長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価し、ベスト5のドライバーを選出した。今回はシンガポールGPの週末を振り返る。
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【全ドライバー独自採点&ベスト5/F1第17戦】完璧なピアストリ。クラッシュを回避すべきだったサインツとペレス
マリーナベイ・サーキットが突きつける厳しい要求と、ピレリの最新世代タイヤのピーキーさの組み合わせにより、シンガポールはドライバーたちにとって非常に困難なグランプリとなった。あまりにも難しいチャレンジだったため、誰も完璧な週末を過ごすことはできなかったが、4人のドライバーは完璧に近いパフォーマンスを見せた。
【2024年F1第18戦シンガポールGP ベスト5ドライバー】
■評価 9/10:圧勝も、不必要なミスを犯したノリス
ランド・ノリス(マクラーレン):予選1番手/決勝1位
ポールポジションから圧勝したランド・ノリス(マクラーレン)は、FP1開始直後から週末を支配したため、このランキングのトップにふさわしい選択だ。彼自身が認めているように、彼をポールに導いたラップは雑なものだったが、それでも直近のライバルを0.2秒以上引き離すのに十分だった。
完璧なスタートを切って、レースをコントロール。最初はタイヤを温存していたものの、チームから許しを得ると、ノリスは驚異的なペースを見せ、完璧と評価できる夜を過ごすかにみえた。しかし彼は、避けられたミスをふたつ犯した。単独走行中と、フランコ・コラピントを周回遅れにする際のミスで、ノリスはレースを失う危険があった。本来なら簡単に勝てるはずのレースを自分で台無しにするところだったことを考えると、満点を与えることはできない。
■評価 9/10:見事に挽回、2位を受け入れて堅実に走ったフェルスタッペン
マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選2番手/決勝2位
マックス・フェルスタッペン(レッドブル)にとって、今回の予選と決勝で2位獲得という結果は成功とみなすことができる。通常のコンディションでは、フェラーリに対抗するペースはなかったため、予選でフェラーリのふたりが失敗したことに、フェルスタッペンは感謝すべきだろう。
金曜日のひどい状況からうまく立て直し、予選Q3で素晴らしいラップを決めて、フロントロウを確保した。レースでは、5周を終えた段階で、2位を受け入れたと本人は語っている。フェルスタッペンは、それ以降はタイヤを長持ちさせ、不必要なミスを避けて走り、貴重な18ポイントを獲得した。
■評価 9/10:最大限の結果を持ち帰ったラッセル
ジョージ・ラッセル(メルセデス):予選4番手/決勝4位
ジョージ・ラッセル(メルセデス)は、予選でチームメイトに0.026秒差で負けたが、メルセデスからベストのタイヤ戦略を授けられ、それを最大限に活用した。最初の5周ではルイス・ハミルトンに追いつくことはできなかったものの、戦略の違いにより、チームメイトをオーバーカットし、前に出た。しかし、オスカー・ピアストリからポジションを守るにはタイヤの寿命が十分ではなかったため、3番手を維持するために戦うことはなかった。それでも、最後の5周でシャルル・ルクレールから4番手を守るだけの余力はあり、チームに最大限の結果を持ち帰った。
■評価 9/10:困難なレースで真価を見せたアロンソ
フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン):予選7番手/決勝8位
困難なコンディションの時こそ、優秀なドライバーが上位に浮上する。今回のフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)がまさにそうだ。
マシンにはQ3に進出する力がなく、チームメイトは再びQ1で敗退したにもかかわらず、アロンソは7番手を獲得。レースの最初のスティントでニコ・ヒュルケンベルグのすぐ後ろをキープ、DRSを得て、タイヤ交換までルクレールを抑え切った。戦略を活用してヒュルケンベルグの前に出て“ベスト・オブ・ザ・レスト”の8位をつかんだ。
■評価 8/10:得意のコースの予選で輝くも、戦略を失敗したハミルトン
ルイス・ハミルトン(メルセデス):予選3番手/決勝6位
得意とするこのコースで、ルイス・ハミルトン(メルセデス)は予選でチームメイトに勝った。チームは、レースでフェルスタッペンを倒すため、スタートでソフトタイヤを履かせるという賭けに出た。ノリスは別次元にしても、フェルスタッペンの前に出て、ペースをコントロールすることを目指したのだ。しかし、スタートのリアクションタイムがあまり良くなく、ハミルトンはターン1に向けてフェルスタッペンに並ぶことしかできず、その時点で望める最高順位は3番手となってしまった。
