フォード初となる量産純EVのトップグレード
日常的に乗れる、魅力を感じさせる純EVが整いつつある。ユーザーの購入動機も勢いづいていくだろう。一方で今すぐ純EVには踏み切れない、という人も多いはず。数年前と同じく。
【画像】フォード・マスタング・マッハE GT 欧州のライバル純EVクロスオーバーと比較 全150枚
純EVは重い。カテゴリーとしては、乗り心地重視のファミリカーに属することが多い。電気モーターとバッテリーという組み合わせは、淡白なドライビング体験であることに変わりはない。
本当に運転する喜びを感じさせ、速く洗練された純EVを完成させることは難しいようだ。2021年に登場したモデルも、その事実を示している。アウディeトロン S クワトロやフォルクスワーゲンID. 4 GTXもそうだろう。
では英国の公道で初試乗となる、フォード・マスタング・マッハE GTはどうだろう。筆者は新技術を毛嫌いしているわけではない。しかし、純EVを従来のクルマのように成熟したものへ高めるには、その体験が重要になる。
マスタング・マッハE GTは、フォード初となる量産純EVのトップグレード。通常のマッハEとの違いは、ホイールとフロントブレーキの大型化、車高の落ちるスポーツサスペンションに、マグネライド・アダプティブダンパーの採用など。
好戦的なスタイリング処理が与えられ、リアモーターはパワーアップ。専用開発のドライブモードも実装される。前後の駆動用モーターを合わせた最高出力は486ps、最大トルクは87.4kg-mとなっている。
アウディeトロン S クワトロほどのパワーではないものの、ジャガーiペイスは凌駕する。数字としても大きいし、運転すれば充分以上と感じる。
優れたシャシーバランスと余裕ある操縦性
実際に郊外の道へ連れ出してみると、2.2tのファミリー・クロスオーバーが生む加速度として、社会的に許容される限度はこの辺だろうなと思わせる。青信号でのダッシュも、流れの速い高速道路への合流でも鋭い。
とはいえ、眠気が覚めるような加速は意外とすぐに慣れてしまう。実際に引き出せる場面も、荷物満載のトラックを追い越す時くらいに限られそうだ。
マスタング・マッハE GTは、ドライバーの走りに対する欲求を刺激的に応えてくれる時もある。だが、同じくらいよそよそしい感じを受ける時もあるようだ。内燃エンジンのクルマに乗り慣れた筆者としては。
サスペンションは、穏やかなドライブモードなら路面をしなやかにいなしてくれる。緩く伸びる高速コーナーでは、優れたシャシーバランスと余裕ある操縦性を披露し、ドライバーを驚かせてくれる。現在の多くの純EVより魅力的だ。それは否定しない。
英国人が思い描く、速いフォードらしい。スタビリティ・コントロールを切ると、ドライバーの背中辺りを軸に旋回するような振る舞いを見せる。80km/hくらいのコーナリングでもフロントノーズは安定し、出口が見えたら早めにパワーを掛けていける。
一方で、全高や全幅、車重がかさむ。スポーティなドライブモードでは乗り心地の落ち着きに欠け、ステアリングホイールやペダル類は鉛のように重い。それが、一層マッハE GTを重く感じさせる。
チャレンジングな道へ最適化できない
駆動用モーターとバッテリーという組み合わせが生み出す体験は、ドライバーを強く惹き込むほど濃くはない。伸びしろは残っているのかもしれないが。
完成度の高いドライバーズカーなら、シャシーのまとまりが輝くチャレンジングな区間で、マスタング・マッハE GTは動揺してしまう。少し気を揉ませるほど。
このファミリー・クロスオーバーのイメージを引っ張っているものの1つが、名前にあると思う。マスタングと聞けば、マッスルカーを想像するだろう。SUV風の純EVでも。
確かに速いことは間違いない。引き締められたスポーツサスペンションで足まわりの剛性が高まり、フォードが狙った通りの操縦性を引き出せてもいる。
しかし、どのドライブモードを選んでも、チャレンジングな道へ最適化されたような体験は得にくい。ウイスパーやアクティブという名のリラックスしたモードから、アンテイムドやアンテイムド・プラスというスポーティな設定まで、乗り心地の幅は大きいのだが。
見通しが効く滑らかなコーナーなら、気持ち良いかもしれない。でも立木などで見通しが少しでも悪くなると、途中に大きな隆起がないと確証を持てない限り、意欲的に運転したいとは思えないだろう。正直なところ。
もう少し開発へ時間を割いていれば、動的能力の影となる部分を解消させることもできたはず。ライバルモデルから学び取り、感触や落ち着き、訴求力などを高められたと思う。純EVへのシフトを後押しするモデルとして。
筆者が選ぶなら後輪駆動版のRWD
さらにマスタング・マッハE GTは、コーナー侵入時に回生ブレーキの強さを瞬間的に高めることができない。シフトパドルを何度か弾き、エンジンブレーキで減速するように。
ポルシェ・タイカンには備わるこの機能なら、回生ブレーキを直感的なものにしてくれる。ブレーキペダルの反応も単純化させ、摩擦ブレーキの効きを鋭く立ち上げることも可能になるはず。
フォード・マスタング・マッハE GTは、新時代のパフォーマンスカーだとはいえるだろう。しかし筆者には、運転へ没入するほどの体験は与えてくれなかった。操作という、より単純化されたものに感じられてしまう。それが技術革新なのかもしれないが。
体験を補うために、トルクベタリング機能が与えられている。それでも現実世界でドライバーが浸れる充足感は、長時間続くものではないように思えた。
もし筆者がマスタング・マッハEを選ぶなら、後輪駆動版のRWDを選ぶだろう。航続距離を伸ばした仕様で。現在の技術の成熟度では、充分に楽しいと思えるドライビング体験が得られる。
マスタング・マッハE GTの最高速度は199km/h。マッハE RWDは180km/hだが、航続距離はエクステンドレンジ版なら111kmも伸びる。どちらが純EVとして訴求力が高いのか、答えは明らかだ。
フォード・マスタング・マッハE GT(英国仕様)のスペック
欧州価格:6万6280ポンド(約1007万円)
全長:4712mm
全幅:1881mm
全高:1597mm
最高速度:199km/h
0-100km/h加速:3.7秒
航続距離:498km
電費:5.7km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2198kg
パワートレイン:ツインAC永久磁石同期モーター
バッテリー:88.8kWh(実容量)
最高出力:486ps(システム総合)
最大トルク:87.4kg-m(システム総合)
ギアボックス:−
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みんなのコメント
マスタングと呼びたくないな…。
たのしいのソレ
(笑)