もくじ
ー ゲームの世界から現実の世界へ
ー DTMマシンベースのパワーウエイトレシオは562ps/t
ー 限界領域に迫れないほど高いポテンシャル
ー 番外編:グランツーリスモから現実世界へ現れたクルマたち
ゲームの世界から現実の世界へ
いま目の前にあるのは、コンピューターによってバーチャル空間に生み出された電動クーペ。アウディのインハウスデザイナーがここ2年間の間に生み出した、20数台のうちのひとつ。
このオリジナルは、ご存知のかたも多いと思うが、ソニー・プレイステーションのレーシングゲーム、グランツーリスモの中で、アウディのプレゼンスを高めるために生み出されたクルマだった。
しかし、ビジョン・グランツーリスモが気に入ったアウディの上層部。アウディの電気自動車のサブブランド、eトロンのマーケティング戦略の一環として、フォーミュラEシリーズ向けの実走行プロトタイプの制作を決断したのだ。
今回の試乗で招かれたのは、ドイツ・インゴルシュタットの郊外に位置する、アウディのノイバーグ・テストトラックのガレージ。初めて間近で見たこのクーペは低くワイドなプロポーションで、1989年のアウディ90クワトロIMSA GTOを呼び起こさせる雰囲気を持っている。カーボンファイバー製のボディには、何枚も重ねて取り付けられたフロントスプリッターとカナードが付く。ボディの寸法はA6に近い。
フォーミュラEシリーズのイベントでは、元DTMドライバーのラヘル・フレイがドライブするが、今回はこのショットガンにわたしと一緒に同乗するだけらしい。ヘルメットを渡してもらう際、笑いながら勇気づけてくれた。
もちろん、ゲームコントローラーではなく、握るのはステアリングだ。
DTMマシンベースのパワーウエイトレシオは562ps/t
クルマの基本構造は、アウディのモータースポーツ部門が2018年のA4 DTMレースカーの部位を組合せた、チューブラーフレームとなっている。サスペンションはダブルウイッシュボーン、電動のパワーステアリングとブレーキシステムを持つ。
今後生産されるであろうeトロンブランドのクルマの技術を用いるかたちで、eトロン・ビジョン・グランツーリスモには3基のモーターが備わっている。1基はフロント側に搭載され、2本の前輪を駆動し、2基はリア側に搭載され、後輪それぞれを駆動する。
モーター3基を合わせた最高出力は816psにも及び、車重1450kgのクーペのパワーウエイトレシオは562ps/tに達する。アウディは正式な最大トルクを公表していないが、複合で101.7kg-mほどにはなるようだ。アウディ自慢の4輪駆動、クワトロシステムによって、フロントとリアだけでなく、リアタイヤ左右それぞれも駆動力を自在に配分することが可能。0-100km/h加速は2.5秒で、最高速度は225km/hに制限されている。
車内は左ハンドルで、アウディのDTMレースカーに近い。ドライビングポジションは、キャビンの後方に寄り、背もたれはかなり倒れている。わたしは6点式のハーネスで、カーボンファイバー製のシートにしっかりと固定される。
エンジンをスタートさせる手順は、通常のクルマとは異なる。
まず初めにブレーキを踏むのは同じ。そして、ドライブボタンを押す前に、主電源を入れるため、運転席左側の床に取り付けられたドライブ・セレクトボタンの中央にある、スイッチを押す。電子的なヒューッという音が聞こえたら、スタート準備が整ったサイン。
アウディのオーバルコースにコースインするとき、リアモーターからうめき声のような音が聞こえたが、驚くほどのものではなかった。
スロットルレスポンスは鋭敏で、ステアリングフィールは極めてダイレクト。1台限りのプロトタイプにもかかわらず、簡単にスムーズに走らせることができ、技術の高さを物語っている。しかし、ベースはDTMレースカー。このeトロン・ビジョン・グランツーリスモはこれまでわたしが運転したどんな電動スポーツカーよりも、スパルタンだった。
限界領域に迫れないほど高いポテンシャル
数周の慣熟走行を終えると、オールクリアのサインを出す助手席のフレイ。
わたしはスロットルを踏み込む。
シームレスかつ即座に、スピードだけでなくすべての密度が高められる。巨大なトルクと4輪駆動システムが生むトラクションが、爆発的にクルマを加速させる。気がつくと、スピードリミッターが効く225km/hに達していた。
テストコースの長いバックストレートで、このクルマの獰猛性を目の当たりにする。加速だけでなく、減速も暴力的なのだ。ブレーキシステムはアウディA4 DTMレースカーのものを利用しているが、電動化されている。カーボンファイバー製のブレーキディスクにレース仕様のキャリパー、ファットなスリックタイヤに巨大なリアウィングが組み合わさり、ストッピングパワーも凄まじい。
強力なダウンフォースがかかる状況でのブレーキングは、ABSも備わっていないから、どんなアウディのレースカーとも異なる。正直、高速域からのハードブレーキングはかなり難しい。初めに必要な分だけ、思いっきりベダルを踏み込んだら、減速とともに減少するダウンフォースにあわせて、ブレーキペダルを戻していく必要がある。しかも、ブレーキペダルからの感触はあまり豊かではないうえ、ストロークも短い。そして、左足でブレーキペダルを操作するのだ。
だから、初めはテールからスピンしてコースアウトすることを恐れ、左足に思いっきり力を入れることを恐れていた。でも、フレイの助言を受けながら、最終的にはビジョン・グランツーリスモが持つブレーキングのポテンシャルに近づけたと思う。
ステアリングフィールも確かで、フロントタイヤのグリップも極めて高いから、コーナリングスピードも恐ろしく速い。低重心に加えて、前後重量配分も50:50を達成していることも、大きく寄与しているだろう。
クルマを不安定な状態に持ち込むにはかなりのプッシュが必要な一方で、またたく間に加速を完了させてしまう。いまのわたしのドライビングスキルでは、クルマの限界領域に迫ることは難しいほどの速さを見せつけた、eトロン・ビジョン・グランツーリスモ。
ただし、電動のレースカーが持つ大きな魅力は、間違いなく実感することができたのだった。
グランツーリスモから現実世界へ現れたクルマたち
メルセデス・ベンツAMGビジョン・グランツーリスモ
筋肉質なボディをまとうガルウイング・クーペの1:1モデルが登場したのは2013年。フロントにV8エンジンを搭載する。次世代のメルセデスAMG GTのロードカーを提示している。
ブガッティ・ビジョン・グランツーリスモ
シングルシートにW16エンジンを搭載し、量産化目前だったシロンをベースにしたコンセプトカーで、2015年末に発表されている。その半年後にロードカーのシロンが登場した。
アルピーヌ・ビジョン・グランツーリスモ
実物大モデルが2015年初頭に登場し、今後のアルピーヌの復活を想起させたクルマ。4.5ℓ V8エンジンから450psを発生するとされている。
ヒュンダイN2025ビジョン・グランツーリスモ
ヒュンダイのサブブランド、Nパフォーマンスのショーケースとして生まれ、884psを発生させる燃料電池をパワートレインとする。実物大モデルは、2015年に発表されている。
マツダLM55ビジョン・グランツーリスモ
1991年の787Bによるルマン優勝の思いを、現在のマツダの魂動デザインで包み込んだクルマ。2015年のグッドウッド・フェスティバル・スピードでは、スター級の扱いとなった。
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