はじめに
看板モデルである911に関して、ポルシェは気まぐれのようなサフィックスをつけることはない。新たなグレード名が加わることはきわめて珍しい。
もっとも馴染みがあるだろうSは、1967年に初登場した。比較的新しいGT3もすでに四半世紀を経て、世代を重ねて定着している。目新しいと思えるものも、ポルシェの歴史をたどるとルーツのの古さに気付かされることになる。2016年には軽量化を図り走りを突き詰めたスペシャルモデルのRがお目見えしたが、これも1967~68年に少量生産されたレースモデルの911Rに由来している。
となると、今回テストする911S/Tはじつに特別な存在だ。少なくとも、これまで公には使われていない名を持つ911である。60年代に無駄を削ぎ落としたRが成功したのを受けて、ポルシェはこのアイデアをふくらませようと試みたが、新たなバリエーションの型式認証にかかるコストを理由に諦めている。
それに代わり用意したのが、モータースポーツのカスタマーに向けた911S用のレーシングキットと軽量化モディファイだ。その後、1970年にはロードカー向けにM471と銘打った同様のオプションを設定。ドイツ語でメア・ミンダー、英語にすればモア・レスと呼ばれるスパルタンなパッケージである。これらの俊敏でパワフルな仕様、公式には911Sのオプション装着車だが、非公式にはSTと呼びならわされている。
それから半世紀余り。サーキット志向のGT3やGT3RSの流れを汲みつつ、公道向けでとことんアナログにこだわったドライバーズカーに与えられたのがS/Tの名だ。922世代のS/TはカレラSのオプション装着車ではない。現在もポルシェのGTモデル開発に携わっているワルター・ロールに言わせれば、彼が乗った中でもベストなロードカーだという。2度の世界ラリー王者が絶賛するモデルの実力、確かめてみようではないか。
意匠と技術 ★★★★★★★★★☆
S/Tは、GT3RSの二卵性双生児みたいなものだ。この兄弟、基本的な部分はかなり近いが、学校を卒業してかたや軍へ入隊し、かたやムービースターになったというような違いがある。レン・シュポルトの名を持つほうは、ラップタイムを削るべく開発され、サーキット走行会には絶好のマシンだ。対するS/Tは、純粋なエンターテイナーである。
どちらも開発はポルシェのGT部門が担当しているが、S/Tのほうはニュルブルクリンクのタイムにこだわらなかった。あくまでも公道向けのクルマで、ドライビングを最大限楽しむのが目的だからだ。
まず注目すべきは、MTの採用だ。3ペダルのGT3と同じく6速だが、各ギアもファイナルもローギアード化されている。このため、2速で4.0Lフラット6を9000rpmまで回すと、GT3では130km/hに達するが、S/Tは119m/hまでしか届かない。
また、軽量な新型のダブルディスククラッチとシングルマスフライホイールを採用。GT3のMT車に比べ、クランクシャフトにかかる回転質量は10.5kg削減されている。これによりエンジン回転は、おそらくストリートリーガルな911としては、歴代最高レベルとなっている。
エンジンは最新のGTモデルと同じく、レース用ユニットをわずかにモディファイした3996cc自然吸気で、最高出力525psはGT3RSに肩を並べる。ドライサンプで、各シリンダーにスロットルバルブを備える。911の主流モデルに積まれる3.0Lターボと異なり、バルブの油圧調整機構は持たず、競技仕様のリジッド式ロッカーアームを用いる。鍛造ピストンやチタンコンロッド、クランク経由のオイル供給といった、ロードカーにはややオーバースペックな内容だ。
エンジンとギアボックスに続くのは、機械式LSD。タイヤはGT3と同サイズで、GT3RSよりはわずかにナローだが、すべてフロント20インチ・リア21インチというホイール径は共通だ。肉抜きされた鍛造マグネシウムホイールは、まるでコンセプトカーのように収まりがいい。写真で、そのみごとなスタンスは伝わらないかもしれないが。
