新型ランドクルーザー300が登場し、各メディアが試乗記を掲載しているが、実物を見ると威圧感が凄い。最上級グレードのZX系、TOYOTAのデカいロゴが入るGR SPORTもこれまたオラオラ顔で、新たなグリル王の誕生かと、思わせる強面顔である。
これはもしやすると、日本一のオラオラ顔と評されるアルファードを超えたのか?
装備を割り切り破格の安さに!? 新型ワゴンRスマイルの長所と短所
ということで、モータージャーナリストの清水草一氏に、「グリル王日本代表選手権」と題して、ランキングしてもらった。
文/清水草一
写真/トヨタ、日産、ホンダ、三菱
【画像ギャラリー】新型車のフロントグリルをランク付け!! 見事1位に輝いたのは?
■オラオラ顔じゃないと日本じゃミニバンは売れない?
強烈な個性を放つオラオラ系グリル。今や売れ行きを左右するほど重要な存在に
威圧感のカタマリのような、巨大なオラオラグリルが当たり前のものになって久しい。言うまでもなくその代表がアルファードである。顔面が平面的で面積も大きいミニバン系では、オラオラグリルでなければ販売現場での苦戦は免れないのだ。
アルファードを筆頭に、ほとんどすべてのミニバンがオラオラグリルと化したなか、おとなしめグリルのホンダ・フリードが孤軍奮闘しているが、同じくおとなしめグリルで登場したステップワゴンは完璧に討ち死にし、遅ればせながらオラオラな化粧を施さねばならなかった。まさに生き残るにはオラオラするしかない、オラオラグリル戦国時代である。
そこへ、思わぬ伏兵が登場した。ランクル300である。
これまで国産オラオラグリル界では、ミニバンが圧倒的に優位だったが、そこへクロカンSUVのランクルが殴り込みをかけたのだ!
写真を見た段階では、グリルがスポーティにブラックアウトされたGRスポーツが断然カッコイイ! と思ったものの、実物を見ると、太いメッキグリルの標準モデルの威圧感がハンパなく、見るほどにクセになってしまう。
写真では「品がないなぁ」「バランスが悪いなぁ」と思ったが、実物はその品のなさ、バランスの悪さが武器となり、アルファード的な「悪羅(オラ)」のオーラをオラオラ纏っていたのである。
ランクル300の標準モデルのグリルは、非常にオーソドックスな横桟タイプで、意匠にそれほどの特徴はないが、その下側を支える形で配置された黒い頬ひげグリルが大きなアクセントとなり、総合的に優れたオラオラグリルを形成しているのである。
そこで今回は、「グリル王日本代表選手権」と題し、国産現行モデルのオラオラグリル度をランキングしてみた。エントリーは編集部選定の10台。新規モデルを厚めに入れてあるのでご了承ください。
■第10位:ヴェゼル/上品でオシャレなボディ同色のグリル
威圧感が強いオラオラグリル 第10位:ヴェゼル
ヴェゼルのボディ同色グリルと初めて対面した際に、一瞬「うげえ」と思った人は少なくなかった……らしい。そのちょっと斬新な感覚には、新手のオラオラ感がなきにしもあらず。
しかし、なにしろグリルがボディ同色ということは、基本的に目立たないということで、目が慣れればオラオラ感は大幅に減じ、上品でオシャレに感じるようになる(はず)。
ホンダアクセスのオプションで、メッキグリルも用意されているが、これは逆にまったくフツーで、単にヴェゼル本来の気品を削いでいるだけ。オラオラ感もまるで弱い。
五角形型のボディ同色グリルが話題に。ホンダアクセスのオプションで黒色グリルも選択できる
■第9位:NSXタイプS/やっとスーパーカーらしい顔になった!?
威圧感が強いオラオラグリル 第9位:NSXタイプS
「スーパーカーなのに、グリルが前期型レジェンド風のメッキ付き」で登場した2代目NSX。スポーツカーにゴージャス志向のメッキグリルは絶対ダメ! が不文律だが、あえてそれを採用したのは、オラオラ感のためだったのか?
