寂しいことに2022年に生産終了になっていったモデル、年内には生産終了が決定しているモデルが存在するが、本企画ではそんな“物故車”をクローズアップしていく。この企画を見て、「惜しいクルマをなくしたな……」と思い出していただきたい。
※本稿は2022年11月のものです
文/清水草一、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年12月10日号
シャトルにフーガにいいクルマだったのに……本当に消滅でいいんですか? ひっそりと消えたクルマたち2022
■ホンダ シャトル(2015~2022)
5ナンバーステーションワゴンとして存在価値はあったが、コンパクトミニバンの台頭に押された
先代フィットをベースにしたステーションワゴンで、フィットシャトルの後継モデルだが、あえてフィットの名を外し、独自のイメージを目指した。
パワートレーンは先代フィットと同じi-DCDだが、乗り心地は断然洗練されており、広いラゲッジを持つ低燃費で走りも楽しい国産ステーションワゴンということで、大変貴重な存在となった。惜しむらくは、当時のホンダデザインがあまりにも複雑なラインを好んでいたことだ。
●戒名と理由:フィット院グチャグチャワゴン信士…フィットベースでデザインがグチャグチャなワゴンだったことに由来。そのものズバリでスイマセン。あのグチャグチャさえなければ……。
●惜しいクルマをなくしましたね度:★★★☆☆
■日産 マーチ(2010~2022)
日産 マーチ(2010~2022)。内装の造りが粗く、走りも厳しい評価を受けていた。いろいろケチりすぎたか
今から40年もの昔、日産のリッターカーとして登場した。CMにはマッチこと近藤真彦を起用。「マッチのマーチ」のキャッチコピーは、いまだに中高年世代の脳裏に焼き付いている。
今回消滅した4代目マーチは、リーマンショック不況のさなか、2010年に登場。
コストダウンのためにタイ製となっただけでなく、すべてがコストダウンされていて安物感が強く、国内ではのちに登場したノートに主役の座を奪われ、レンタカーなど安かろう悪かろう市場で活躍するのみとなり、今年、ついに物故車入りした。南無~。
●戒名と理由:近藤曾孫院安物感無念居士…マッチのマーチも4代目、つまり曾孫の世代で安物となり、国内で無念の最後を遂げたのは、時代の巡り合わせによる不運だろうか? 欧州では5代目マイクラが活躍しているのが救いだ。
●惜しいクルマをなくしましたね度:★☆☆☆☆
■レクサス CT200h(2011~2022)
レクサス CT200h(2011~2022)。レクサスブランドのなかでは最小サイズのボディで、価格もそれなりにこなれていたが、モデルが古くて認知度も低く販売台数は伸びなかった
2011年、レクサスブランドのボトムを担うハイブリッド専用車として発売された。ベースは3代目プリウス。
パワートレーンはプリウスと同じ1.8L・THSだが、パフォーマンスダンパーの採用などによりボディ剛性は大幅に強化され、サスペンションはまったくの別物。リアはダブルウィッシュボーンサスを採用し、走りの質感は段違いだった。
ドライブモードセレクトも装備しており、スポーツモードにするとハイブリッドシステムの駆動電圧が上昇してアクセルレスポンスが格段にシャープになるなど、各所にレクサスならではのこだわりを感じさせた。
●戒名と理由:プリウス院小型レクサス信女…プリウスベースの小型レクサスとしてブランドのボトムを守備したが、寄る年波には勝てず、ついに引退。11年間頑張れたのは、ボディやサスなどの素性が優れていたからにほかならない。
●惜しいクルマをなくしましたね度:★★★★☆
■日産 フーガ&シーマ(2009~2022)
日産 フーガ&シーマ(2009~2022)。2021年の国内販売台数はシーマがわずか75台、フーガが580台と、延命は難しい状況だった
フーガは2004年、セドリック/グロリアのあとを継ぐ日産の高級セダンとして登場。
2009年に現行モデルにフルモデルチェンジされ、グラマラスなデザインを与えられ、のちに3.5ハイブリッドが追加されるも、売れゆきは芳しくなく、北米でインフィニティQ70として販売されることで命脈を保っていた。
2012年にはロングホイールベース版がシーマとなって復活したが、再びシーマ現象が巻き起こるはずもなく、フーガ/シーマともに、あるんだかないんだかわからない状態が続き、今年、いつのまにか物故車となった。
●戒名と理由:現象院殿フェードアウト大居士…かつてのシーマ現象をしのびつつ、一時代を作った名車がフェードアウトした事実を噛みしめる戒名とした。
●惜しいクルマをなくしましたね度:★★☆☆☆
■ダイハツ ウェイク(2014~2022)
ダイハツ ウェイク(2014~2022)。「タントの上を行く→うえいく→ウェイク」から名づけられたが、タントを超えるどころか、販売が伸び悩み舞台を降りることに
2014年、同社のタントの全高および室内容積を超える超スーパーハイトワゴンとして登場。当時、軽自動車の全高戦争がたけなわで、ライバルに先んじるためには、より全高を高くするしかない! と思われていた。
タントによってスーパーハイトワゴン市場を切り開いたダイハツは、ウェイクでプラス約10cmの高さを獲得。ルックスをアウトドア系に振ることで、よりアクティブなユーザーの獲得を目指したが、なぜか市場は反応せず、売れゆきは低空飛行。
横転防止のためサスを固めすぎて乗り心地が最悪だったから? など推測されているが、現在も明確な理由は不明なままだ。
●戒名と理由:超スーパーハイト院横転防止信士…超スーパーハイトなボディを横転させないために、大きな犠牲を払ったことを賞する内容となっている。それが消滅の原因なのか……。
●惜しいクルマをなくしましたね度:★★☆☆☆
【番外コラム】去るクルマあれば復活するクルマもあり 三菱 ミニキャブMiEV再販
法規対応を完了したが、パワートレーンなどはアップデートを行っていない
2021年3月末に一時生産・販売を中断していた軽商用EVバン、ミニキャブMiEVの一般販売が、11月24日から再開される。
価格は据え置きで2シーターが243万1000円~、4シーターが245万3000円。10.5kWh仕様やミニキャブMiEVトラックの再販売はないという。
商品ライフサイクルの観点で販売中止を決定していたが、販売してほしいという声や問い合わせが多く、販売継続する運びとなった。
アウトドア仕様のミニキャブMiEVが2022年1月開催の東京オートサロンに出展されて高い注目を集めたので、そちらの市販化も期待したい。
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