■増税も影響無し? トヨタ小型車が異例の人気を示す理由とは
2019年10月1日におこなわれた消費税増税は、新車の売れ行きにも影響をおよぼしたと見られており、新車市場で現在人気の車種も、販売台数を落としています。
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そんななか、発売から3年が経過したトヨタの「ルーミー」と「タンク」(以下、「ルーミー/タンク」)が、2019年10月も前年同月からほとんど売れ行きを落とさなかったといいます。決して最新モデルとはいえない車種にも関わらず、なぜ人気を維持できたのでしょうか。
日本自動車協会販売連合会が発表した2019年10月の登録車販売台数データによると、各社の販売主力モデルの多くが前年同月比で大きく前年割れする結果となりました。
日産の主力コンパクトカーの「ノート」は前年比54%となる5263台、トヨタのハイブリッド専用車「アクア」は前年比47.7%となる4967台、そしてホンダの国内販売をけん引するコンパクトミニバン「フリード」は前年比64.7%の4368台と、いずれも厳しい状況です。
そんななか、2019年10月も売れ行きをほぼ落とさなかったコンパクトカーが、トヨタのルーミー/タンクです。
この2台は、ダイハツからトヨタにOEM供給されて販売されるクルマですが、2019年10月の販売台数を見ると、ルーミーは2018年同月の販売台数を上回る前年比108.1%の6962台を記録。タンクも前年比96.2%の5420台となり、ほとんど販売台数を落としていません。
売れ行きを維持したことで、ほかの車種よりも相対的に登録車販売ランキングが上昇する結果となり、2019年9月はルーミー:8位、タンク:10位だったものが、2019年10月にはルーミー:3位、タンク:5位までランクアップしました。
ちなみに、OEM元のダイハツでは「トール」という車種としてラインナップされていますが、トールも売り上げをあまり落としておらず、2019年10月の販売台数は前年比89.1%の2071台を記録しています。
なぜ、トヨタ「ルーミー/タンク」は増税後も人気を維持しているのでしょうか。トヨタの販売店スタッフは、次のようにいいます。
「ルーミー/タンクには、排気量が1リッターのエンジン(自然吸気およびターボ)が搭載されています。小排気量がもたらす自動車税の安さは、ルーミー/タンクの魅力のひとつです」
※ ※ ※
2019年10月1日には、消費税増税がおこなわれただけでなく、環境性能割の導入をはじめクルマに関する税制の変更もおこなわれたのですが、そのなかのひとつに、自動車税の引き下げ措置がありました。
対象は2019年10月1日に初回新規登録を受けたクルマとなっていますが、注目されるのは各排気量の引き下げ額のうち、1リッター以下の自動車税がもっとも多く引き下げられたことです。
1リッターの引き下げ額は4500円(引き下げ後の税額:2万5000円)で、そこから排気量が大きくなるごとに引き下げられる金額は少なくなっていきます。
そのため、排気量が小さいクルマに有利となることは2019年10月以前から指摘する声がありましたが、ルーミー/タンクの販売が好調であることとも関係があるといえるでしょう。
なお、ルーミー/タンクに近いボディサイズを持ち、販売におけるライバル車とされるスズキ「ソリオ」の2019年10月の販売台数は、前年比77.1%の2627台を記録しています。
前年比で80%を割ったという事実は、ソリオが排気量1.2リッターのエンジンを搭載していることと無関係とはいい切れません。
■ルーミー/タンクに続く!? 新型小型SUVに人気の予兆あり
ルーミー/タンクが好調な売れ行きを示すなかで、2019年11月には新型SUVのトヨタ「ライズ」とダイハツ「ロッキー」(以下、「新型ライズ/ロッキー」)が登場しました。
新型ライズ/ロッキーは、ルーミー/タンクおよびトールと同じ関係性をもつクルマです。
ダイハツが2台の開発をおこない、トヨタはOEM供給を受ける形で新型ライズを販売し、ダイハツは自社のラインナップのひとつに新型ロッキーを加えるという状況となっています。
近年人気のSUV市場へ新たに参入する新型ライズ/ロッキーですが、全長3995mm×全幅1695mmという5ナンバーサイズのボディをはじめ、これまでのSUVでは見られないさまざまな特徴を持ちます。
そして、それらと共に注目されるのが新型ライズ/ロッキーに搭載されるエンジンです。搭載されるのは1リッター直列3気筒ターボエンジンで、このエンジンはルーミー/タンクにも設定されるターボエンジンと同じ型式のもの(1KR-VET型)となっています。
自動車税における排気量区分も、ルーミー/タンクと同じくもっとも安いものが適応されることから、維持費の少なさが登録車のなかでトップクラスであるにも関わらず、流行りのSUVモデルを所有できることになるのです。
※ ※ ※
ルーミー/タンクと新型ライズ/ロッキーに共通する点として、そのほかの代表的なものとしては、コンパクトボディの割に車内が広く設計されていることが挙げられます。
前出の販売店スタッフは、ルーミー/タンクについて「車内が広く視界も抜群であることから、運転しやすさも魅力のひとつと考えています。実際に、女性の私(販売店スタッフ)が乗っても運転しやすいと感じます」と説明します。
全長3700mm(標準グレード)のコンパクトサイズながら、車高を1730mmと高くとったことで、アイポイントの高さやガラス面積の広さが活かされた設計となり、運転のしやすさや車内の居住性に優れています。
一方、新型ライズ/ロッキーも、全長3995mmというSUVのなかではとくに小さいボディを持ちますが車内は広く、とくに荷室の広さに注力して開発がおこなわれました。
新型ライズ/ロッキーのチーフエンジニアを務めたダイハツ 製品企画部の大野宣彦氏によると、開発に際してユーザーの声を集めたところ、これまでのSUVを購入した人は「荷室が狭い」「もう少し小回りが利くとよい」などの不満点を持っていることがわかったといいます。
そこで、それらを解消する目的で「コンパクトサイズで広い荷室を持つ、新しいジャンルのSUVの世界があるのではないかと思い、新型ライズ/ロッキーの開発をはじめました」(大野氏)と語っています。
新型ライズ/ロッキーは発売前の段階から人気モデルとなる予兆が現れていて、発売日前までの予約受注台数は、新型ライズが6500台(月販目標台数4100台)、新型ロッキーが3500台(月販目標台数2000台)と、好調な滑り出しとなっています。
※ ※ ※
日本には、少ない維持費で使い勝手の良いクルマが実現されている軽自動車という規格がすでに存在しています。
今後は、コンパクトカーやSUVなど、ほかのボディタイプにおいても、小排気量・コンパクトボディでかつ使い勝手の良さも併せ持つクルマが、主流となっていくのかもしれません。
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