軽量化も重要項目のひとつで、922世代で1400kgを切ると謳うモデルはほかにない。カタログ値は1380kgで、GT3ツーリングのMT車より38kg、PDK車より55kg軽い。64Lの燃料タンクを満たしたテスト車でも1408kgで、2010年に計測した997GT3RSより7kg軽いというのはちょっとしたサプライズだ。
この軽さをもたらしているのが、カーボンFRPの多用だ。GT3RSから流用したフロントフェンダーやドアをはじめ、凝ったロールケージやリアスタビライザー、リアアクスルとフロアパンの接続部を補強するシアーパネルなどがCFRP素材だ。スターターバッテリーも軽量アイテムで、GT3ツーリングより3kg軽い。
内装 ★★★★★★★★★☆
軽量ドアを開けると、古き佳き雰囲気と最先端が共存した装備と仕立てに迎えられる。ヘリテージデザイン仕様のインテリアはクラシックコニャックのレザーと同色でリッチな手触りのクロス、ブラックのピンストライプの組み合わせ。おそらく公道向けポルシェのキャビンとしては、918スパイダー以来もっとも印象的だ。
回転計は燐のような緑の光を放ち、初代911を想起させるロマンティックさがある。ドアオープナーにはレザーのループを用いる。
ただし、新しいアイテムはとくにない。標準装備のカーボンバケットシートも見慣れたもので、肋の脇がすっぽり収まって身体がガッチリとサポートされる。もっと日常使いに向いたシートも無償オプションで用意されるが、GT3RSと同じ3707ポンド(約76万円)のカーボン仕上げのロールケージを選択した場合はバケットとの同時装着となる。
われわれとしては、このロールケージは装備したくないところだ。そうすれば、後席がなくなったスペースを荷物置き場として使いやすくなる。深さのあるフロントトランクと合わせれば、フェラーリ・ローマのようなGTカーに遜色ない積載性を発揮してくれる。
走り ★★★★★★★★★★
エンジンをかけると、この世のロードカーの中でもとくに聞き間違えようがないものに数えられるサウンドに迎えられる。鼻にかかったようで、かすかに金属的なガラガラ音は、ポルシェの自然吸気フラット6ならでは。これに加えて、シングルマスフライホイールによる、不均一でスネアドラムのような響きが耳障りに鳴る。激しく機械的な音で、スポーティながら高級感のあるキャビンで聞くとギャップ萌えを感じる。
MTで自然吸気のスポーツカーを運転する楽しみを邪魔するものは、なにひとつ見落とされていない。ペダルの重さはドンピシャ。味気なく退屈なものではなく、それぞれの位置関係もバッチリ。クラッチのトラベルはかなり長いが、S/Tのシンプルなドライブラインがミートするポイントは、心配するほど狭くない。弾けるようで神経質な525psの911を発進させるのは、ベーシックなボクスターのように直観的。その助けになっているのは軽さだ。
スタートの速さで、人間の限界に挑むのは簡単ではない。1速では、ECUが5000rpmまでしか許容せず、後輪のミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2を圧倒して衝撃的なダッシュを決めることはできないのだ。0-97km/hは公称値どおりの3.7秒だったが、タイヤが十分に温まればもう少しいいタイムが出そうに思える。
おそらくこのタイム、いまどきの同じくらい高価なスーパーカーより1秒かそこらは遅い。しかしながら、この911のレゾンデートルが、数字よりも主観的な要素にあるのは明らかだ。
そうは言っても、2速で64-97km/hが1.3秒というのは、ランボルギーニ・アヴェンタドールSVJと同等。また、追い越したいけどシフトダウンが面倒くさいような場面に相当する、4速での48-113km/hは6.1秒で、もっとクロスレシオなGT3やGT3RSより速い。とはいえターボSなら、5万5000ポンド(約1133万円)安く、胃の中身が逆流しそうなパフォーマンスを得られる。