さらにタイヤが期待していたほど長持ちせず、ハミルトンはトップグループのなかで、最初にピットイン。自分より遅いマシン3台をオーバーテイクしつつ、タイヤを良い状態に保ちながら、最後まで走り切るという仕事を成し遂げなければならず、終盤にはタイヤがフレッシュなピアストリとルクレールと戦えるだけのグリップがなくなり、ハミルトンは6位に落ちてしまった。
【ベスト6以下のドライバーとその戦い】
ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース):予選6番手/決勝9位
=評価 8/10:ハースのマシンでQ3に進出、レース最初のスティントではアロンソを抑えたが、後にアンダーカットされた。それでもペレスの前で9位をつかんだのは素晴らしい。
オスカー・ピアストリ(マクラーレン):予選5番手/決勝3位
=評価 7/10:週末を通してノリスのペースには及ばず、予選では5番手だった。しかしレースで素晴らしい走りを見せて、チームメイトとともに表彰台に上がった。
シャルル・ルクレール(フェラーリ):予選9番手/決勝5位
=評価 7/10:今回、ノリスと戦える唯一のドライバーのように見えたが、Q3で1周のみのアタックを走った際に、ミスを犯し、トラックリミット違反でタイム抹消、すべてが台無しになった。レースでは、グリッド9番手から5位まで回復する素晴らしい走りを披露した。
エステバン・オコン(アルピーヌ):予選15番手/決勝13位
=評価 7/10:チームメイトバトルを制した。Q2に進出、レースでは激しい戦いの末に13位でフィニッシュした。
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ):予選11番手/決勝リタイア
=評価 7/10:Q3進出かと思われたが、重要なQ2ラップでタイヤのグリップ不足を訴えた。レーススタートでは、チームメイトを避けるためにターン1でワイドになり、早めのピットインを行った後、良いペースで周回していたが、パワーユニットの問題によりリタイアを余儀なくされた。
フランコ・コラピント(ウイリアムズ):予選12番手/決勝11位
=評価 7/10:速さとレーステクニックで今回も強い印象を残した。新しいサスペンションではないマシンで、週末を通してアルボンと互角に戦った。ファーストスティントではペレスからポジションをうまく守り切った。しかしターン1での動きはリスキーで、自分自身と他の2台をリタイアに追い込んだ可能性もあり、そうならなかったのは非常に運が良かったといえるだろう。
カルロス・サインツ(フェラーリ):予選10番手/決勝7位
=評価 6/10:ルクレールほどの速さを見せられずに苦労し、Q3初めに珍しいミスを犯した。決勝最初のラップはうまくいかなかったが、最終的には7位まで挽回した。
角田裕毅(RB):予選8番手/決勝12位
=評価 6/10:予選で素晴らしい仕事をして8番手を獲得。しかしレースのスタートで出遅れ、ポイント圏外に落ち、最後までトップ10に戻ることができなかった。
ダニエル・リカルド(RB):予選16番手/決勝18位
=評価 5/10:彼にとって最後の出場になったグランプリだったが、週末を通してチームメイトには届かなかった。
バルテリ・ボッタス(キック・ザウバー):予選19番手/決勝16位
=評価 5/10:予選ではチームメイトよりはるかに速かった。しかしレース序盤にブレーキの問題に悩まされた。
周冠宇(キック・ザウバー):予選20番手/決勝15位
=評価 5/10:予選は良くなかったが、それに比べると決勝ははるかに好調で、最終的にボッタスとピエール・ガスリーの前でフィニッシュした。
ピエール・ガスリー(アルピーヌ):予選18番手/決勝17位
=評価 4/10:週末を通してペースが足りず、レース終盤までピットインしないという賭けが裏目に出て、ザウバー2台より下位に終わった。
ケビン・マグヌッセン(ハース):予選14番手/決勝19位
=評価 4/10:ヒュルケンベルグに太刀打ちできず、レース中にウォールに接触、ファステストラップになるはずだったラップは、トラックリミット違反により抹消された。
セルジオ・ペレス(レッドブル):予選13番手/決勝10位
=評価 3/10:予選の初めからフェルスタッペンと同じレベルでは走れず、Q2で敗退。レースではチームメイトのほぼ1周遅れで1ポイント獲得にとどまった。
ランス・ストロール(アストンマーティン):予選17番手/決勝14位
=評価 3/10:今回も期待外れの週末だった。アロンソがQ3に進出している一方で、ストロールはQ1で敗退。レースはベテランから47秒遅れのポイント圏外という結果に終わった。
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