ルノーがパワーユニット(PU)の開発から手を引くと噂される中、宙ぶらりんの状態に置かれているルノーのF1エンジンプログラムの従業員たちが、イタリアGPで声を上げている。
ルノー・グループのルカ・デ・メオCEOは現在、フランスのヴィリー-シャティヨンで長年続けられてきたF1エンジンプログラムを放棄し、代わりにワークスチームのアルピーヌにメルセデスのカスタマーPUを搭載する計画に取り組んでいる。
■ルノーPUスタッフ、F1イタリアGPで平和的抗議デモを実施へ。首脳陣の”PU開発終了”判断に反発
この動きが現実のモノとなれば、47年にわたりF1で活躍してきたルノー製のエンジン/PUが姿を消すことになる。1979年以来、ルノーはエンジンメーカーとしてF1で178勝(タグ・ホイヤー名義での9勝を含む)を挙げ、特に90年代以降はウイリアムズ、ベネトン、レッドブルなどにエンジンを供給しF1の歴史を作ってきた。
7月下旬、ルノーのスタッフは現在のF1活動から離れたエンジン部門スタッフたちの『移行プロジェクト』を計画するための評価調査を行なうと知らされた。それ以来、ヴィリーのエンジン部門で働く334人の従業員たちは、ヴィリーをF1から引き離すいかなる決定にも反対しながら、自分たちの将来に不安を持ち続けている。
その声を広く世間に届けるため、同社のソーシャル・エコノミック・カウンシル(CSE)に所属する100人のスタッフがイタリアGPを訪れ、モンツァのメインスタンド2ヵ所に横断幕を広げた。
CSEは、ヴィリー-シャティヨンにいるルノーのエンジンスタッフの「大多数」も同時にストライキに突入し、「敬意を払いながらも断固として」不満を表明すると発表した。
FP1のスタート時、50人の従業員からなる2つのグループは全員立ち上がって横断幕を掲げたが、それでもコースに向かうアルピーヌのドライバー、エステバン・オコンとピエール・ガスリーに拍手を送った。
決断の期限は9月30日に迫っているが、関係者たちは、デ・メオが心を入れ替え、ヴィリーが長年受け継いできたF1のレガシーを引き継ぐことを願っている。
「今日来た目的は、話を聞いてもらうことだ」とヴィリーのターボチャージャー部門を管理するエンジニア、クレメント・ガンベローニはmotorsport.comに語る。
「我々は自分たちの声を十分に聞いてもらえず、それが公の場に出ていないという思いがある」
「我々は情熱的な人間だ。F1に参戦していること、そして自分たちのエンジンを搭載したマシンがサーキットを走っていることをとても誇りに思っている」
「でも我々が望んでいるのは何かと対立することではない。共にありたい。そして、ボスの考えを変えるために議論を持っていきたい。もし9月30日までそれが聞き入れられないのであれば、解決策も見つけていきたい」
「我々は2026年のエンジン、アルピーヌのプロジェクトをあらゆる形で全面的にサポートしている。我々はヴィリーがF1に本当の目的を持っていると考えている。F1がなければ、ヴィリーには何の目的もない」
掲げられた横断幕は、ルノーに「フランスF1の50年を守れ」と呼びかけ、ルノーエンジンを使ってチャンピオンを獲得したすべてのシーズンを列挙している。
しかしアルピーヌのパフォーマンス不足の責任の一端は現在のPUにあるのは事実だし、最後のタイトルが11年前の2013年だということもデ・メオが異なるやり方を模索している理由のひとつだ。
ルノーの2026年型PUの開発状況については様々な噂が飛び交っているが、メルセデスからのPU供給が実現に近づいている中で、デ・メオは自社プログラムへの投資を減らすことを正当化しようとしている。
しかしガンベローニは、ルノーの2026年型PUは正しい方向に進んでおり、導入までわずか1年半に迫った今、プラグを抜くのは不公平だと断固として主張する。
「今日のトピックは、ルカ・デ・メオが我々の主張を理解し、2026年用エンジンがダイノで走っている証拠を見ることで、彼の考えを変えることができるかもしれないということだ」
「言葉だけではない。事実があるんだ。我々の周りには、他のチームがやっていることをたとえ詳しくはなくとも、知っている人たちがいるんだ。しかし我々はエンジンに関して技術的な破壊力があることを知っているし、それをサーキットに持ち込みたい。なぜなら、ベストかベストのひとつになれると思うからだ」
「我々はリスクを冒し、それを実現してきた。我々には10年前にはなかった成熟度があり、ハイブリッド時代からF1での仕事の継続性がある。そして今、我々は成果を出せるレベルにある」
「そして今、我々は予算制限によって同等の武器を持っており、同じルールで同じゲームをプレーしている」
ヴィリー-シャティヨンは単なるF1エンジンの生産工場ではない。フランスの自動車産業とレースの伝統の一部だ。たとえルノーがこの施設とスタッフ全員をF1以外のプロジェクトに再配置すると約束したとしても、スタッフたちはこの施設がズタズタに引き裂かれると感じている。
「ルノーのトップが、ヴィリーの従業員の雇用を失うことはないと言っていることは知っている」とガンベローニは認める。
「しかしそれにはふたつの側面がある。ヴィリーでは多くの契約社員が働いている。もし9月30日までに決定が下されれば、彼らは年内に仕事がなくなる」
「またF1に関わっているすべてのサプライヤーのネットワークは、プロジェクト、部品、研究などの面で多くの損失を被ることになる」
「ヴィリーがF1に参加することを信じている。なぜなら1はコンピテンシーや技術、つまり魅力的なものをもたらしてくれるからだ。眠らないライバルがいるのだから、F1で戦うためにはトップでいなければならない」
「アルピーヌ・ブランドで他のプロジェクトもやりたければやればいい。しかし、それはF1とともに行なわなければならない」
モンツァのフリー走行でアルピーヌの走りを追うガンベローニと彼の同僚たちは元気そうに見えたが、ここ数週間、彼らにとって宝であるF1プログラムをめぐる不確実性が、ヴィリーのスタッフの士気に大きな打撃を与えていたことをガンベローニは認めた。
「(ルノーが代替案を模索しているという)発表が7月末にあり、それから(夏休みの)シャットダウンがあった」
「みんな少し落ち込んでいる。今はフル稼働しているとは言えない。なぜなら、ヴィリーの社会環境はかなり厄介だからだ」
「我々は情熱的な人間で、我々のエンジンが2026年のF1グリッドで走らないと言うのは本当に難しいことだ。しかし、それでも人々が働いているのは、自分たちがしてきたハードワークの成果を見たいからだ」
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