上級志向を目指したレンジローバー
AUTOCARでランドローバー・レンジローバーとベントレー・ベンテイガを乗り比べするのは、今回で3回目。だが今回は、これまで以上に重要な比較となる。5代目となる新型レンジローバーは大幅に価格帯が上昇し、ベンテイガの領域に迫ったためだ。
【画像】快適至極 ベンテイガとレンジローバー 英国の高級SUVは他にも DBX707とカリナン 全124枚
ジャガー・ランドローバー社として同グループに属するブランド、ジャガーは、ラグジュアリーサルーンだったXJの後継モデルを準備しなかった。そのため、ランドローバーのフラッグシップモデル、レンジローバーはより上級志向を目指すことになった。
さかのぼれば、繁華街も堂々と走れるオフローダーとして開発されたランドローバーだったが、今ではオフロードも走れる超高級SUVへ進化した。そこで条件を揃えるべく、V型8気筒エンジンを搭載したモデルを揃えてみた。
グレートブリテン島の中部、コベントリーを拠点とするランドローバーからは、レンジローバー P530 ファーストエディション。トップグレードのオートバイオグラフィーに匹敵する内容が与えられている。
搭載するV8エンジンは、BMW譲りの4.4Lツインターボ・ガソリン。ジャガー由来だった、伝統のスーパーチャージド・ユニットからの交代となる。新型としては唯一、まったく電動化技術を搭載しないが、英国を代表するSUVとの相性はいがだろう。
あらゆるシーンが想定される高級SUV
グレートブリテン島の中西部、クルーに拠点を置くベントレーからは、ベンテイガ Sをお借りした。エンジンは4.0LのV8ツインターボで、最高出力549psを発揮するのは通常のベンテイガと変わらない。
この「S」では、スポーティなサスペンションとエグゾーストが与えられ、インテリアもアルカンターラで仕立てられる。ボディキットも専用品をまとう。
オーダーメイドに近い注文が可能なベントレーには、トリムグレードのような設定はない。それでも試乗車には、一連のオプションメニューが追加されていた。
ネイム社製のオーディオ・システムは、6725ポンド(約111万円)。ナイトビジョンにヘッドアップ・ディスプレイ、運転支援システムなどがセットになった、ツーリング・スペシフィケーションが6480ポンド(約104万円)なり。
このクラスのSUVとなると、あらゆるシーンを想定しなければならない。日々の通勤や送迎だけでなく、家族での週末レジャーや休暇の長距離旅行など、オンロードもオフロードも平然とこなす必要がある。ユーザーによっては、運転手を雇う人もいるはず。
柔らかいレザーシートにツヤツヤのウッドパネル、心地良いエアコンの制御に至るまで、秀でた快適性は不可欠。それでいて、渋滞気味の市街地を抜けたり、流れの速い郊外の道を散策するのに、優れた使い勝手も必要といえる。その仕上がりを比較していこう。
どちらも高級感の漂うインテリア
ベントレー・ベンテイガは、既に発売から数年が経過している。現代的な機能のなかに、若干前世代的な要素が組み合わされている。インテリアを観察すればプラスティック製のスイッチ類も発見できるが、高級感に溢れている。
時間を掛けて細部へ目を配ると、フォルクスワーゲン・グループに属する製品だということも見えてくる。ステアリングコラムから伸びるレバーやドアミラーの調整パネルは、アウディの車内でも見覚えがある。
レンジローバーのインテリアと比べて、高級に感じる部分は多い。反面、そうではない部分も混在する。
ベンテイガから乗り換えると、レンジローバーの車内はより量産車的。とはいえ、ステアリングコラムに配された金属の部品や、レーザーの柔らかいシート、ウッドパネルなど不足はまったくない。モダンなハイテク感も漂っている。
少々タッチモニターへ依存し過ぎかもしれない。機能を最新の状態に保ち、グラフィカルなメニューを表示できるという点では優れている。製造コストも落とせる。だが、操作性という点では満たされない。
レンジローバーから乗り換えない限り、タッチモニターによるインターフェイスは悪くない。アップデートが進んでおり、アウディ由来となるベントレーのシステムより反応は素早い。表示も鮮明だ。
しかし、エアコンの送風位置やシートの角度の調整も、味気ないモニターを介する必要がある。細かい加工が施された、ベントレーのノブやボタンに触れた方が特別感は高い。
他車を見下ろしながら路上を滑空するよう
長年に渡ってレンジローバーを培ってきた、長所は受け継いでいる。テールゲートは電動で上下に分割して開き、ピクニック・ベンチになる。ドライビングポジションも素晴らしい。大きいガラスエリアと高い着座位置による、広々とした視界も変わらない。
ベントレーも同様に目線の位置が高くコマンドポジションへ近いものの、ウエストラインも高く、ダッシュボードが大きい。並べてみると、インテリアに包まれている印象の方が強い。
どちらも、美しいキャビンがしなやかなエアサスペンションに支えられ、他車を見下ろしながら路上を滑空しているような、独特で圧倒的な優越感へ浸れる。魅力以外の何物でもないだろう。
そしてボディサイズは巨大。狭い市街地へ紛れ込むと、高級住宅街の一角のような景色になる。だが、塗装に傷をつけそうな生け垣の剪定された枝が、すぐ横へ迫る。駐車場所も必然的に選ぶ。
今回はコベントリーとクルーの中間付近にある、シュロップシャーという小さな街で取材することにした。広々とした片側2車線の道路もあるとはいえ、レンジローバーには後輪操舵システムが備わり、狭い道でも取り回しはしやすい。
リアタイヤは最大7度まで向きを変え、最小回転直径は11.4m。実に、プジョー308と同じくらい小回りがきく。大型ラグジュアリーSUVの概念を変えるといってもいい。
この続きは後編にて。
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