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レストア初挑戦は「21歳」 でもペブルビーチでクラス3位の偉業! タルボ105 エアライン(2)

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レストア初挑戦は「21歳」 でもペブルビーチでクラス3位の偉業! タルボ105 エアライン(2)

落札者は母を泣かせた21歳の英国人

オークションへ出品されたタルボ105 B1のボディパネルは、14本の結束バンドで固定されるという有様ながら、3万ポンド近い取り引きに至った。落札者は、当時21歳という若さのチャーリー・エリオット氏だった。

【画像】奇才ロシュによる最後のサルーン タルボ105 エアライン 後年のタルボ 同時期のヴィンテージも 全160枚

「入札の開始直後に、予算の上限へ達してしまいました。そこで諦めるべきだという周囲のアドバイスへ反し、最後にもう一度挙手し、競り勝ったんです」。グレートブリテン島南東部、エセックス州に住むエリオットが笑う。

「車両が届けられた時、配送員が部品に違いない木片や金属片を適当に投げ込んでいるのを見て驚きました。何の部品なのか、検討も付きませんでしたが。母は出品時の紹介映像を見て、ローンを組んでまでこれを落札したのかと、泣いていましたね」

「お金持ちな家系ではなかったので、家族からの愛とサポートに助けられました。自分の夢を信じてくれたんです。様々な感情が入り混じった、レストアといえましたね」

「部品は明らかに足りず、複雑な設計も課題になりました。優秀なレストア職人の方は忙しいので、時間調整も重要でした。多くの人に協力していただき、本当に幸運です。このクルマを作った人々のことを思うと、感慨深いですよ」

少なくとも、エンジンはリビルド済みだった。彼の友人で若きエンジニア、ジェイク・ニューマン氏は、2日ほどで再始動に成功したそうだ。それでも、再びリビルドが必要だという結論へ最終的には至っている。

父や友人も加わった、祖父を哀悼するレストア

BMWとミニの販売へ関わるエリオットは、レーシングカーやクラシックカーに囲まれて育った。11歳から数年間は、後にF1レーサーになるドライバーとともに、ゴーカート・レースへ熱中してきたという。

そんな彼の祖父、デビッド・マシソン氏は、タルボ14/45を所有していた。夢の1台として、頻繁に口にしていたのが105だったそうだ。5年前に亡くなった時、祖父を哀悼するため購入を決意したと説明する。

できるだけオリジナルへ忠実なレストアを当初から考えていたエリオットは、自身が稼いだ資金と余暇のほぼすべてを、105 1Bへ費やした。2017年から6年間も。

作業には、彼の父と友人のニューマン、その父に加えて、叔父のジョン・ゴート氏も加わり、深夜に及ぶことも多かった。「作業に役立つ人脈はありました」。とエリオットが振り返る。

もちろん、専門家も頼った。ドア・ヒンジは、職人によって無垢の真鍮からフライス加工で削り出されている。ボディの木製フレームは、大工から加工法を学んだ。「作業の貫徹には、ある種の狂気も必要としましたね」

「アメリカのペブルビーチ・コンクール・デレガンスへの出展が決まり、2023年という期限もありました。エンジンは、専門家のリー・ラングストーンさんへ仕上げていただきました。彼がいなければ、コンクールへ辿り着くことはできなかったでしょう」

ペブルビーチでクラス3位のツートーン

「出荷予定の数日前まで、組まれていない部品が沢山。アメリカに着いてからも、3kmほど試乗しただけ。コンクールの参加車両の多くは、プロのスタッフによって綺麗にしてもらいます。でも、僕らは自分たちで磨きました」

「電気系統をチェックしておらず、クラクションを鳴らすのに現地で分解することに。それでも、最高の1週間でした。アメリカの人々はとても親切でしたね。英国人の方が高飛車だったかも。ツーリングイベントのツール・デレガンスも、完走できています」

エリオットたちが仕上げた105 B1は、ヨーロピアン・クラシックスポーツ・クラスで見事に3位入賞を果たした。彼のような若さで、これほどの気概と機知を持った人物は、極めて珍しい。どんな思いで表彰台に登ったのだろう。

ボディは、ブラックとガンメタリックのツートーン。フロントガラスのピラー部分に、オリジナルの塗料が残っており、そこから再現された。伸びやかなスタイリングに似合っている。

美しいフロントドアを開くと、ワイドなシャシーの大きさが良くわかる。枕のように肉厚なフロントシートは、鮮やかなレッド・レザー。必要に応じて、3名が並んで座ることもできる。クッションには張りがあり、天井が少し近い。

直列6気筒エンジンのブロックは、ブラック・エナメル仕上げ。特に飾らない雰囲気が好ましい。クラクションは、大音量と小音量用の2基。ステアリングラックとバルブカバーは、アルミニウムより軽量なマグネシウム製だ。

クラス3位の結果以上に胸へ刺さる偉業

戦前のモデルは、運転席からの視界が良くないことが多いが、これは広く見渡せる。大きなボンネット越しの景色は壮大。2枚組のリアウインドウも大きい。

3.0Lエンジンは滑らかに回り、粘り強い。洗練され上質で、落ち着いた雰囲気に包まれて運転できる。プリセレクター・トランスミッションは、優しく簡単に次のギアを選べる。スポーティな印象は、そこまで強くないけれど。

「トラフィック」遠心クラッチは、900rpmから繋がる。AT車と同様に、ブレーキを踏んだ状態で1速のまま発進できる。渋滞でも楽ちんだ。

ステアリングホイールから手を放すことなく、小さなレバーを上下に動かすことで、素早く次のギアを選べる。クラッチペダルを踏むと、レバーで選んだギアへ切り替わる。

ステアリングホイールは走り出すと軽く転じ、ロックトゥロックは2.5回転とクイック。心地良いエンジンサウンドをBGMに、軽快にカーブへ侵入できる。扱いにくいところはないし、鈍重な感じもない。ドラムブレーキは、意外なほど強く効く。

まだ30歳にもなっていないエリオットが、90年も前のヴィンテージカーのレストアを、これほどの高水準で仕上げたことに言葉を失ってしまう。ペブルビーチ・コンクール・デレガンスでのクラス3位という結果以上に、胸へ刺さる偉業といっていいだろう。

タルボ105 B1 エアライン(1935~1937年/英国仕様)のスペック

英国価格:625ポンド(新車時)/50万ポンド(約1億200万円/現在)以下
生産数:97台
全長:4877mm
全幅:1727mm
全高:1524mm
最高速度:143km/h
0-96km/h加速:19.0秒
燃費:5.7km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1930kg
パワートレイン:直列6気筒2969cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:120ps/4800rpm
最大トルク:−kg-m
トランスミッション:4速プリセレクター・マニュアル(後輪駆動)

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