンがRS2だ。その特徴は、最新のRS4にも受け継がれていると思う。だが、歴代のRSモデルで最も強い個性的を放つのは、このRS2ではないだろうか。
専門家の意見を聞いてみる
アレックス・グリーン氏:フォンテイン・モーターズ社
「ランチア・インテグラーレは信頼性が不安。フォード・コスワースはもの足りない。動力性能と個性、実用性を兼ね備えたRS2は、そんなドライバーにとって魅力的な1台といえるでしょう」
「現在でも、4気筒ターボを搭載するライバルには引けを取りません。ターボチャージャーが放つパワーデリバリーには、中毒性があります」
「クラシックカーとして価値は保たれるでしょうし、トラブルが起きても、英国ではオーナーズクラブが活発に活動しています。しかし、近年は価格が高騰気味です。部品も探すことが難しいようですね」
「ベースのアウディ80は実用主義のステーションワゴンでしたから、使い勝手も悪くありません。子供と犬を乗せて、地平線の彼方までのロングドライブも得意分野。家族全員が楽しめるクルマです。究極の、使えるクラシックカーかもしれません」
購入時に気をつけたいポイント
エンジン
RS2のタイミングベルトは、12万8000km毎の交換が英国では指定されている。点火プラグは、3万2000km毎に交換したい。燃料ポンプや点火コイルも経年劣化するため、予防的に交換していいだろう。
トランスミッション
クラッチは急発進に充分耐えるほど堅牢。しかし、1速のギアにダメージが及ぶ可能性はある。変速時にギアの回転数を調整するシンクロメッシュの状態は、試乗で確かめたい。
サスペンション
ショックアブソーバーやスプリング、アッパーマウントの交換で、新車時のドライビング体験を復活させることができる。ブッシュ類も劣化していて不思議ではない。既に交換済みの場合は、その内容を確かめたい。
ブレーキ
比較的腐食や固着がしやすく、安くは交換できない。状態を保つため、定期的に走ることは重要だ。ブレーキが鳴く場合は、パッドとダンパーパッドの交換で改善できる。ハンドブレーキは効きが弱い。
ボディとインテリア
ドアの下部は、クリップが固定されている周辺で腐食することがある。ドアトリムが不自然に膨らんでいる場合は、剥がして確認した方がいいだろう。
サイドウインドウのレギュレーターは故障しやすい。黒いプラスティック製の内装トリム類は、RS2の専用部品で入手が難しい。シフトノブも同様。レザーシートは、ヒビ割れを防ぐため半年毎にケアしたい。
知っておくべきこと
RS2 アバントのイメージカラーといえば、鮮やかなRSブルーだろう。RSモデル以外にも同じ色が設定されたため、後にノガロ・ブルーと呼ばれるようになった。
2021年には、RS4とRS5、RS6にノガロ・ブルーで仕上げられた、ノガロ・エディションが設定されている。やや遅れながらも、RS2の25周年を記念して。
英国ではいくら払うべき?
4万ポンド(約161万円)~5万9999ポンド(約240万円)
走行距離が20万kmに迫るような、初期のRS2を英国では探せる。とはいえ、しっかり整備され状態が悪くない例が多いようだ。
6万ポンド(約161万円)~7万9999ポンド(約240万円)
後期モデルが含まれるようになる。走行距離は8万km前後が中心。人気色のRSブルーの場合は、走行距離が長くなる。
8万ポンド(約161万円)~9万9999ポンド(約240万円)
理想的な条件のRS2を英国で探すなら、この価格帯から。走行距離は8万km以下が多い。
10万ポンド(約241万円)以上
走行距離の短い、ショールーム・コンディションのRS2を英国では探せる価格帯。インテリアにブルー・スウェードがあしらわれた例も出てくる。
英国で掘り出し物を発見
アウディRS2 アバント 登録:1994年 走行距離:20万9300km 価格:4万9991ポンド(約169万円)
執筆時に出てきたRS2のなかでは、最も安価な1台。走行距離は長いものの、ディーラーでしっかり点検を受けており、メカニズムもボディも期待以上に良い状態だと売り手は主張する。
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