自らの手によるシフトチェンジは、もちろん深い満足感を味わえるし、S/T独自のキャラクターともなっている。たしかに、あるテスターはシフトの動きがちょっと短すぎ、このクルマの性格に合っていないという。しかし、ほかのテスターたちはこれが
おおいに気に入った。
確実だが、過度に力のいる動きではなく、思いどおりに決まる。3速に入れようとして1速に入れてしまうようなリスクはほとんどない。ギアボックスはなめらかだ。その証拠に、0-241km/hは18秒ジャストで、少なくとも3度は手動変速を行うのに、GT3のPDK車に0.3秒遅れるのみだ。
エンジンは傑作だ。推進力に関して、この4.0Lユニットは3000rpmまでたいしたことはない。ここで、低いエンジン音に加わる吸気音が激しくなりはじめる。チタンの内部パーツやシングルマスフライホイールが生む高い回転性能は、おそらくゴードン・マレーの最新作のような最高級のクルマでなければ太刀打ちできない。
パワーカーブは完璧なまでにストレートで、アイドリングから8500rpmまで一気に駆け上がる。その上の残り500rpmは、ただひたすら楽しい。
使い勝手 ★★★★★★★★☆☆
インフォテインメント
新車で買えるうちでもっともドライバー志向の911にふさわしく、ドライバーの正面には大きなアナログ式回転計が位置し、インフォテインメントシステムのタッチ式センターディスプレイはダッシュボードへきっちり収められている。
とはいえ現行911は、メーターパネルを完全にデジタル化したGTSを除き、すべてがそうなっている。ステアリングホイールにはスイッチも備わるが、目立たない程度だ。マルチメディアと空調の主要な操作系は、いずれもプッシュボタンやダイヤル、トグルスイッチだ。
画面そのものは画像がシャープで、Apple CarPlayとAndroid Autoがどちらも使える。足りないのはワイヤレス充電器くらいだろう。その代わり、アームレスト内の収納部にはUSB-Cポートが2口、助手席フットウェルには12Vソケットが設置される。
標準装備のオーディオは、8スピーカー・150Wのサウンドパッケージ・プラスだが、テスト車には1152ポンド(約24万円)のボーズ・サラウンドサウンドが搭載されていた。12スピーカー・570Wのシステムで、クラリティは非常によく、大音量にも対応している。
燈火類
テスト車は、ポルシェ・ダイナミックライトシステムを装備。テスト機会はなかったが、以前に体験したものは照射範囲も鮮明さもすばらしかった。
ステアリングとペダル
ブレーキの配置はど真ん中で、左右のペダルは直観的に操作できる位置。ステアリングコラムは、もう少し前後調整が効くといいのだが、それ以外に不満はない。
操舵/安定性 ★★★★★★★★★★
S/TがGT3と明らかに違い、現代最高レベルの公道向けドライバーズカーであることを明確にしているのは、サスペンションのチューンだ。
ダンパーはGT3ツーリングの2モード式だが、設定は刷新されている。英国においてGT3は、80km/h以下では本領を発揮できない。ストラットは、スプリングやダンパーがスムースに動き出すまでにかなりの負荷がかかるのを必要とする。スイートスポットはおそらく145km/hあたりで、それではちょっと問題がある。
その点、S/Tは違っている。確かな接地感や生まれ持った正確性とレスポンスのよさは、GT3にも見られるものだ。しかしながら、S/Tのサスペンションにはしなやかさが加わり、ボディの挙動にはこれまでGT部門の911が成し遂げられずにいた、高価そうな繊細さや優雅な表現力がもたらされている。
その結果は、忘れ難いものだ。独特の、ゆったりとした正確さや活力があり、911ならではのリア重心でややオーバーステア気味なバランスと相まって、走らせ甲斐のあるものになっている。また、荷重移動も多少わかりやすくなってるので、純粋に911らしいハンドリングをより簡単に楽しめる。
GT3RSでも同じようなことはできる。ただしそれはトラックモードを選び、ダンパーのバンプとリバウンドの制御を低めに設定した場合のみだ。それはちょっとばかり手がかかる。
