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“砂漠ツーリング”の夢を叶える冒険バイク── KTM790アドベンチャー R海外試乗記

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“砂漠ツーリング”の夢を叶える冒険バイク── KTM790アドベンチャー R海外試乗記

790アドベンチャーは軽量コンパクトな799cc水冷並列2気筒エンジンを搭載した、KTM渾身の最新アドベンチャーモデルだ。その「R」仕様はハードなオフロード走行が可能な装備が与えられたハイスペックモデルで、前後のWP製サスペンションはフルアジャスタブルタイプ、ストローク量も240mmに延長されている。ライドモードはスタンダードモデルの3種類(ストリート、レイン、オフロード)にラリーモードを加えた4種類へとアップグレードされている。

北アフリカのモロッコで開催された国際試乗会では、サハラ砂漠の玄関口「メルズゥーガ大砂丘」を舞台にしたテストライドが行われた。それだけで、KTMがいかにこの790アドベンチャーRの走破性に自信を持っているかが伺い知れるというものだ。じっさいその過酷なアタックツーリングでは、アドベンチャーRの凄まじいパフォーマンスを体感することになった。

ダカール・ラリーの風景が見えるライト・アドベンチャーマシン ── KTM790アドベンチャー海外試乗記

ホテルから出てしばらくは、舗装された、荒野の中の一本道を高速道路並みの速度で移動していく。標準装着のブロックタイヤが多少の振動は伝えてくるが、直進安定性やシャシーの剛性感はまったく不安がなく、しなやかな前後サスが“快適”と言ってもいい乗り心地を提供してくれる。

コーナリング性能もオンロード寄りのセッティングがなされたスタンダード(STD)仕様と比べて遜色ないもので、880mmというシート高さえ苦にしなければ、街乗りからツーリングまで幅広いシーンで乗ることができるだろう。「R」のサスペンションはSTD仕様と比べてストロークが長いというだけでなく、乗り心地や乗り味という点でも一枚上手だ(もちろんそれはプライスにも反映されてはいるが)。

しばらく行くと道はなくなり、荒野を走ることになった。先導するKTMのライダーを追いかけアクセルを開けていく。どこまでも続く荒涼としたアフリカの大地は、一見フラットダートのように見えるのだが、砂塵に霞む先にはブロック大の石が転がっていたり、公園のベンチほどの段差が突然現れるなど、至るところに危険なトラップが潜んでいる。正直、「大変なところにきてしまったと……」と思ったがもう後には引けない。とにかく無我夢中で付いていった。

だが、そんな場面でもなんとか走り続けられたのは、ひとえに「R」の性能のおかけだ。とりあえずスロットルを開けてさえいれば、レーシングスペックのWP製サスペンションと21インチの大径ワイヤースポークホイール、復元力に優れるクロモリ鋼管製フレームが一丸一体となって、路面からの衝撃を吸収し、ギャップをいなしてくれる。

カラカラに乾いたグラベル、砕けた石が転がるガレ場、ふかふかの砂上など、刻々と表情を変える路面で頼りになったのが「ラリーモード」だ。R仕様にだけ搭載されるこの4番目のモードは最もアグレッシブな出力特性が特徴で、スロットルを開けると瞬時に中速トルクが立ち上がり、フロントタイヤを浮かせることができるため、あとはサスペンションに任せて多少のギャップなど気にせずに乗り越えてゆける。

さらにラリーモードでは、9段階のトラコンレベルを手元のスイッチで瞬時に切り替えられ、刻々と変わる路面に素早く対応することができる。常に後輪がスリップしている砂地では、トラコンレベルを最小限にして駆動力が途切れないようにして走るのが効率的だし、逆にオンロード走行ではトラコンレベルを最大にしておけば、不用意なスライドなど恐れずに走ることができる。もちろんこうした電制システムのレシピには、KTM豊富なラリー経験が生かされている。

テストライドでは“デューン”にも挑んだ。デューンとは大砂丘のことだ。小さなビルディングほどの砂の山が延々と、視界の果てまで連なっている。こんな経験はもちろん初めてだった。

スロットルを閉じれば途端に前輪が砂に取られ、開けすぎれば今度は後輪が空転してどんどん砂に埋もれていってしまう。パウダー状の砂の海の中では、トラコンもABSもまったく役に立たないことを実感した。とくに登りは下から加速して勢いをつけていかないと頂上まで登り切れない。そんなときも95psの最高出力を発揮するLC8cエンジンのパワーと、ラリーモードによる瞬発力のおかげでなんとか切り抜けることができた。

砂丘でスタックしかけたときには、車体の左右に振り分けられたロワータンクによる低重心と軽量コンパクトな車体のおかげで、砂の海でもがきながらもなんとか走破できた。これがもし1000ccオーバーの巨大アドベンチャーモデルだったとしたら、自分の腕と体力ではそうは出来なかったろう。

2日間でトータル200km以上におよんだ砂漠の道程は、テストライドであると同時に究極の冒険ツーリングでもあった。自分のようなふつうのライダーを“未知の場所”へと連れて行ってくれる懐の深さと、いっぽうではそのまま国際ラリーレイドに出場できるほどのプロスペックを備えた790アドベンチャーは、ライダーの夢を叶えてくれる真のアドベンチャー(冒険)マシンなのだ。

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