結局不評に勝てず、マイナーチェンジでメッキ部をボディ同色に変更。しかしまったく販売の後押しにはならず、最終300台限定の「タイプS」で、ようやくスーパーカーらしい、シンプルな「ほぼ空気取り入れ口だけのグリル」になった。
これまでのグリルに比べれば最も戦闘的ではあるが、それほど迫力があるわけではなく、平凡なスーパーカールックになっただけ、と言えなくもない。
2021年8月30日に正式発表されたNSXタイプS。中央開口部を拡大したバンパーが空力性能に寄与し、スーパーカーらしさを演出する
NSX後期型は不評だったフロントグリルのメッキ部分をボディ同色に変更した
■第8位:レジェンド(後期型)/カラス天狗のような五角形グリル
威圧感が強いオラオラグリル 第8位:レジェンド
今年いっぱいでの販売中止が決定したレジェンドだが、その五角形グリルはカラス天狗のようで、それなりの威圧感をもっていた。
ただ、その威圧感は主に、「こんなクルマ、見たことないなぁ」という異物感が生むもので、あまりにも売れてなくて珍しいのと、どうにも全体にマッチしていないがゆえのものだった。
カラス天狗を思い起こさせる五角形グリル。どこかアンバランス感が否めない
■第7位:ノートオーラNISMO/ブラックアウトした戦闘的なグリル
威圧感が強いオラオラグリル 第7位:ノートオーラNISMO
ノートオーラは、ノーマルのノートに比べてグリルの質感をアップしている。ノートとノートオーラを見比べると、やはり「クルマの顔はグリルで決まるんだな」と納得させられる。
ノートオーラNISMOは、ノートオーラのグリルをさらに上質かつ戦闘的に武装している。グリルの下側をブラックアウトして、エアダム上部まで貫通させ、開口部を拡大したような視覚効果を与えつつ、サイドのメッキ部がシッと太く上質に変更。フロントフェイス両端には「牙」を生やした。
絶対的なオラオラ感は大したことはないが、NISMOに共通する赤の差し色と相まって、「飛ばす気マンマン」には見えるので、バックミラーに映った時の威圧感はそれなりに高い。
NISMO専用デザインでがっつり武装した次世代のシティレーサーだ
■第6位:ルーミーカスタム/ぶっとい横桟グリルで品がない
威圧感が強いオラオラグリル 第6位:ルーミーカスタム
ルーミー/タンク/トール/ジャスティの4兄弟で出発したが、トヨタディーラーの全車種販売化による2020年9月にマイナーチェンジで、タンクが廃止され、ルーミーに統合された。
4兄弟のうちタンク(とトール)の顔は、控え目でバランスがよかったので、それが廃止されてミニアルファード顔のルーミーが残ったのは残念だったが、統合に伴うマイナーチェンジによって、ルーミーカスタム系の顔は、従来よりさらにオラオラ系に。それは、ぶっとい横桟メッキグリルが両端でラウンドするという、ひたすら「幅を広く見せたいぞ!」という品のない方向性になった。
この品のなさは、ここまでやればご立派と言うしかなく、小さいながらにキレたら何するかわかんない人みたいな、凶悪なオーラを放っている。
カスタム系グレードは横桟メッキグリルを採用、ワイド感が増した
■第5位:エスクァイア/顔の8割を占める「顔中グリル」
威圧感が強いオラオラグリル 第5位:エスクァイア
トヨタディーラーの全車種販売化にともなって廃止が決まったが、ここまでフロントフェイスに占めるグリル面積比率が高いクルマは他になかった。とにかく、フロントフェイスと言える面積の8割はグリルが占めていたのだから、まさに「顔じゅうグリル」だ。
ただ、グリルの意匠が比較的シンプルな空気清浄機系なので、それほどの威圧感には結びついておらず、面積の割には第5位にとどまった。
フロントフェイスの約8割を占める大きなグリルながらオラオラ度は高くなく、むしろ精悍な印象だ
■第4位:レクサスLX/取って付けました感いっぱいのスピンドルグリル
威圧感が強いオラオラグリル 第4位:レクサスLX
レクサスのスピンドルグリルは、登場当初こそ「下品だね」「なんだありゃ」みたいなネガティブな反応が相次いだが、登場から10年を経て、スピンドルグリルありきでデザインされたモデルが大部分を占めるようになり、完全に馴染んだ。世間的にも完璧に定着し、迫力ある高級感を演出する大成功グリルの地位を占めるにいたった。
よって、すでにスピンドルグリルには特段の威圧感はないものの、レクサスLXだけは、その存在のレアさと、ランクル200系に取って付けました感の合わせ技により、強力な迫力を感じさせる。
ランクル200の大型ボディにスピンドルグリルを組み合わせた。とにかくデカい…
■第3位:eKクロス/なりは小さいが存在感はデリカD:5以上!?
威圧感が強いオラオラグリル 第3位:eKクロス
デリカD:5とともに、三菱ダイナミックシールドを代表するオラオラグリルとして君臨している。
もちろんデリカD:5の電気シェーバーグリルの迫力も十分ながら、はるかに小さいサイズでそれを上回る「うげぇ」感を発揮しているeKクロスの「どブスグリル」の威力は、凄まじいの一言。思ったほど売れてないので、依然として適度に珍しく、見た時のインパクトはまだまだ高い。
X字型のダイナミックシールドはやっぱり強烈。オラオラ度はデリカD:5以上!?
■第2位:アルファード/無敵の甲冑グリルは今や月販1万台
威圧感が強いオラオラグリル 第2位:アルファード
オラオラグリル界の無敵の帝王と言えば、アルファードの甲冑グリル。あるいは銀歯グリル、それとも進撃の巨人グリルでしょうか? ありとあらゆる「怖い顔」の形容詞が当てはまるこのグリルは、まさにオラオラグリルの大革命だった。トヨタデザイン部門の大胆さに、心の底から敬服します。
しかし、さすがに月間1万台も売れていると、目も慣れてくる。目が慣れると、「すごい顔だけど意外と平板だな」みたいなことを感じたりもする。ミニバンは室内空間最優先につき、顔に突起部が作れないがゆえである。
もちろん、平面でこれだけの迫力を生み出した革命的デザインであることは間違いないのですが、ついに今回1位の座から転落し、2位になりました。土下座。
マイナーチェンジで縦型のメッキ加飾が加わり、いっそう迫力が増した
■第1位:新型ランクル300/ついに王者アルファードを抜いた! 勝因は飛び出すオラオラグリル
威圧感が強いオラオラグリル 第1位:新型ランクル300
GR SPORTの専用フロントグリルもなかなか威圧的だが…
アルファードに比べればオーソドックスなグリルだが、前述のように周囲の頬ひげグリルとのコラボレーションがすばらしく、その威圧感はタダモノではない。まだ猛烈に珍しいこともあり、街中でたまたま見かけると、怪物級のインパクトがある。
その源泉は、標準モデルのメッキグリルの持つ立体感、凹凸感だ。オラオラミニバンの帝王・アルファードと比べるとわかりやすいが、グリルの出っ張り感がケタはずれなのだ。まさに「飛び出すオラオラグリル」。またしてもトヨタ様に一本取られました。
写真ではオーソドックスに見える標準仕様だが、横一直線のグリルには結構な凹凸がある。実物とのギャップはGR SPORT以上
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