今から40年以上も前に誕生していたことは驚くべき事実
今回のAUTOMOBILE COUNCIL 2023へ出展したマツダは、「ロータリーエンジンの可能性の追求と新しい価値への挑戦」をテーマに掲げていました。ロータリーエンジン(RE)を発電機として使用するプラグインハイブリッドモデルのMX-30 e-SKYACTIV R-EV(欧州仕様車)を国内初披露するとともに、1970年代に排ガス規制の先陣を切って投入したコスモAPと、マルチフューエルに対応可能なREの特性を活かし燃料多様性に挑戦したRX-8ハイドロジェンREを展示していました。
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カロッツェリア、ベルトーネが手掛けたコンセプトカー
いずれもREの可能性を追求したモデルでしたが、マツダのブースにはもう1台、お洒落なコンパクトカーが展示されていました。これが今回のストーリーの主人公、1981年の東京モーターショーに展示されていたコンセプトカー、MX-81“ARIA(アリア)”です。
マツダMX-81は、マツダの依頼によりイタリアのカロッツェリア、ベルトーネが手掛けたコンセプトカーです。ベースとなったのはファミリア(前輪駆動にコンバートされた5代目のBD系。輸出名はマツダ323)で、搭載されていたエンジンは排気量1490cc(ボア×ストローク=77.0mmφ×80.0mm)の直4シングルカムでターボ仕様のE5型。 最高出力は1.5Lのノンターボ仕様に比べて20psアップの115psを発生していました。
ボディワークはカロッツェリア・ベルトーネが担当していて、スタイリングに関してはマルチェロ・ガンディーニからチーフデザイナーの座を引き継いだマルク・デュシャンが手掛けています。デュシャンは1980年からチーフデザイナーに起用されていますが、その前年、1979年まではガンディーニがその座にありましたから果たしてどちらがデザインしたのかは定かではないのですが、ホイールアーチやウインドウグラフィックの処理にはガンディーニの影響が感じられます。
もっともガンディーニもベルトーネのチーフデザイナーに着任した当初は、前任者であるジョルジェット・ジウジアーロの作風と融合させるケースも見受けられますから、MX-81がガンディーニのベルトーネへの置き土産なのか、はたまたデュシャンのベルトーネでの初仕事なのかは重要ではなく、カロッツェリア・ベルトーネの作品ということで充分でしょう。
リトラクタブルヘッドライトは後にロードスターなどに採用
エクステリアではウェッジシェイプを基本ラインとしながらも、ウエストラインを低く設定して、そこから上のルーフを除くキャビン部分をすべてガラスエリアとし、ショルダーラインでガラスエリアが湾曲しています。それほどまでにガラスエリアを広くとっていることが大きな特徴となっているのです。またリアサイドビューで見ていくと、Cピラーのウエストラインから上の部分をテールライトのレンズで覆ってしまうのも新たなデザイン手法でした。
その一方で空力にも配慮されています。ボディサイズは、全長3940mm×全幅1690mm×全高1280mmとコンパクトなボディは、空気抵抗の低減を目的にフラッシュサーフェイス化が追求され、ヘッドライトはリトラクタブル式を採用していました。ワイパーも使用していない時にはリッドで完全に覆ってしまうフルコンシールド式が装着されています。
リトラクタブルヘッドライトはその後、歴代のRX-7やユーノス・ロードスターなどのスポーツカーだけでなく、ユーノス100やコスモの2ドアハードトップなど、多くの市販モデルにも採用されることになりました。
当時は未来のクルマとして位置づけられる内装の仕上がり
MX-81で最も特徴的なポイントは、エクステリアではなくインテリアにありました。ガラスエリアが高く広く設定されているために、ドアのサイドウインドウは“はめ殺し”となっていて、小さな、しかし上下にパワースライドして開く“チケットウインドウ”が設けられています。そのドアを開けるとモケットを大きく革で縁取ったシートが目に入ります。このシートを90度回転させて乗り込むことになるのですが、ドライバー席の正面にはハンドルがありません。
いや正確に言うと一般的なステアリングホイールが見当たらないのです。落ち着いて見直してみると正面奥にモニター(時代的には仕方ないのですが、液晶モニターではなく画面が少し湾曲したブラウン管でした)があり、モニターを囲む周囲の壁の稜線に沿って右下にはホーンボタン、左下にはウインカースイッチがあり、その間には前後のフォグランプやハザードランプのスイッチが配されています。
さらにその稜線を囲むように、44個のブロックが繋がった“縁取り”が施されていますが、この“縁取り”が前輪を操舵するステアリングでした。また小型ブラウン管を採用したモニターにはエンジン回転数や燃費などの情報が3次元表示されるなどと公表されていました。
東京モーターショーでお披露目された当時は、革新的とさえ思われていた装備の数々ですが、ブラウン管から液晶パネルに機器としては進化しているものの、さまざまなデータをモニターすることは、現在ではもはや当然の手段。また自動運転がより進化してきたことで、旧態然としたステアリングの存在も一考の余地が出てきそうです。そんなMX-81が、今から40年以上も前に誕生していたことは驚くべき事実です。
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みんなのコメント
MXの名に恥じないマイルストーンとなったコンセプトカーだと思う