現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > センチュリーと比肩する国産最高級セダン! プレジデントの栄枯と日産の盛衰

ここから本文です

センチュリーと比肩する国産最高級セダン! プレジデントの栄枯と日産の盛衰

掲載 22
センチュリーと比肩する国産最高級セダン! プレジデントの栄枯と日産の盛衰

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

ロッキー&ライズのe-スマートHVは安かろう悪かろう!? コスパ抜群か徹底検証してみた!!

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回は日産 プレジデント(1965-2010)をご紹介します。

文/伊達軍曹 写真/NISSAN

[gallink]

■トヨタ センチュリーと双璧をなした日産のフラッグシップサルーン

 初代は官公庁の公用車あるいは企業の役員が乗る社用車を想定して専用設計され、当時の佐藤栄作首相も公用車として使用した。

 1970年代は競合であるトヨタ センチュリーの約2倍は売れる人気車種だったが、1980年代に逆転され、1990年代以降は「専用設計ではなくなった」ということで求心力を失い、結果的に命脈が途絶えることになった日産の最高級乗用車。

 それが、日産 プレジデントです。

 セドリック スペシャルの後継車種として開発された初代プレジデントは、当時の国産乗用車としては車体・エンジンともに最大サイズとなったフラッグシップサルーン。

初代プレジデント(1965-1973)。トヨタ 初代センチュリーが登場するのは1967年、プレジデント登場の2年後となる

 戦後型としては初めて専用設計された3ナンバー車でもありました。

 搭載エンジンは当時国産最大の4Lを誇る日産初のV8 OHVと、セドリック スペシャル用を改良した3L直6 OHV。

 最高級グレードの「タイプD」は国産車初のパワーステアリングやパワーウィンドウ、パワーシートやクーラー、世界初のリモコン式フェンダーミラーなどを標準装備。300万円という車両価格は、旧セドリック スペシャルの2倍以上でした。

 初代プレジデントは1973年にビッグマイナーチェンジを受け、その後もV8エンジンの拡大や直6エンジン廃止などの改良と仕様変更を行いつつ、1990年まで製造され続けました。

 そして日産 プレジデントは1990年に初のフルモデルチェンジが行われましたが、2代目プレジデントは初代と違って専用設計ではなく、「インフィニティQ45」をベースとするものでした。

インフィニティQ45をベースとした2代目プレジデント(1990-2002)。なお、1973年のビッグマイナーチェンジをもって2代目とする見方もある

 インフィニティQ45のホイールベースを150mm延ばし、グリルレスだったQ45にフロントグリルを与えて雰囲気を変え、豪華な装備を与えたのが2代目プレジデント。それは、言わば「インフィニティQ45の上級車種」でした。

 それでも「最新の設計である」という点が評価され、トヨタ センチュリーとのセールス競争では逆転に成功しますが、1997年にトヨタ センチュリーが新型になると再び劣勢となり、2002年には生産終了となりました。

 そして1年の空白期間を経て3代目の日産 プレジデントが登場するわけですが、これも、北米で3代目インフィニティ Q45として売られていた4代目の日産 シーマをベースとするものでした。

 カルロス・ゴーン氏の下で経営再建中だった当時の日産は、3代目プレジデントのホイールベースを延長することもできず、押し出しの強いデザインにしたり、遮音材を厚くしたりはしましたが、ボディ自体はシーマと共通。

 助手席格納シートを装備したり、後席VIPパックとしてバイブレーター付きリラックスシートを装備するなどの苦肉の策は行われましたが、結局は2010年、ベース車である4代目シーマとともに生産終了に。

 日産 プレジデントの歴史は誕生から45年で幕を閉じることになりました。

■「フラッグシップ」ゆえに…経営難に陥った日産の選択

 トヨタ センチュリーに先んじて「専用設計の最高級乗用車」という存在を確立させた日産 プレジデントが、言ってはなんですがショボいモデルチェンジを経て生産終了となった理由。

 それは、言うまでもなく「当時の日産が経営不振だったから」ということになるでしょう。

 日産 プレジデントやトヨタ センチュリーのような車は、「何台売れた」とか「それによる利益がいくらだった」「黒字だった」「赤字だった」みたいな話とはまったく無関係な部分に、その存在理由があります。

