車内が広く実用性では有利 雰囲気もいい
車内空間は、前編で触れた通りアルファ・ロメオ・トナーレの方がアウディQ3より広い。荷室容量も380Lに対し385Lと僅かに大きく、実用的な形状ということもあって、数字以上にファミリーカーとしての使い勝手は良さそうだ。
【画像】アルファ・ロメオ・トナーレ アウディQ3 欧州で競合する小型ハイブリッドSUVと比較 全138枚
長い伝統を持つイタリアン・ブランドの凝り固まった姿勢が、解きほぐされた一片が現れているのかもしれない。Q3の車内は、ハッチバックのA3と比べて目立った違いまでは得られていない。実用性で勝るのはトナーレだろう。
インフォテインメント・システムは、グラフィックの精細さでQ3がやや有利。インターフェイスの構造も理解しやすい。
トナーレのインテリア素材の質感や、内装トリムの光沢感は、若干一貫性に欠ける。そのかわり、印象を高めるアンビエントライトが実装されている。フロントシートの調整域はやや狭く、サポート性はもう少し高くてもいい。
インテリアが与える印象はアルファ・ロメオらしくもある。人間工学的に整理された設計や、褒められる全体的な仕上げ品質、個性的なデザイン処理など、雰囲気は悪くない。
ディティールも凝っている。アルファ・ロメオの紋章のモチーフが、目立たないところにも展開されていたりする。
筆者が気になった点は、左ハンドル車でも、メーターパネルの中央とステアリングホイールの中心線が一致していないこと。2023年の殆どのクルマは、この問題を解決済みなのだが。
ブランドらしくないドライビング体験
Q3のインテリアの設えも、水準は決して低くない。このブランドらしく素材の質感は高く、ソリッド感がある。
だが、概してアウディのコンパクトモデルは、格上モデルのように入念な作り込みや高級感までは備わらないことが多い。トナーレと比較して、明らかな強みといえるほどではないだろう。
さて、静止した状態でドイツの競合に肉薄できた過去のアルファ・ロメオでも、肝心の走りとなると及ばないことが多かった。しかし今回はプラグイン・ハイブリッド(PHEV)のSUVだから、異なる結果でも不思議ではない。実際、2台の個性が大きく現れていた。
トナーレは、ドライバーズカーとしての魅力をストロングポイントにするモデルではない。Q3と同様に。重い駆動用バッテリーを搭載し、車重は1835kgとボディサイズに対して軽くない。
もちろんPHEVだから、駆動用バッテリーだけで走行可能な能力を得ている。雪が舞う寒い環境でも、トナーレは48kmほど走れることを確認した。Q3は約32kmと、その差は小さくない。
ドライビング体験は、正直なところブランドらしくない。エンジンサウンドは聴き応えが薄く、駆動用モーターが組み合わされたパワートレインは反応がやや鈍い。速めの速度でカーブへ侵入すると、身のこなしには重たさがにじみ出る。
実力を発揮しにくい2つのパワートレイン
少なくとも、ステアリングの反応はアルファ・ロメオ的。反応がクイックで、特に切り始めには鋭さがある。カーブでのボディロールも巧みに抑え込まれている。
比較すると、Q3のステアリングはスローでヘビー。回頭性も意欲的とはいえず、ボディロールも小さくない。
ひとたびコーナーに飛び込めば、トナーレは輝き出す。しかし、ドライブモードをダイナミックに切り替えても、プラグイン・ハイブリッドのパワートレインが鋭く反応することはない。
駆動用モーターは、1.3L 4気筒ターボエンジンを積極的にアシストするようには感じられない。むしろ存在感が薄い。
トナーレの場合は、ガソリン・ターボエンジンはフロントアクスルを、駆動用モーターはリアアクスルを、それぞれ独立して動かす。一方のQ3 45 TFSIe Sラインでは、駆動用モーターがトランスミッションに内蔵され、協働して前輪を動かしている。
このレイアウトが影響してか、アクセルペダルの操作に対し、2つのパワートレインがチームワークを発揮させにくいのだろう。駆動用モーターのパワーを活かし、コーナーから鋭く立ち上がりたい場合、フロント側のエンジンも相応に頑張らせる必要がある。
トナーレを質感良く走らせたいなら、穏やかな速度域で駆動用モーターだけを働かせるのが1番。駆動用バッテリーの残量がある限り。
充分な商品力を備えるトナーレ
結果として、総合での最高出力が280psもあるトナーレながら、245psのQ3より速いとは実感しにくい。滑らかなパワートレインの制御により、後者の方が運転しやすく感じられ、速さや快適さでは印象が良いようだ。
Q3の1.4L 4気筒ガソリン・ターボエンジンはしっかり隔離され、負荷が掛かっても目立つノイズを車内には届かせない。1.3L 4気筒ターボの仕事ぶりを実感させる、トナーレとは異なる。1740kgの車重を感じさせない、安定した乗り心地も備えている。
新しいアルファ・ロメオの実力を、ドイツのライバルと対峙させた今回の比較。直接乗り比べてみると、走りではQ3が有利であることは否定できないだろう。総合力で届いていない。
とはいえ、トナーレはより長い駆動用バッテリーでの走行可能距離を叶えている。ブランドのスピリットを受け継いだ、キラリと光るコーナリングも味わえる。
少なくないターゲット層が、新しいトナーレを選ぶと思う。このエンブレムに惹かれたのなら、比較結果など些細なことだと片付ける人も多いはず。PHEVのコンパス 4xeがジープとして売れるように、トナーレにも商品力は充分ある。
本当のアルファ・ロメオとして、重要なポイントは抑えられていないかもしれない。アルフィスタの思いとは、別の方向にあるかもしれない。しかし、今後のブランドにとって重要な新モデルであることは間違いない。
アルファ・ロメオ・トナーレとアウディQ3のスペック
アウディQ3 45 TFSIe Sライン(英国仕様)
英国価格:4万4585ポンド(約717万円)
全長:4484mm
全幅:1856mm
全高:1585mm
最高速度:209km/h
0-100km/h加速:7.3秒
燃費:50.0-52.6km/L
CO2排出量:44g/km
車両重量:1740kg
パワートレイン:直列4気筒1395ccターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:10.4kWh
最高出力:245ps/5000rpm(システム総合)
最大トルク:40.7kg-m/1550rpm(システム総合)
ギアボックス:6速オートマティック
アルファ・ロメオ・トナーレ PHEV Q4ヴェローチェ(欧州仕様)
英国価格:4万8495ポンド(約780万円)
全長:4530mm
全幅:1840mm
全高:1600mm
最高速度:206km/h
0-100km/h加速:6.2秒
燃費:71.4-76.9km/L
CO2排出量:32-38g/km
車両重量:1835kg
パワートレイン:直列4気筒1332ccターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:12.0kWh
最高出力:280ps/5750rpm(システム総合)
最大トルク:40.7kg-m/1850rpm(システム総合)
ギアボックス:6速オートマティック
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