時代をリードするデザインやパフォーマンスでSUVのマーケットを牽引!
海外では今なお数多くのRVやSUVを販売しているが、国内では一時期エクストレイルのみというさみしい状態であった日産。現在はキックスが発売され、来年にはリーフに続くEV専用モデルであるクロスオーバーSUVのアリアをリリース予定。
「スーパーシルエット」に「R90CP」! 日産の歴代ワークスマシンはすべてが伝説だった
10年間培ってきたEVのノウハウと最新のコネクティング技術をフルに投入、さらにガソリン車には描けないデザインの先進性を含めて、SUV市場を牽引するクルマになることは間違いない。SUV王国復活を予感させる日産だが、過去にもこうした時代をリードする車種を幾多もマーケットに送り込んでいる。歴代車両から意欲作6台をピックアップした!
1)初代テラノ
1980年後半から1990年中盤までに巻き起こったクロカン4WDブーム。三菱のパジェロやトヨタ・ランドクルーザー、いすゞビックホーンなどゴツゴツのゴリゴリな土系の4WDが各メーカーからモテはやされ、一大ブームとなった。無骨なRVが悪路のみならず街中も我が物顔で闊歩していた中で、アメリカの香りがするスタイリッシュなデザインとフルトリム化された上質なインテリアを組み合わせた日産テラノの登場はかなりセンセーショナルだった。
車体こそダットサントラックをベースとした本格オフローダーであったが、日産北米スタジオ「NDI」がデザインした張りのある面構成を持ち、それまでのRVにはないブリスターフェンダー+ロー&ワイドなフォルムは新しい時代を感じさせた。足まわりもフロント=ダブルウィッシュボーン、リア=5リンクという当時としてはコストがかかっており、乗用車ライクで運転できるという点では今のシティSUVの元祖いえるモデルだった。
エンジンも当初は2.7Lのディーゼルのみであったが、3LV6ガソリンエンジンやディーゼルターボモデルが追加されるなど動力性能を強化。他のクロカン4WDとは異なる上級志向のSUVとして進化して流行に敏感なトレンドリーダーたちを虜にし、瞬く間に大ヒットした!
1996年に2代目へとバトンタッチしたが初代よりも個性が薄れたこと、時代はRVからミニバンへと移り変わったこともあり、2002年に国内販売は終了した。正当な後継車はテラノの海外名であったパスファインダーであるが、テラノの名前は2013年からインドで販売されているCセグメントのSUVで復活している。
また、最近、俳優の木村拓哉氏がマクドナルドのCM「ドライブスルーの歌」編で使用していたクルマとしても再び注目を集めたことは記憶に新しい。初代テラノのカッコよさに惚れ直した人も多かったのではないだろうか?
2)エクストレイル
今や日産を代表するSUVとなった日産のエクストレイル。乗用車系プラットフォームをシティオフローダーとしては最後発に近かったため、マーケットを徹底的に研究し、初代発売当初は死角のないSUVと言われた。デビュー翌年の2001年から10年間、国内SUV部門販売台数1位を獲得したことからもその言葉が本物であったことわかる。
乗用車系SUVでありながら、ワイルドなデザイン、汚れを落としやすい素材を使った荷室など、ヘビーデューティなオフロード系のカラーを持たせていたことで、幅広い層から支持されたのがヒットの理由だろう!