 メーカーがプレジデント的あるいはセンチュリー的な車を存在させる理由は、「メーカーとしてのステイタス」あるいは「面子」を保つためにほかなりません。

4代目シーマをベースとした3代目プレジデント。国内最後の日産の8気筒エンジン搭載車となった

 プレジデント事業あるいはセンチュリー事業単体でいくら赤字を垂れ流そうが、「あの車は本当に凄い!」「超絶だ!」「さすが○○社だ!」「天皇陛下も乗ってらっしゃる!」みたいな評価になりさえすれば、それだけでもうすべてOKなのです。

 だからこそトヨタは2018年にもセンチュリーのフルモデルチェンジを行い、今もなおセンチュリーをラインナップし続けています。トヨタには、それを行うだけの余力があります。

 しかし日産には、残念ながらそんな余力はありませんでした。

 お茶を濁すようなモデルチェンジを行い、二度目のモデルチェンジでは、濁したお茶をさらに薄めて提供するのが精一杯だったのです。

 それは残念なことではありました。しかしいつの日か、日産の経営状況が再び万全となったあきつきには、トヨタ センチュリーもビビるほどの最高級専用設計乗用車を――たぶんそれはEVになるのでしょうが――作ってくれることを、それを買う可能性は100%ない筆者ですら期待したいとは思っています。

■日産 プレジデント(初代) 主要諸元
・全長×全幅×全高:5280mm×1830mm×1490mm
・ホイールベース:2850mm
・車重:1990kg
・エンジン:V型8気筒OHV、4414cc
・最高出力:200ps/4800rpm
・最大トルク:34.5kgm/3200rpm
・燃費:5.5km/L(10モード)
・価格:506万2000円(1989年式 ソブリンVIP 前席電動セパレートシート)

[gallink]

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
くるまのニュース
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
AUTOCAR JAPAN
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
AUTOCAR JAPAN
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
AUTOSPORT web
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
Auto Messe Web
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
乗りものニュース
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
レスポンス
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
AUTOSPORT web
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
motorsport.com 日本版
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
くるまのニュース
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
VAGUE
変化と進化──新型ロールス・ロイス ゴースト シリーズII試乗記
変化と進化──新型ロールス・ロイス ゴースト シリーズII試乗記
GQ JAPAN
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
レスポンス
メルセデス、ラスベガス初日の好調は「なんでか分からない」予選に向けて”ダスト乞い”?
メルセデス、ラスベガス初日の好調は「なんでか分からない」予選に向けて”ダスト乞い”?
motorsport.com 日本版
Moto2チャンピオンに輝いた小椋藍、日本人初となる『トライアンフトリプルトロフィー』を受賞
Moto2チャンピオンに輝いた小椋藍、日本人初となる『トライアンフトリプルトロフィー』を受賞
AUTOSPORT web
フィアット新型「600e」と暮らしてみたら「500L」との2台体制を夢見てしまい…ファミリーカーとしてオススメの1台です【週刊チンクエチェントVol.47】
フィアット新型「600e」と暮らしてみたら「500L」との2台体制を夢見てしまい…ファミリーカーとしてオススメの1台です【週刊チンクエチェントVol.47】
Auto Messe Web
なんとも物騒な「煤殺し」ってなんだ!? トラックドライバー御用達アイテムの正体とは
なんとも物騒な「煤殺し」ってなんだ!? トラックドライバー御用達アイテムの正体とは
WEB CARTOP
東京海上日動、顧客連絡先不明の代理店を新たに2社確認 合計124社に
東京海上日動、顧客連絡先不明の代理店を新たに2社確認 合計124社に
日刊自動車新聞

みんなのコメント

22件
  • 日産が赤字垂れ流しでも維持を見せて
    プレジデントを復活させる事なんて
    金輪際あり得ないだろう。
  • フーガのケツを少し伸ばしただけのシーマすら廃止の日産に、そんな余裕があるワケないよな
    ホンダだってフラッグシップのレジェンドをやめちゃったし、もうトヨタ以外は終わってるな
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2008.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

68.02070.0万円

中古車を検索
センチュリー(セダン)の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2008.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

68.02070.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村