ポルシェのエンジニアたちはまた、GT3の切りはじめが非常に敏感なステアリングと、ソフトめなサスペンションの組み合わせが、打てば響くような効果を生むことに気付いていた。そうなると、路面が悪い直線で飛ばすと、とっ散らかりやすくなる。
そこでS/Tの操舵系はややスローめに設定され、このクルマのほかの部分と同じく、ボディロールのレートと協調させている。じつにすばらしい。
快適性/静粛性 ★★★★★★★☆☆☆
乗り心地は快適でしなやかだが、遮音性は不十分だ。走行中はGT3やGT3RSと同じくらいうるさい。巨大な後輪は反響音を生み、サスペンションのロッドエンドベアリングや、遮音に効くはずの後席の不在は、相乗効果でマイナスにはたらく。今回走らせた限りでは大きな問題とは思えなかったが、長く付き合うなら、フェラーリ812スーパーファストや911GTSのほうが快適な長距離ドライブの相棒になってくれるだろう。
とはいえ、必要になりそうな装備は軒並みついていて、ミドエンジンのスーパーカーに比べれば視認性は高い。また、特別な一台でありながら、クルマに詳しくなければ普通の911に見える控えめなところも、目立ちたくないユーザーにはもってこいだ。
購入と維持 ★★★★★★★★☆☆
S/Tの生産は、911の登場年にちなんで1963台限定。GT部門の例に漏れず、23万1600ポンド(約4771万円)の本体価格を用意できても必ず手に入るわけではない。英国市場には総数の1/10が上陸する予定だが、すでに未登録車が45万ポンド(約9270万円)近い価格で販売されている。
幸運にも購入のチャンスを得て、このクルマのロードノイズに耐えられるのであれば、良好なツーリング燃費を享受できる。テストで計測した数字は10.9km/Lで、航続距離は700kmとなる計算だ。全高は通常の911より20mm低いが、2546ポンド(約52万円)でノーズリフターが追加できる。安心感を買うと思って、装着しておきたいところだ。
スペック
レイアウト
GT3RSと共通のボディパネルも用いるが、車体は後輪駆動の911やGT3と同様に、GT3RSやターボ、4WD系よりナローだ。
S/Tはフロントにダブルウィッシュボーンサスペンションを用いる911で唯一、後輪操舵を搭載しないモデル。39:61という前後重量配分は、DCTを積むGT3よりリア荷重が少ない。
エンジン
駆動方式:リア縦置き後輪駆動
形式:水平対向6気筒3996cc、ガソリン
ブロック・ヘッド:アルミニウム
ボア×ストローク:φ102.0×81.5mm
圧縮比:13.3:1
バルブ配置:4バルブDOHC
最高出力:525ps/8500rpm
最大トルク:47.4kg-m/6300rpm
エンジン許容回転数:9000rpm
馬力荷重比:380ps/t
トルク荷重比:34.4kg-m/t
エンジン比出力:132ps/L
ボディ/シャシー
全長:4572mm
ホイールベース:2457mm
オーバーハング(前):1042mm
オーバーハング(後):1073mm
全幅(ミラー含む):2020mm
全幅(両ドア開き):3790mm
全高:1279mm
全高(ドア開き):1770mm
足元長さ(前席):最大1100mm
足元長さ(後席):-mm
座面~天井(前席):最大1030mm
座面~天井(後席):-mm
積載容量:132L
構造:アルミ/スティールモノコック
車両重量:1380kg(公称値)/1408kg(実測値)
抗力係数:0.35
ホイール前/後:9.5Jx20/12.0Jx21
タイヤ前/後:255/35 ZR20 97Y XL/315/30 ZR21 105Y XL
ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2
スペアタイヤ:なし(パンク修理キット)
変速機
形式:6速MT
ギア比/1000rpm時車速〈km/h〉
1速:3.75/8.4
2速:2.38/13.4
3速:1.72/18.3
4速:1.34/23.7