現在の3代目は初代や2代目が持っていたタフギアのイメージはやや薄れ、都会の洗練された装いをまとったが、マーケットでの立ち位置は変わっていない。大きく変わらないことは変える必要がないからで、エクストレイルは今や日産のアクティブランナーのイメージリーダーカーとしての重責を担っているといえる。「200万円以下の使える四駆」としてスタートし、ミドルSUV界のカローラ的な存在となったエクストレイルだが、初代、2代目、3代目ともにスタンダードにはない個性豊かな飛び道具をラインアップしているのも特徴だ。
初代は日産の2Lクラス最強のパワーユニットであり、280ps(トルクは31.5kg-m)カー初の2L+AT車搭載車である「GT」をラインアップに加えることで走りのSUVのイメージを植え付けた。
2代目は世界で初めてポスト新長期規制をクリアした日産初のクリーンディーゼルエンジン(173ps/36.7kg-m)を搭載する「20GT」を2008年に投入(5速MTもあり、3代目登場以降も2015年まで継続販売)し、ディーゼルの国内普及、復活の先鞭となった。
3代目は日産SUV初のハイブリッド車(独自の1モーター2クラッチ式)と運転支援システムであるプロパイロットなど先進の技術をSUVマーケットに盛り込むなど、常に話題を持つことで、その名前を一般に広く普及させることに成功した。
3)インフィニティFX
2000年前後から流行の兆しを見せた高級シティSUVをさらに進化させたスポーツクロスオーバー車。現在はBMWのX6やポルシェのカイエンなど多数存在するが、その先駆者となったのが2003年に登場したインフィニティFXだ。
スカイラインやフーガといった後輪駆動のFR-Lプラットホームをベースにクーペタイプのボディシェルをドッキングした。攻撃的なスタイリングと300psを軽く超える4.5LV8という大排気量エンジン(280psの3.5LV6エンジンもアリ)を搭載し、日産自慢のAWDシステムであるアテーサET-Sを組み合わせることで、スポーツカーに負けないパフォーマンスを安定して引き出せると、発売直後から人気を博し、アメリカにおけるインフィニティブランドの周知に大いに貢献した。
2代目は2009年に登場。スタイリングは先代スカイラインや現行フーガの流れを組む抑揚のある大胆かつ洗練されたデザインにチェンジ。動力性能も排気量が5LV8に拡大され、390ps(セバスチャン・ベッテルバージョンは420ps、現在は3.7LV6のみの設定)までパワーを引き上げ、ミッションも5速ATから7速ATに多段化するなどポテンシャルをさらに引き上げるとともに、アラウンドビューモニターや車線逸脱防止システムなどの先進技術を満載するなど、快適性を含めて欧州勢に負けずとも劣らない世界屈指のスポーツSUVへと成長した。
2代目は主戦場である北米だけでなく、欧州、中国、中東など幅広い国に輸出され、いずれも好評を博している。イギリス仕様に右ハンドルがあるにもかかわらず、このスタイリッシュなスポーツSUVが日本で販売されないのは何とも残念。現在はインフィニティのネーミングルールに則り、QX70と名称を変えている。
4)デュアリス
現在は多くの国内外メーカーでラインアップされているCセグメント(VWゴルフくらいの車格)のスタイリッシュ(クロスオーバー)SUV市場を開拓したのも日産だ。2007年3月にデビューしたデュアリス(欧州名はキャシュカイ)はパワートレインやプラットフォームはパッケージは2代目エクストレイルと共通ながら、塊感あるデザインは日産デザインヨーロッパ(NDE)と日産テクニカルセンターヨーロッパ(NTCE)が担当。生産は英国日産のサンダーランド工場で行われ、輸入車として日本に導入された。
シティSUVでありながらオフロード色が強かったエクストレイルに対して、デュアリスはセダンに変わるグローバルスタンダードカーとして開発。ハッチバックのようなスッキリとした上半身とSUVらしい大径&力強さが両立する都会派スタイルが、当時は斬新だった。
足まわりは欧州で鍛えられ、高品質なザックス製のハイスピードコントロールショックアブソーバーを組み合わせることで、圧倒的なスタビリティの高さとフラッドライドな乗り味を実現。SUVとは思えない走りの仕上がりは国内のジャーナリストを含めてかなり高評価だった。
ただ、欧州の販売数の増加により、2007年12月から開発拠点は日産九州工場に移管されたのだが、それ以後のモデルはどこか日本風味になり、欧州車のスッキリとした乗り味は若干薄れたように感じた。そのため、デュアリスの本質を味わいたいなら前期型、それも最初期モデルがベストである!。
