■日本でヒットして外車のイメージを変えた輸入車を振り返る
日本では今から110年ほど前、明治時代の終わりから自動車製造をおこなってきた長い歴史があり、第二次大戦後には諸外国と並ぶ自動車大国へと成長しました。一方で昭和の時代は、日本の自動車市場は欧米とは少し異なる独特なマーケットだったといえます。
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かつて日本では輸入車を「外車」と呼び、富裕層のためのクルマというイメージが強かった頃があり、実際に国産車と比べ非常に高額だったため、庶民では手が届かないモデルがほとんどでした。
しかし、昭和の終わりから平成初期にかけて起こったバブル景気と、急激な円高、1989年の消費税導入による物品税廃止と自動車税制の改正が重なったことで、輸入車が一気に普及。
現在は輸入車が特別な存在ではなく、国産車と十分に競合するモデルも数多く存在するようになりました。
そこで、輸入車のイメージを大きく変えたといえる、日本でヒットしたモデルを3車種ピックアップして紹介します。
●メルセデス・ベンツ「190E」
かつてメルセデス・ベンツのクルマは、日本だけでなく世界各国でセレブに愛される高級車の代表的存在でした。
しかし、BMW「3シリーズ」のようなエントリーモデルを出すことでさらなる顧客拡大を図るため、1982年に「190シリーズ」が欧州で発売されました。
190シリーズは当時メルセデス・ベンツのラインナップのなかでもっともコンパクトなモデルとして、日本では1985年から正規輸入を開始。
初期のスタンダードグレードである「190E」では、ボディサイズが全長4420mm×全幅1678mm×全高1390mm、エンジンは最高出力115馬力の2リッター直列4気筒を搭載したことで5ナンバー登録を実現。
1985年当時は、まだ3ナンバー車の自動車税が3リッター以下で8万1500円と非常に高額だったことから、190Eの登場は大いに歓迎され、一躍ヒット作となります。
一方で、エントリーモデルといっても500万円前後の価格帯は5ナンバー車としてかなり高価でしたが、やはりメルセデス・ベンツというステータスは大いに魅力的で、セレブのセカンドカーとしてだけでなく、中流意識の高まりから多少無理をしてでも手に入れたいというユーザーも多く存在しました。
また、品質やドライブフィーリングは同クラスの国産車よりも高く、エントリーモデルとはいえメルセデス・ベンツ流のクルマづくりに妥協が無かったのも人気となった要因のひとつです。
1990年代になると円高傾向が顕著になったことと物品税の廃止から、300万円台のエントリーグレードが追加されるなど、さらに販売台数を伸ばしました。
190シリーズは日本でメルセデス・ベンツ車の普及に貢献し、同社のクルマのイメージを大きく変えた偉大なクルマといえるでしょう。
●フォルクスワーゲン「ゴルフII」
第二次大戦後のドイツ復興の礎になったクルマといえば、フォルクスワーゲン「タイプ1(ビートル)」が挙げられ、日本も含め世界中で人気を博しました。
そして、1974年にはタイプ1の後継車として、新世代のFFコンパクトカーの初代「ゴルフ」が誕生。優れたデザインのコンパクトなボディに広い室内と高い経済性を実現し、後にFFコンパクトカーのベンチマークとなりました。
日本でも比較的安価な輸入車として当時は珍重されましたが、タイプ1ほどのヒットには至っていません。
そして、1983年に2代目が登場し、日本では1984年から輸入されました。当初、日本仕様では1.8リッター直列4気筒ガソリンエンジンを基本に、1.6リッターディーゼルをラインナップ。
価格は200万円台前半からと、同セグメントの国産車よりも70万円から100万円ほど高額でしたが、高速道路での安定した走りと乗り心地の良さ、長時間のドライブでも疲れにくい硬めのクッションを採用したシート、アクセルやハンドルのしっとりとした操作性など、各部の質感は当時の国産車のレベルを大きく上まわっていました。
もともと欧州では安価な大衆車として開発されたゴルフですが、クラスを超えた性能は後の国産メーカーの自動車開発に多大な影響を与えたといいます。
この2代目ゴルフは日本でプレミアムコンパクトカーの先駆けとなり、フォルクスワーゲンブランドのイメージを大きく変えた1台といえるモデルでしょう。
■RVブームでヒットしたアメ車とは!?
●ジープ「チェロキー」
FCA傘下のジープといえば、軍用車を先祖にもつ「ラングラー」に代表されるクロスカントリー4WDなど、SUVに特化したメーカーとして知られ、現在は日本でも好調なセールスを続けています。
このジープのモデルが日本で普及するきっかけとなったのが、ちょうどRVブームが起こった1990年代初頭にヒットした「チェロキー」です。
初代チェロキーは1974年には発売され、日本でも正規輸入されたのは1984年に登場した2代目からでした。
外観はステーションワゴンタイプのモノコックボディで、直線基調のクロカン車をイメージしながらスタイリッシュなフォルムが印象的で、フロントグリルは伝統の「7スロット」を採用。
当初、日本で販売されたグレードは「ラレード」と「リミテッド」という400万円台中盤以上と比較的高額なモデルに限られていました。
しかし、1994年からエントリーグレードの「スポーツ」を追加ラインナップし、1ドル100円を割り込む円高傾向だったことから200万円台の価格と、右ハンドルを設定したこと、RVブームの余波もあり、たちまち人気車種となります。
また、全長4400mm×全幅1770mm×全高1650mm(スポーツ)と、アメリカ車ながら日本の道路事情でも使いやすいコンパクトな車体と、トルクフルな4リッター直列6気筒エンジンを搭載していたことも、ヒットにつながった要因のひとつではないでしょうか。
なお、ホンダは1995年に初代「CR-V」を発売するよりも前、自社でRVを生産していなかったことから、チェロキーをホンダディーラーで販売していましたが、これも日本でチェロキーの存在を広めることに貢献したといえます。
※ ※ ※
かつて、輸入車は富の象徴といえる存在でしたが、今では100万円台から手に入れることができ、もはや特別な存在ではありません。
一方で、輸入車には独自のフィーリングが色濃く残っているモデルもあり、日本とは異なる設計思想で開発されたことが感じられます。
確かに、日本車はさまざまな性能が優れ、日本の道路環境やニーズにマッチしたモデルが多いのですが、個性的な輸入車の乗り味を体験してみるのも面白いと思います。
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