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【業績過去最高も課題は山積】レクサスが目指す方向と身に付けるべき価値

掲載 更新 6
【業績過去最高も課題は山積】レクサスが目指す方向と身に付けるべき価値

 2020年2月、レクサスは2019年の世界新車販売実績を発表。それによると、世界販売台数は76万5330台で、過去最高の成績となった。

 国内市場でも、新規登録台数が6万2394台で、前年に比べて13.2%増と好調な結果となった。2005年に日本市場に登場したものの、目標を下回るなど市場からの反応はトヨタが期待したほどのものではなかったレクサスが、なぜここまで躍進したのだろうか!?

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 そして、次に目指すべき高級ブランドとして向くべき方向とはどこなのか? 現在地と抱える課題を考察していく。

●2019年1~12月販売台数/月販平均台数
LS:3145台/262台
LX:1137台/95台
GS:1049台/87台
ES:1万1140台/928台
IS:2050台/171台
CT:2344台/195台
RX:9561台/797台
NX:1万3233台/1103台
UX:1万6395台/1442台
LC:656台/55台
RC:1684台/140台

文/渡辺陽一郎
写真/LEXUS

【画像ギャラリー】課題はあれどデザイン、販売ともに向上中のレクサス。その現行モデルを一挙紹介!!

■過去最高の世界販売を達成したレクサス 注目すべきはその効率のよさ

 トヨタが展開する高級車ブランドのレクサスでは、2019年(暦年)の世界販売台数が76万5330台に達したと発表された。対前年比は110%で、設計の新しい「ES」と「UX」、マイナーチェンジされた「RX」などが売れ行きを伸ばした。

 世界市場のなかで、レクサスの販売比率が最も高いのは北米だ。2019年に販売されたレクサス全体の42%を占める。次が中国で26%、欧州の11%と続き、日本は約6万2394台を販売して8%であった。

SUV人気を追い風に、レクサスのラインナップで2019年販売台数トップを獲得した「UX」。2021年前半にはEV市販モデルも投入予定だ

 トヨタの2019年における世界販売台数は971万4253台で、国内の販売台数は、軽自動車を含めると161万169台だ。トヨタ全体に占める国内販売比率は17%だから、レクサスの8%は低い。つまりレクサスブランドは、トヨタに比べると海外向けになる。それでもレクサスの国内販売も増加しており、対前年比は113%であった。

 国内におけるトヨタブランドとレクサスの販売規模の違いは、ディーラーの店舗数からも裏付けられる。トヨタブランドの国内販売店は、4系列を合計すると約4900店舗だが、レクサスは約170店舗だ。レクサスの販売網は、トヨタの3~4%に過ぎない。

 そこまで考えると、レクサスは効率のいい商売をしている。トヨタブランドの1店舗当たりの販売台数は、1年間で329台だが、レクサスは365台に達するからだ。

 しかも、2019年に販売されたトヨタブランドのトップ3車は、プリウス、シエンタ、カローラシリーズだが、レクサスはUX、ES、NXとなる。1台当たりの粗利は、レクサスが圧倒的に高い。

 さらにレクサスでは、発売から10年近くを経過した設計の古い車種でも、基本的に値引き販売をしない。レクサスの店舗は高コストで、管理費用なども高いだろうが、それでも儲かる商売をしている。なおレクサスを運営するのは、一部を除くと、トヨタ店やトヨペット店など既存のトヨタ系ディーラーだ。

 過去をさかのぼると、レクサスは北米で1989年に開業したが、日本は2005年だ。北米の開業から16年も経過して、国内の販売を開始している。この間に海外のレクサス「LS」は日本ではセルシオ、レクサス「ES」はウィンダムという具合に、国内ではトヨタ車として扱われた。

 見方を変えると、日本ではセルシオやウィンダムなどの高級車は必要でも、レクサスというブランドは求められていなかった。日本と海外では、トヨタ車の普及の仕方がまったく違ったからだ。

■改善されたレクサスの販売と接客 しかし課題は残る

 北米など海外の日本車は、ガソリン価格が急騰したオイルショック期に、「低燃費で価格も安く、壊れにくい実用車」として普及した。しかし日本におけるトヨタ車は、1955年に発売されたクラウンから実質的に始まっている。

 海外でトヨタが高級車を売るには、レクサスという新たなブランドが必要だったが、日本ではトヨタこそがもともと崇高なブランドだ。新型クラウンが登場すると、内容も確かめずに購入するユーザーも多い。トヨタというメーカーとクラウンという商品、トヨタ店とセールスマンに、絶大な信頼を置いているからだ。日本におけるトヨタのブランド力は、メルセデスベンツやBMWを大幅に上まわる。

 このように、日本で不要だったレクサスを2005年になって開業した背景には、ふたつの理由があった。ひとつ目はメルセデスベンツやBMWの国内販売が増え始め、トヨタの高級セダンのシェアを浸食し始めたことだ。

 1990年代中盤になると、トヨタは国内でミニバンを活発に発売して、セダンの魅力と売れ行きは相対的に下がった。その結果、高級セダンの価値を確立させていたドイツ勢に、入り込む余地を与えてしまった。レクサスは欧州ブランドからトヨタ車の販売を守るべく、国内で開業している。

2019年の販売台数は1049台、月平均87台だったレクサス「GS」。ベンツ「Cクラス」、BMW「3シリーズ」は月平均500台以上を販売しており、「ES」以外のモデルは苦戦が続く

