全7戦のシーズンフィナーレとして、10月14~15日にスペイン・バルセロナで開催された2022年TCRヨーロッパ・シリーズ最終戦は、週末にわずか7点を獲得するだけで初チャンピオンが確定する圧倒的優位を築いて乗り込んだフランコ・ジロラミ(コムトゥユーPSSチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)が、予選で4番手グリッドを確保し、今季最後の2ヒートを残して早々にシリーズタイトルを確定する展開に。
その一方、ジロラミの所属するアウディスポーツトップカスタマーのコムトゥユー・レーシングに対し、同じくヒョンデ・モータースポーツの強豪チームとして参戦するターゲット・コンペティションが、日曜に「知的財産の盗難」を告発する非難の声明をリリース。これにチャンピオンチームが「断固否定」の態度で応じるなど、スキャンダル勃発の泥試合と化す後味の悪い状況に陥った。
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僚友トム・コロネル(コムトゥユーDHLチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)も交え、今季のシリーズを牽引してきたポイントリーダーのジロラミは、同じくタイトル候補の元王者ジョシュ・ファイルズ(ターゲット・コンペティション/ヒョンデ・エラントラN TCR)に対し、大量89点差をつけてバルセロナに到着した。
この週末に獲得可能な最大ポイントは96点となり、そのうち16点が予選で得られるだけに、FP1から気合充分の最速を記録したジロラミに対し、コロネルやファイルズ、そしてFP2最速のジャック・ヤング(プロフィ・カー・チームハルダー/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)らがどう対抗するかに注目が集まった。
こうして迎えた予選Q1では、終盤2度のタイム更新を果たしたヤングが先行し、コロネルが2番手タイムで追随。しかし3番手にはファイルズを抑えてジロラミが続く展開となり、続くQ2は早々にファステストを叩き出したヤングに対し、コロネルが0.402秒差で追い縋ると、地元スペイン出身イシドロ・カエハス(ボルケーノ・モータースポーツ/クプラ・レオン・コンペティションTCR)が3番手に飛び込んでくる。
これに対し、戦略的なレイトアタックを敢行したコムトゥユー・レーシングは、セッション残り3分半でニュータイヤを装着したジロラミをトラックに送り出す。ギリギリでコントロールラインを通過したアウディが最後のアタックに入ると、シリーズ連覇も経験するファイルズのタイムも撃破し、2列目4番グリッドを奪取。この瞬間に追加の7ポイントを獲得したジロラミが、自身初のヨーロッパ王者に輝いた。
「最初のセットは内圧が適正でなく、レースに向け新品セットがなくなることを意味するが、最後にニュータイヤ2本を履くと決めた。なによりも予選でタイトル争いを決着させたかったからね」と明かした新チャンピオンのジロラミ。
「コムトゥユー・レーシング、僕の家族、兄弟、そして(僚友でコーチング契約も結ぶ)ヴィクトル・ダビドフスキーが助けてくれたことに感謝しかない。チーム全員がチャンピオンに値すると思うし、だからこそ今日と明日のレースに集中し、また勝ちたいと思うよ」と続けるジロラミ。
「このタイトルは非常に重要で、僕のキャリアにとっても最大のものだ。まだ週末の挑戦が残っているし、何も決まっていることはないけれど、月曜からはまた自分の将来(来季の昇格)に向け、懸命に働き続けたいと思っている」
■祝福の雰囲気はターゲット・コンペティションのSNS声明で一変
迎えたレース1は、自身2度目のポールポジションから逃げ切ったヤングが“ライト・トゥ・フラッグ”での勝利を決め、タイヤのマネジメントに注意を逸らされたコロネルが2位。そしてカエハスを仕留めた新チャンピオンが最後の表彰台を奪う結果に。
明けた日曜のリバースグリッド戦となった今季最終ヒートでも、6列目から発進したジロラミが早くも“王者の貫禄”を示し、僚友のコロネルと同イベントにゲスト招聘されたフレデリック・バービッシュ(アウディスポーツ・チームコムトゥユー/アウディRS3 LMS 2)を従え優勝を飾り、表彰台を独占したコムトゥユー・レーシングがチームのチャンピオンシップと新人賞も総なめにする結果となった。
しかし、そんな祝賀の雰囲気に覆われるはずだったパドックは、レース当日にも強豪ターゲット・コンペティションのチームSNSからリリースされた次の声明で、暗転する事態となる。
「バルセロナで開催された、2022年TCRヨーロッパのシーズン最終ラウンドの週末に、ターゲット・コンペティションは競合チームによる『冬季テストを含む、1シーズン分の車載ビデオが盗まれた』ことを知りました」
「競合他社のコムトゥユー・レーシングに所属するエンジニアは、ターゲット・コンペティションの所有するハードディスクドライブを盗み、我々の許可や認可もなしに、すべてのドライバーの機密ビデオをダウンロードし、イベント前のチーム情報としてドライバーやチーム関係者に配布し、不当な競争上の優位性を与えました」
「さらに、彼らは2022年シーズンのすべてのビデオを依然として所有しており、今後も我々の知的財産から違法な優位性を獲得し続けるべく使用することができます。我々の見解では、この非スポーツ的な行動は罰せられるべきです。有意な決定がなければ、利用可能な法的選択肢を検討する必要があります」
そう記されたステートメントに対し、レース後のコムトゥユー・レーシングも独自の声明を発して、当該記事削除の要請と名誉毀損に訴える可能性を示唆した。
「今週の日曜日午後1時に、TCRヨーロッパの2022年を争ったターゲットSRL(有限責任会社)が、彼らのInstagramで公開した声明を読みました。この声明は午後4時にも(専門サイトの)『TouringCarTimes』によっても報じられました」
「コムトゥユー・レーシングが競合他社からデータやビデオを盗んだことは一度もありませんし、それについて話すための会議を拒否したこともありません。これらの記述は純粋かつ単純に虚偽であり、中傷的です」
「我々は、これらの内容に含まれる申し立てに正式に異議を唱え、投稿や記事を直ちに削除することを要求します。また、競技者が公式に否定することを直ちに発表し、これらの点を尊重することを要求します。さもなければ、24時間以内に中傷と名誉毀損で当局に苦情を申し立てます」
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