1992年に発売された3台のV8スポーツ
ローバーが設計したV8エンジンは、かなり遅咲きといえた。その源流には、1958年のゼネラル・モーターズ社製ユニットが存在するが、本来の可能性を発揮するまで長い時間を要した。
【画像】同じV8を積む3台 MG RV8 TVRグリフィス マーコス・マントラ GTとMGF 同時期の964も 全122枚
1973年のMGB GT V8と1978年のトライアンフTR8は、目立った成功を残せなかった。しかし1990年代に入ると、アルミ製3.9L V8エンジンの能力を発揮させるべく、有能なスポーツカーが英国で次々に登場した。
この遅咲きの理由には、初代ランドローバー・レンジローバーの人気があった。想像以上の売れ行きで、1970年代には、そのエンジンを他ブランドへ提供できる余裕が殆どなかったのだ。
1980年代に入ると、ローバー・グループが再編成。ホンダの協力を得た前輪駆動モデルが、ラインナップへ加わっていった。この頃までに、ローバー社のV8エンジンを積むグループ内のブランドは、ランドローバーのみになっていた。
しかし、21世紀が近づくと状況は変化した。今回ご紹介する3台は、すべて1992年に発売されている。そもそもTVRは、ローバーからV8エンジンを購入したパイオニア。1983年のTVRタスミンを皮切りに、V8 Sも成功させ、新モデルの機運を高めていた。
TVRグリフィスが発表されたのは、1990年の英国バーミンガム・モーターショー。V8 S用だったシャシーをアップデートするため、保証金が求められたが、数日のうちに注文は350台に達したという。
1963年のマーコスGTに似たグラマラスなボディ
グリフィスの設計を主導したのは、当時代表だったピーター・ウィーラー氏。リア・サスペンションはダブルウィッシュボーン式へ改められ、鋼管製のバックボーンシャシーは、フロアパンとバルクヘッド、ボディシェルと一体化され、高剛性化が図られた。
ローバーから購入した、燃料インジェクションの3.9L V8エンジンは、独自にチューニング。グレートブリテン島の中部、コヴェントリーに拠点をおいたTVRパワー社によって、最高出力は239psへ引き上げられた。
他方、TVRより少量生産を想定したマーコスには、そこまでの余裕はなかった。同じユニットが発揮した馬力は、ローバーが組んだままの189ps。それでも新しいマントラは、キットカーではなく同社初の正式な量産モデル、型式承認車に仕上げられた。
それ以前にマーコスが提供していたのは、キャブレターで燃料が送られるローバーの3.5L V8エンジンを積んだ、マンチュラ。設計はかなり古く、燃料インジェクション化された新しい3.9Lエンジンへ対応させるべく、シャシーには改良が施された。
フロント・サスペンションは、旧式なトライアンフ譲りではなく、フォード・シエラから流用したマクファーソンストラット式に。リアも独立懸架式へ変更され、トレッドが広がり、1963年のマーコスGTがベースのボディも必然的に拡幅された。
再生産されたMGB用シェルが絶好の素材に
ランドローバーを傘下にするローバー・グループの一員、MGも、同様な動きを見せた。スポーティなイメージを持つブランドの、市場での存在感を維持するために。
コンパクトなミドシップ・ロードスター、MGFは1995年に登場する。だがそれより早く、V8エンジンを搭載したオープンスポーツが企画された。レストア市場向けに少量の再生産が始まっていた、MGB用のボディシェルが絶好の素材になった。
「プロジェクト・アダー」という名前で、MGBのボディを活用した新モデルの開発がスタート。しかし、当然に思えるが、1990年代として想定以上の変更が必要になった。
MGBのコンポーネントをそのまま流用できたのは、全体の5%。75%には改良が与えられ、残りは新設計された。それでも、2年足らずでMG RV8は完成している。
かくして、1992年に発売された、英国製V8スポーツを3台揃えてみた。特にモダンな容姿のグリフィスは、唯一、ゼロからスタイリングが描かれたことを主張する。ボンネットは低く滑らかで、ボディには不自然な付加物が存在しない。
ヘッドライトには滑らかなカウルが備わり、妖艶に表面がうねる。TVRが思い描いた、理想像が表現されたかのようだ。前後に絞られたフォルムが、それ以前のウェッジシェイプと一線を画す。深みのあるパープルの塗装は、1990年代の同社らしい。
クラシカルなロングノーズ・ショートデッキ
マントラは、明らかにクラシカルなプロポーションといえるが、ロングノーズ・ショートデッキは今でも魅力的。オーバーフェンダーが備わり、スタイリングは少々にぎやかに感じられるものの、それ以前より洗練されてはいるだろう。
1980年代のマンチュラは、似たプロポーションをまとうが少々新鮮味を欠いていた。しかし1990年代に入ると、時代が一周してスタイリッシュに見えるようになっていた。
MG RV8も同様にクラシカルで、フロントやサイドビューは美しい。ところが、リア回りは特に物議を醸した。トランクリッドとフェンダーパネルはMGB譲りな一方、テールライトやバンパーなどは専用設計で、後付け感が拭えない。
フロント周りは、ボンネットとフェンダーを新しくデザイン。ヘッドライトは、カウル付きの案も検討されたが、MGBとの違いが大きく見送られたようだ。1960年代の雰囲気を残しつつ、モダナイズしながら生産の続く、ポルシェ911も参考にされた。
ステアリングホイールを握ると、見た目と同様に、3台それぞれの個性を楽しめて面白い。最も荒削り感が強いのは、案の定、マントラだ。オールドファッションな、FRのスポーツカーらしいフィーリングに満ちている。
シートポジションは、路面へ触れそうなほど低い。平均的な身長のドライバーが座ると、目線もかなり低くなる。起源となるマーコスGTと同様に、シートはキャビンを構成するタブへソフトパッドが張られたもの。前後に移動するペダルで、姿勢を合わせる。
この続きは、MG RV8 TVRグリフィス マーコス・マントラ(2)にて。
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みんなのコメント
つくづく排気量税制とか、
ただの平民がクルマ乗るなんて生意気だ!
と意味不明に作った禁止税制が
今の日本の衰退と利益率低いものできたので低生産性でブラック労働でつじつま合わせに陥ってるからな。
やっぱり禁止はいかんね。