日産のプレミアムコンパクト「ノート・オーラ」に追加された高性能ヴァージョン「NISMO(ニスモ)」に小川フミオが試乗した。
駿足の電動シティレーサー
EV(電気自動車)がどれだけ速いか。そのポテンシャルの高さを見せてくれるのが、日産自動車が2021年8月に発売した「ノート・オーラNISMO(ニスモ)」だ。
「駿足の電動シティレーサー」をメーカーが謳うだけある。200万円台でこんなに楽しくていいの? と言いたくなる新世代のホットハッチともいうべきモデルだ。
電動車の速さは、メルセデス・ベンツやアウディといったドイツ車や、フェラーリやマクラーレンなどのスポーツカーメーカーまで注目するところ。瞬時に最大トルクが立ち上がる電気モーターのダッシュ力を使えば、異次元ともいえる加速感が得られる。
ノート・オーラNISMOも同様。1198ccの直列3気筒エンジンをバッテリー充電用に使い、駆動は電気モーターを使う。日産が「e-POWER」と名づけた方式で、一般的にはシリーズ・ハイブリッドと呼ばれる。
100kWの最高出力と300Nmの最大トルクの数値は、ノート・オーラ2WDと共通。ノート・オーラNISMOは前輪駆動となる。ただしキャラクターはまったく違う。たとえていうなら、普通のノート・オーラがポルシェ「911カレラ」なら、NISMOは「GT3」だ。
モータースポーツ向け自動車部品の設計・製造・販売、さらにレース車両まで手がけるNISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル株式会社)が手がけただけある。公道よりもジムカーナとかショートサーキットで楽しめるクルマになった。
モーター制御マップ、サスペンションシステム、ステアリング、空力、それに内外装の雰囲気と、あらゆるところに、「GT-R Track Edition Engineered by NISMO」でも知られるNISMOの個性が盛り込まれている。
コーナリングは大得意
ノート・オーラNISMOは、普通のノート・オーラとは別もののスピード感がある。アクセルペダルの遊びはほとんど感じられず、ペダルに載せた足にごくわずかに力をこめただけで、弾かれたように前に飛び出していく。驚くばかりのダッシュ力なのだ。
センターコンソールのスウィッチで、ドライブモードを3段階切り替えられるようになっている。「ノーマル」「エコ」それに「NISMO」。街乗りなら「エコ」でじゅうぶん。たまにはスピードを楽しんでみようかなというときは「ノーマル」でいい。「NISMO」はレース場のためにとっておくといい。それぐらい加速性にすぐれる。
モーター出力と回生を制御するビークルコントロールモジュールのマッピングを専用設定し、最高点(最高出力)に到達するまでの時間を短くすることに心を砕いた、とはかつてNISMOの開発担当者から、私が聞いたこと。専用セッティングによりアクセル中間開度域での加速感を作り出しているそうだ。
「アクセルペダルへの反応のよさも、加速感につながります。バッテリーもモーターもインバーターもベース車(ノート・オーラ)と共用しながら、速さをいかに作りだすかが開発目標でした」(開発者)
くわえて、サスペンション・システムを専用チューニングしていること、ステアリングのダイレクト感をより強く出していることも速く感じられることに寄与している。速度が上がってからはボディの空力特性も効果を発揮する。
コーナリングは得意中の得意の科目で、切れのいいステアリングとそれに間髪いれずについていく反応の速いシャシーは、まるでスポーツカーだ。ドライブしている私の足とぴったりつながったようなレスポンスのよさは、モーターの高いポテンシャルの証明である。
工事現場でおなじみの円錐を並べて、その間を縫って走る、いわゆるパイロン・スラロームをこのクルマで体験したときも、驚かされた。ロールの少ないシャシー、正確なステアリング、瞬間的な加速、そして制動力と、すべてがみごとにバランスされている。
ボディの一部に補強材を入れるとともに、前後のサスペンションおよびダンパーを専用チューニング。リアには、モノチューブ式ダンパーを採用。「ツインチューブ式よりも受圧面積が大きく、ガス圧が高いことで応答性が向上し、これによりバネ下の収まりがよくなり、リアの接地性が向上するので、操縦安定性と乗り心地のよさが両立した」とする。
タイヤはさすがというべきか、静粛性が多少落ちてもグリップ力の高さで定評あるミシュラン・パイロットスポーツ4を装着。17インチ径の専用ホイールは、ノート・オーラの6.5Jから7Jへ。いわゆるワイドリム化して、タイヤの接地面積を増やすとともに、旋回時の剛性がはかられている。と、まぁマニアックなことをつい書いてしまう。
価格に衝撃!
ただし、まるでレースカーのような設定であるぶん、路面が荒れていると、よく跳ねる。コーナリング時も同様で、路面に不整部分があると、クルマの挙動に影響が出がちだ。レース場のようなところでは最高のパフォーマンスを発揮してくれるぶん、日常生活では快適性が多少犠牲になる。
べつの見方をすれば、ここまでとんがったスポーツハッチバックを作ってしまうNISMOの開発姿勢は、たいしたものだと思う。乗り心地のよさを求めるなら、ノートやノート・オーラや、あるいはノート・オーラの車高を少しだけ上げたノート・オーテック・クロスオーバーがある。各モデルの個性がはっきりしているのが、クルマ趣味のユーザーには福音といっていいだろう。
エクステリアは専用装備が多い。ざっと挙げると、下記のようになる。前後エンブレム、フロントグリル、フロントバンパー、サイドシルプロテクター、リアバンパー、ルーフスポイラー、前後LEDフォグランプ、ドアマウンテッドミラー、17インチ軽合金ホイール、サスペンション。
インテリアも同様だ。本革・アルカンターラ巻きステアリングホイール、アドバンスドドライブアシストディスプレイ(12.3インチカラーディスプレイ)、プッシュパワースターター(レッド)、ドライブモードセレクター(レッド)、ブラックトリム、シート地(専用ファブリック/合皮コンビ・レッドステッチ)、レッドセイフティベルト、それに、レザレット(合成皮革)を内装各所に使っている。
オプションで、NISMO専用チューニングというレカロ社製スポーツシートがオーテックジャパン取り扱いで用意される。購入したのちに、指定工場に持ちこんで取り付けることになる。このクルマだけに、ハンドリング性能を楽しむジムカーナなど、使いかたによっては、ホールド性にすぐれたレカロシートは必需品になるかもしれない、
もうひとつの驚きは、価格だ。286万9900円で、このモーターで走るロケットのようなクルマが手に入る。ホットハッチが大好きというひとは、少なからずいるだろう。新世代であるノート・オーラNISMOを、いちど試してみてはどうかなぁと思う。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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