異彩を放った紫電77
ピンクを基調とした「Garage伊太利屋」カラーのレーシングマシンを覚えていますか? このマシンの名は「紫電77」で、ボディカウルはレーシングデザイナーとして有名なムーンクラフトの由良拓也氏が手がけたものでした。この伝説的なマシンを個人で所有する寺島 繁さんに話を聞きました。
悲運のマシン「紫電77」を生みの親、ムーンクラフトが40年ぶりに復活させる
レーシングマシンを手がける達人たちが製作
若者がレースに夢中になった1970年代後半に「富士グランチャンピオンシリーズ」でデビューした「紫電77」はグループ6に属し、空力性能を最大限に引き出すべくデザインされたフォルムで我々に衝撃を与えた。ついに日本もポルシェに肩を並べるフル密閉型クローズドボディのレーシングカーを開発したということでも話題となり、その流麗で細部まで凝ったディテールは、日本独自の職人技を活かして製作したレーシングカーとして注目された。
シャシーを手がけたのは森脇基恭氏で、ボディカウルを由良拓也氏が担当したという記録が残っている。このボディそのものを製作したのは、レーシンクカー専用ボディカウルの製作で有名なマッド杉山氏率いるマッドハウスだった。
ラッキーなことに友人から譲り受けることに
まさに国内トップの達人たちが製作した由緒正しきレーシングカーの紫電77を、驚くことに個人で所有しているオーナーを発見した。その方が、今回紹介する寺島 繁さんだ。このマシンの「紫電77」という名称は、1977年3月20日に開催された富士GCシリーズの開幕戦「富士300キロスピード」をデビュー戦として定めたことに由来している。
この紫電77は実際にレースで使われた本物以外に、ムーンクラフトが2018年に復活させたレプリカ版が存在するが、寺島さんが所有するマシンはそのどちらでもないという。じつはこの紫電77はその存在が隠されていた個体で、マッド杉山氏のもとでずっと眠っていた1台だった。その目的は今となっては不明。自身の製作コレクションなどさまざまな想像ができるが、このマシンを寺島さんの友人が縁あって杉山氏から譲り受けたのだった。
そして、そのことを知った寺島さんが「もし売る気になったら購入したいので必ず声をかけてくれ」と友人にお願いし、念願だった紫電77を手に入れることができたと説明してくれた。
サーキット走行に向けてメンテナンス中
寺島さんとってこの紫電77は、子どもの頃にプラモデルを作っては「カッコいい」とずっと眺めて見入っていた憧れのマシン。実際に自分のクルマになるとは想像もしていなかったが、さまざまな人との出会いと縁が繋がり、自分のところにやってきてくれた時は本当にうれしかったと話す。
ボディカウルは紫電77で実際に使っていたものだが、シャシーやエンジンは当時のレーシングカーとは異なるらしい。詳しく話を聞いてみると、ベースは「FJ1600」マシンのシャシー、トランスミッション、エンジンを使って、そこに紫電77のレーシングカウルを装着して製作しているそうだ。もちろん実際に走ることも可能。まだサーキットでは走らせていないが、テストランとして自宅敷地内を転がす程度で乗り、ちゃんとエンジン、トランスミッション、サスペンションが動くことが確認できている。
寺島さんはよく自身の愛車でサーキット走行を楽しむ人物。だから、この紫電77も本来のステージであるサーキットで近いうちに走らせたいと考えている。かなり古いマシンなのでトラブルが付きものなのは承知済み。サーキット走行に向けて、時間が空けばマシンメンテナンスを進めながら、ワクワクした気持ちで紫電77に接する喜びを味わっていると話してくれた。
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