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「VW GTI 試乗レポート」足が速いだけではモテない時代にどう進化した?

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「VW GTI 試乗レポート」足が速いだけではモテない時代にどう進化した?

クラスを超える質感をも手に入れた走り系のゴルフ・ポロ・up!で異なる味

フォルクスワーゲンが初代ゴルフから大切にしてきた、『GTI』。グレードのトップが”R”になってしまった今も、存在はやはり特別だ。そして、日本でも発売された『GTI』の三兄弟、ゴルフ、ポロ、up!。フォルクスワーゲンのホットハッチ三兄弟が遂にコンプリートしたワケだが、スペインはマラガで”GTIパフォーマンスデイ”が開催された。スペイン南部にあるアスカリ・レース・リゾートと周辺ワインディングを舞台に、丸一日たっぷり堪能できる機会に恵まれた。

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【Golf GTI Performance】

ひと口でホットハッチと言っても、『GTI』のテイストというのは他のメーカーのそれとはちょっと違うとボクは思っている。たとえば、その頂点に君臨する『ゴルフGTI』などは、ホットというよりはむしろスウィートハッチなのかと。どっしりと剛性感に溢れるボディを基軸にしなやかな減衰力調整機能付きサスペンションで大径タイヤを抑え込み、路面に張り付くような操舵感をもって締め括るハンドリングは上質この上ない。ことスポーツドライビングという観点では慣性によって向きが変えにくい一面もあるが、この徹頭徹尾な弱アンダーステアを貫く頑固さがあるからこそ、多くのドライバーにスピードとコーナリングというふたつの”ファン”を与えることに成功しているのだと納得できる。特に7世代目ゴルフは珠玉のでき映え。ゆえにベースとした『GTI』は剛直なスタビリティをスウィートな乗り心地でくるむことができた。結果として運転に夢中になれるから“ホット”ハッチなのだ。



今回試乗したのは、2.0TSIを245ps/370Nmにまで出力アップした『GTI Performance』(日本未導入)。プログレッシブステアリング、スポーツサス、LSD、ハイパフォーマンスブレーキを盛り込むことで極めて快適な乗り心地と共に優れたコーナリング性能を発揮。もう一度日本に導入して欲しいスペシャルバージョンだ。

【Polo GTI】

兄の背中を見て育った『ポロGTI』は、とてもまじめな青年に成長した。その要となるのは横置きエンジンモジュール『MQB』によって自由度を得た、プレミアムBセグメントのボディ。これが2200ps/320Nmを発揮する2リッター直噴ターボの高出力を完璧に封じ込めている。そして、先代では強烈な効き具合を示した電子制御式ディファレンシャル『XDS』が、その作動を悟らせないほど自然に働くようになったのは、このボディをしてオプションのスポーツサスと18インチタイヤが、きっちりと路面をつかんでいたからだろう。ただし『ポロGTI』が『ゴルフGTI』を超えたのかといえば、それは違う。45ps/50Nmの出力差(GTIパフォーマンス比)、6速と7速のDSGの差、内外装のしつらえ、乗り味の上質感。全てにおいて兄を超えることは許されていないからだ。だからこそ『ポロGTI』は、かつて『ゴルフGTI』がもっていた質実剛健さを実直に受け継いでおり、これを求めるユーザーの期待に応えてくれる一台へと成長したと思う。



『MQBボディ』を得てその全幅は1750mmと、先代より80mmも拡大。エンジンも1.8TSIから2.0TSIへと排気量がアップされ、出力は200psにまで向上した。しかし、車重も1355kgと増えており、その性格はよりGT的に。乗り心地や出力特性全般で先代よりも落ち着きを増しており、いい意味でかつてのハードさやヤンチャな切れ味はなくなった気がする。すなわち、洗練さがアップしていたのだ。

【up! GTI】

かたや末弟の『up! GTI』は、自由という言葉がよく似合う。コンパクトなボディを活かして110psのパワーを解放すれば、三兄弟随一の身軽さでサーキットを自在に駆け回る。シティコミューターとして宿命づけられたトールボディが、コーナーの切り返しで挙動をふらつかせる場面もあるが、根本的には『GTI』らしい粘りのあるサスが支えてくれる。日本仕様にはなかった6速MTはヒール&トゥのやりづらさだけが気になるものの、999ccのターボエンジンを思う存分引っ張って走ることができた。車重も1070kgと決して軽くはないのだが、それゆえにボディ剛性が高く、結果的に自信をもってブレーキを踏むことができ、曲がることができる。軽さが感じられたのだ。一見自由に見えて身持ちの堅い部分もある現代っ子、それが『up! GTI』のキャラクターではないかと思う。



115ps/200Nmの出力を発揮する直列3気筒1.0TSIのエンジンと、日本仕様にはない6速MTこそGTI最大のトピック。専用サスペンションと17インチタイヤで引き締めた足回りは、このパワーをしっかり受け止め、しなやかながらもキビキビとした操作性と安心感を手に入れていた。ライバルはずばり、ルノー・トゥインゴGTだろう。

これが『GTI』というグレードの本質。「ポロ」と「up!」という弟たちにも、その血はしっかりと受け継いでいた。しかも、それぞれのキャラクターは微妙に違うからまた面白い。

かつてアウトバーンで格上のセダンたちを蹴散らしたハッチバックは、42年の歳月を経て速さに加えてクラスを超えた質感をも備えた。そしてその弟たちにまで、『GTI』の伝統を与えることに成功。この生きた伝説を超えることは、並大抵のことではなかっただろう。まさに、その偉大さを見せつけられたパフォーマンスデイであった。初代『ゴルフGTI』の運転席に収まりご満悦の山田弘樹氏。42年経った今も走りの精神は継承されていることに感銘を受けた。

(リポート:山田弘樹)

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