 ふたつ目の理由は、トヨタ自身が、日本におけるトヨタのブランド力を理解できていなかったことだ。少なくともレクサス開業当初のディーラーで見られた慇懃無礼(いんぎんぶれい)な顧客対応は、それまでトヨタが築いてきた日本向けの優れた接客を否定するものであった。2005年当時、レクサスに配属されたトヨタのセールスマンはベテランぞろいであったが、無理のある接客を強要されていた。

 当時のレクサスはこのような具合で、車種もセダンが中心だったから売れ行きは伸び悩んだ。2008~2010年頃の国内販売は、リーマンショック後の景気低迷もあり、1年間に2万5000台から3万台であった。

 この後、国内のレクサスは車種を充実させていく。2009年には日本向けに開発された車内の広いミドルサイズハイブリッドセダンの「HS」、2011年には同じくハイブリッドを搭載する運転しやすい5ドアハッチバックの「CT」、2014年にはミドルサイズSUVの「NX」などをそろえ、2015年のレクサス国内販売は4万8000台に増えた。

左から「LC」「LS」「LX」。この3台をフラッグシップに据え、幅広いラインナップを取りそろえる現在のレクサス。統一デザインの「スピンドルグリル」も熟成が進み、消費者に受け入れられるようになったのも大きい

 2018年には5万5000台に達してESとUXも加わり、2019年には前述の6万2394台に達している。近年はSUVが流行しており、レクサスもサイズに応じて複数のSUVをそろえ、売れ行きを伸ばした。

 レクサスの国内販売推移を見る限り順調といえるが、国内開業の目的とされた欧州ブランドの浸食には、今でも歯止めが掛かっていない。2019年にメルセデスベンツは日本国内で6万6553台を販売して、レクサスブランドの国内販売台数を上まわった。BMWも4万6814台だから、レクサスを下まわるものの、手ごわい競争相手だ。

 2019年に国内で最も多く登録されたレクサス車は、UXで1万6395台であったが、メルセデスベンツCクラスは1万7210台となる。メルセデスベンツの車種数は、レクサスの2倍に相当するから、登録台数を増やしやすい事情もあるが、日本でレクサスが成功したとはいえない。ブランド力でも、メルセデスベンツはともかく、トヨタにはまだまだ太刀打ちできていない。

■足りない販売店と公平性 高級車ブランドであるためには見直すべき

 レクサスは店舗展開にも疑問がある。先に述べた通り全国に約170店舗で、トヨタの販売網に比べると3~4%だ。しかもメルセデスベンツなどの輸入車に対抗しているから、出店が都市部に著しく偏っている。東京都内では28店舗を展開しているのに、青森県、秋田県、福井県、鳥取県などは1県に1店舗だけだ。

 そして輸入車の場合、地域によっては複数ブランドの正規販売会社から車両を卸して販売するサブディーラーが普及するが、レクサスは基本的に正規販売店でないと扱わない。一部の店舗では、運営母体となるトヨタ店やトヨペット店が簡単なメンテナンスを行って便宜を図るケースもあるが、あくまでも例外だ。

 日本では前述のようにトヨタが主力ブランドで、サービスも入念だから、ユーザーはレクサスもトヨタに属すると認識している。トヨタ車を近所の店舗で買えるなら、レクサスも同様でなくてはならない。1県に1店舗では、顧客は不便を感じて顧客満足度も下げてしまう。「どこに住んでいても、購入とサービスを公平に受けられ、安全かつ便利に使える」という、トヨタ車の価値を身に付けない限り、レクサスが日本に深く浸透することはない。

 公平性に関しては非常に些細な話だが、レクサスオーナーズラウンジの利用に妙なルールがある。メンテナンスの待ち時間などを過ごす顧客専用のラウンジだが、入室を許されるのは、レクサスの店舗で新車か認定中古車を購入したユーザーだけだ。一般の中古車店でレクサスを買ったユーザーは、レクサスオーナーズラウンジに入れない。

レクサスショールームの商談スペースはモニターを見ながら営業マンから説明を受ける。レクサスオーナーズラウンジに入るには、新車や認定中古車を購入したオーナーだけに渡させるレクサスオーナーズカードが必要になる

 理由を尋ねると「レクサスの店舗で購入したお客様の満足感を守るため」と返答されたが、入室を断わられたユーザーは、「自分はレクサスのオーナーではないのか?」と差別を感じてしまう。この方針は全国一律だから、メーカーの主導に基づく。

 要はレクサスの「おもてなし」は、このレベルだ。海外と日本では、トヨタとレクサスを取り巻く事情やユーザーの感情はまったく違うから、個別に考える必要がある。「日本のレクサスはどうあるべきか」を顧客目線で考えると、新しいサービス、新しい顧客との結び付きが生まれる可能性もある。

 特に2020年5月からは、トヨタの全店が全車を扱う体制に移行する。トヨタ店とトヨタカローラ店が隣接するような地域では、店舗の統廃合も進みそうだ。レクサスの店舗展開を見直すいい機会にもなるだろう。「日本のレクサス」に期待したい。

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みんなのコメント

6件
  • レクサスはトヨタのプレミアムブランドという位置づけなんだろうが、日本での展開が15年たった今でもクルマの出来と価格のバランスが悪いままのように思う。
    それに、レクサスのラインナップは古典的、前時代的に映る。それは、EVやPHEV、FCVが無いからということもある。プレミアムを標榜するのであれば、最先端技術を搭載したクルマ、トヨタMIRAIのようなFCVこそレクサスで展開すべきでなかったか?と思う。
  • 業績好調で気に入らないから、取り敢えずケチ付けとこう的な記事
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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