5速:1.08/29.3
6速:0.88/36.0
最終減速比:4.30:1
燃料消費率
AUTOCAR実測値:消費率
総平均:7.3km/L
ツーリング:10.9km/L
動力性能計測時:4.0km/L
メーカー公表値:消費率
低速(市街地):4.2km/L
中速(郊外):7.4km/L
高速(高速道路):8.5km/L
超高速:8.4km/L
混合:7.3km/L
燃料タンク容量:64L
現実的な航続距離:468km
CO2排出量:313g/km
サスペンション
前:ダブルウィッシュボーン/コイルスプリング、スタビライザー
後:マルチリンク/コイルスプリング、スタビライザー
ステアリング
形式:電動機械式、ラック&ピニオン
ロック・トゥ・ロック:2.4回転
最小回転直径:10.4m
ブレーキ
前:410mm通気冷却式カーボンセラミックディスク
後:390mm通気冷却式カーボンセラミックディスク
制御装置:ABS
ハンドブレーキ:電動、センターコンソールにスイッチ設置
静粛性
アイドリング:62dBA
全開時(3速):96dBA
48km/h走行時:69dBA
80km/h走行時:75dBA
113km/h走行時:78dBA
安全装備
ABS/PSM/ESP/TC/HSA
Euro N CAP:テスト未実施
乗員保護性能:成人-%/子供-%
歩行者保護性能:-%
安全補助装置性能:-%
発進加速
テスト条件:乾燥路面/気温16℃
0-30マイル/時(48km/h):1.7秒
0-40(64):2.2秒
0-50(80):3.0秒
0-60(97):3.7秒
0-70(113):4.4秒
0-80(129):5.6秒
0-90(145):6.5秒
0-100(161):7.6秒
0-110(177):9.5秒
0-120(193):10.9秒
0-130(209):13.3秒
0-140(225):15.5秒
0-150(241):18.0秒
0-402m発進加速:11.9秒(到達速度:201.8km/h)
0-1000m発進加速:21.2秒(到達速度:253.3km/h)
ライバルの発進加速ライバルの発進加速
ポルシェ・カレラGT(2004年)
テスト条件:乾燥路面/気温20℃
0-30マイル/時(48km/h):1.7秒
0-40(64):2.2秒
0-50(80):2.9秒
0-60(97):3.7秒
0-70(113):4.4秒
0-80(129):5.2秒
0-90(145):6.3秒
0-100(161):7.4秒
0-110(177):8.7秒
0-120(193):10.2秒
0-130(209):11.8秒
0-140(225):13.6秒
0-150(241):15.8秒
0-402m発進加速:11.6秒(到達速度:207.6km/h)
0-1000m発進加速:−秒(到達速度:−km/h)
中間加速
20-40mph(32-64km/h):1.8秒(2速)/2.6秒(3速)/3.7秒(4速)/4.8秒(5速)/7.0秒(6速)
30-50(48-80):1.5秒(2速)/2.4秒(3速)/3.3秒(4速)/4.5秒(5速)/6.0秒(6速)
40-60(64-97):1.3秒(2速)/2.2秒(3速)/3.1秒(4速)/4.2秒(5速)/5.8秒(6速)
50-70(80-113):1.4秒(2速)/1.9秒(3速)/2.9秒(4速)/4.1秒(5速)/5.6秒(6速)
60-80(97-129):1.8秒(3速)/2.6秒(4速)/4.0秒(5速)/5.6秒(6速)
70-90(113-145):1.9秒(3速)/2.4秒(4速)/3.7秒(5速)/5.8秒(6速)
80-100(129-161):2.0秒(3速)/2.5秒(4速)/3.4秒(5速)/5.6秒(6速)
90-110(145-177):2.6秒(4速)/3.3秒(5速)/5.3秒(6速)
100-120(161-193):3.4秒(5速)/5.1秒(6速)