質実剛健で非常によくできたSUVであったが、同じような価格ならば車体が大きく、豪華な装備や煌びやかな装飾を好む日本のユーザーにはエクストレイルのほうが好まれた。そのため、好評持って受け入れられた海外では2代目が登場するが、日本ではエクストレイルと統合される形で2014年に生産終了となった。高品質なコンパクトSUVを堪能したいなら今なおオススメの1台である。
5)サファリ
砂漠の王者として今なお世界中で愛されるトヨタのランドクルーザー(以下ランクル)。日本の四輪駆動車の草分け的な存在であるのが、そのランクルよりも2年早く発売が開始され、長年ライバル関係にある日産の大型クロスカントリー4WDがパトロール。
もともとは軍用(警察)車両として開発され、ほとんどが海外へ輸出されており、中近東や北米などの過酷な地域や道路整備が遅れている振興地域が主要な販売先。生と死が隣り合わせである過酷なロードでの使用が多いため、絶対に壊れない、生き残れる耐久性が求められた。頑丈なラダーフレームを採用し続けるのは、転倒してボディが潰れてもフレームが生き残っていれば走り続けられるからだ。
たぐいまれなる耐久性を持つ究極の実用車として磨き上げられてきたパトロールが、サファリとして日本の一般ユーザー向けに販売を開始したのはデビューから26年が経過した1980年。人気のTVドラマ「西部警察」の放水車として登場したことで、その名は全国に知れ渡ることになったのは有名な話だ。ただ、時代に合わせて高級路線にシフトしたランクルに対して、長く質実剛健の実用車にこだわったため、売れ行きが伸び悩み、2007年に国内市場から撤退することになる。
サファリの一つの特徴が歴代強力な専用エンジンを搭載してきたことだ。直6ディーゼルのRD28にターボを組み合わせたRD28ETiや乗用車用の直6エンジンとして最大級の排気量となる4.8L(1シリンダーあたり800cc)のTB48DE型ツインカム24バルブ(280ps/46.0kg-m)などがそれで、これを見ても日産にとってパトロールは重要なモデルであることが分かる。
現在は日産最大排気量となる400psの5.6L V8エンジンを搭載。NISMOが追加されるなど、遅ればせながらハードなクロスカントリー4WDから、高級志向のプレミアムクロカンとして生まれ変わり、中近東の裕福層などをターゲットにリリースしている。
2019年にマイナーチェンジが行われ、Vモーショングリルやブーメラン型ヘッドライトを採用することで日産の最新フェイスにスキンチェンジ。精悍さを増した現行モデルなら、日本のユーザーに受け入れられるのではないか? 限定でもいいので復活を期待したい!
6)ジューク
日産の元チーフデザイナーである中村史郎氏が手掛けた個性溢れる最高傑作。インフィニティFXやデュアリスが提案したスポーツシティSUVの流れを組み、市販車の限界を突き抜けたデザインオリエンテッドな1台。
ラリーのライトポッドをイメージしたヘッドライトや切れ長の個性的なポジションランプ、フェアレディZ(Z34型)と同じブーメラン型のテールランプなど、ユニークでファッション感覚あふれるルックスはシトロエンC3エアクロスを見てもわかるとおり、間違いなくBセグメント(VWポロくらいの車格)SUVの世界に影響を与えたといっていい。今までにない、何にも似ていないデザインがマーケットに受け入れられ、特に欧州マーケットで高い評価を受けた。
ただ、クルマ作りにおいて、いったん大きく振って市場の評価を検討し、ネガを潰して次の世代で完成度を高めるやり方はよくある手法で、現に2代目ジューク(欧州専用)は初代のイメージや個性を踏襲しながら、嫌味のないスタイルで整えられている。
2010年の発売当初はは1.5Lの基幹エンジン(MR15DE)するファッショナブルカーであったが、同年11月には日産肝いりの1.6L直噴ターボ(MR16DDT)を追加することでスポーツSUVの仲間入りを果たす。このエンジンは開発予定だった日産のスポーツカー用として用意されていたもので、190ps/24.5kg-mのスペックは当時の1.6Lではトップクラスで、4WD機構を介すことで、ハイスタビリティな走りを披露。まさに現代版のホットハッチという印象であった。
周囲の雑音に耳を傾けず、開発陣が初志貫徹を貫き、デザインだけでなく、走行面でもクラスを飛び抜けた性能を持っていたジューク。日産の長い歴史において後世まで語り継がれるマニアックなSUVであることは間違いないだろう!
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