この記事をまとめると
■アストンマーティンはハイパーカーシリーズの先駆けとして2008年にONE-77を発表
人生「勝ち組」でも水面下の「苦労」はハンパない! 思ったよりラクじゃない「スーパーカー乗り」の悲哀5つ
■760馬力の7.3リッターV12を搭載し、価格は100万ポンド(約1億2200万円/当時)
■ティーザーを展開した後に公開されたONE-77は芸術的なデザインのハイパーカーだった
100万ポンドのアストンマーティンという衝撃
アストンマーティンONE-77。現在では1000馬力オーバーのパワースペックを誇る、いわゆるハイパーカーの存在にも我々は十分に慣れてしまった感があるが、2008年のジュネーブショーでアストンマーティンから100万ポンドというこのONE-77の価格(当時のレートで約1億2200万円)を聞いたときの衝撃は相当なものだったと記憶している。
そしてその後、アストンマーティンからは、それに搭載されるエンジンが7.3リッターのV型12気筒が自然吸気であることや、ほかのアストンマーティン車とは異なり、カーボンモノコックを基本構造体として用いること。そして何より、そのエレガントにしてダイナミックなボディデザインがオフィシャルフォトで明らかにされると、スーパーリッチの目はこのわずかに77台が生産されるモデルに釘づけになったのだった。
現在のアストンマーティンは、通常のシリーズモデルのほかにヴァルキリーやヴァルハラといった、いかにもF1マシン直系ともいえるモデルの限定生産の渦中にあるが、ONE-77はこれらの先駆といってもよいモデルだ。
限定77台のオーダーリストは瞬時に埋められた
個人的にいまでも忘れることができないのは、2008年のパリサロンにおけるONE-77のディスプレイだ。同年のジュネーブショーでその存在を公にしながら、その半年後に開催されたパリサロンでは、そのほとんどがヴェールに覆われたモックアップのONE-77が展示されていた。ここに至ってもまだティーザー(その一部だけを見せてカスタマーやメディアを焦らす広告戦略のことね)で我々を翻弄するのかと思いつつ、もしかしたらアンヴェールされるのではないかと、数時間に一度はアストンマーティンのブースに足を運んだのだった。
そういえばそれまでフォードのPAG(プレミアム・オートモービル・グループ)に属していたアストンマーティンだけれど、そこから抜けた途端に、ブースも何となく寂しい場所と雰囲気に変わってしまったことを今でも覚えている。
さてクルマとともに印象的だったのが、そのティーザーに使われるためのピンストライプ入りの美しいヴェールだ。広報の担当者によれば、このヴェールはアストンマーティンと同様にロイヤルワラント、すなわち英国王室御用達の紳士服テーラーで、すでに200年以上もの歴史を持つあのヘンリー・プールが仕立てたものなのだという。彼らが15番地に本社を構えるロンドンのサヴィルロー通りといえば、数多くの紳士服テーラーがあることで知られているが、ヘンリー・プールはその中でももっとも長い伝統を持つテーラーだ。
参考までにこのヴェール、当日に自分が来ていたスーツと比較すると、生地の大きさを見ても価格は100倍以上するのでは。ONE-77は無理でも、ヘンリー・プールのスーツくらいは緊張しないで買える男になりたい。そんなことを考えたパリサロンだったことを思い出してしまった。
後にそのスタイリングが公にされたONE-77は、そのパフォーマンスにおいても非常に大きな魅力を持つ一台だった。フロントミッドシップされるV型12気筒エンジンは、最高出力が760馬力、最大トルクは750Nmというスペック。それによって0-100km/h加速を3.7秒でこなし、その加速は最高速の354km/hまで続く。
それはまさに芸術的なデザインときわめて優秀なパフォーマンスの融合であり、そして77台のONE-77は、当時世界最高のGTとして一瞬でそのオーダーリストが埋められたのだった。
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みんなのコメント
造形美からもコストかかってるのが伝わります。
芸術的で乗ることよりも所有することによる満足感。
富裕層の究極の贅沢であり無駄遣いですね。