110-130(177-209):3.6秒(5速)/5.2秒(6速)
120-140(193-225):3.9秒(5速)/5.4秒(6速)
130-150(209-241):4.4秒(5速)/3.3秒(6速)
140-160(225-257):5.4秒(5速)
制動距離
テスト条件:乾燥路面/気温16℃
30-0マイル/時(48km/h):8.0m
50-0マイル/時(64km/h):21.2m
70-0マイル/時(80km/h):42.5m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:2.37秒
ライバルの制動距離ポルシェ・カレラGT(2004年)
テスト条件:乾燥路面/気温20℃
00-0マイル/時(48km/h):8.8m
50-0マイル/時(64km/h):25.6m
70-0マイル/時(80km/h):52.1m
各ギアの最高速
1速:75.6km/h(9000rpm)
2速:119.1km/h(9000rpm)
3速:165.8km/h(9000rpm)
4速:212.4km/h(9000rpm)
5速:263.9km/h(9000rpm)
6速(公称値):299.3km/h(8321rpm)
6速・70/80マイル/時(113km/h/129km/h):3131rpm/3579rpm
結論 ★★★★★★★★★★
ポルシェが現行911GT3を発売した際、わずかながら失望したのは、公道向けでないところがあることに気づいたからだ。優先事項は、ラップタイムを稼ぐことだった。ウイングのない、おとなしめのツーリング仕様も同じように俊敏だったが、サーキットのようにスムースな路面でないと暴れがちで、992世代のGT3の容赦ないキャラクターは変わらないことを知った。
このときは、好機を逃したように感じられた。あのクルマはおおむね、ナンバー付きでは最高に楽しいクルマだった。いや、いまでもそうだろう。高回転型のフラット6に、本気で走らせたときのアゴが落ちるようなスロットルでのアジャスト性、高品質なキャビンをあわせ持つ現行GT3は、完璧に近い。われわれとしては、ポルシェのGT部門が速さを追求したことだけが、玉に瑕となったクルマだといいたい。
911S/Tは、スローなクルマとは言い難いかもしれない。しかしながら、これまででもっともシリアスなGT3の基本設計に、部分的にGT3RSのノウハウを取り入れ、軽量化を施しつつ公道重視のサスペンションを組んだそれは、究極の911といっていい。
担当テスターのアドバイス
リチャード・レーンS/Tの最高速は意図的に300km/h以下へ抑えているが、ギアリングから計算すると320km/hを超えることが可能だ。少し前に310km/h出るとされる後輪駆動の992GTSでアウトバーンを走った際には、メーター読みで320km/hを出した。だから、S/Tもそれができるのではないかと思っている。
マット・ソーンダースレーステックスやアルカンターラを使っていないGT部門のポルシェに乗ったのははじめてだ。しかし、S/Tのスムースレザーを巻いたステアリングホイールは、GT3のように強烈な方向転換と相まって、かなり好きになった。
オプション追加のアドバイス
ショアブルーはS/T専用色で、見栄えはとてもいい。オーダー塗装ののペイントtoサンプルは1万2500ポンド(約258万円)。ヘリテージデザインパッケージも悪くないが、やりすぎ感もある。センターのドリンクホルダーは218ポンド(約4.5万円)取られる上に、置いた飲み物の容器がシフトチェンジの邪魔になる。
改善してほしいポイント
・もっと遮音性を高めると、GTカーとしての改善が見込める。
・重量を抑えつつ、ケイマンGTSの4.0Lユニットに用いるデュアルマスフライホイールを装着してほしい。12万5000ポンド(約2575万円)くらいで、911SRとか銘打って売ってもらいたい。
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