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【背景にマツダの苦悩?】マツダMX-30のCM 外国人/海外ロケ地をやめたワケ

掲載 更新 37
【背景にマツダの苦悩?】マツダMX-30のCM 外国人/海外ロケ地をやめたワケ

マツダMX-30のCM テーマは日本

text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)

【画像】似ているようで全然違う?【マツダMX-30とCX-30を比較】 全214枚

editor:Taro Ueno(上野太朗)

2019年11月に「日本車のTVコマーシャル、外国人が海外で運転するシーン 理由は? 」という記事を掲載した。

最近は日本車のCMなのに、外国人が海外で運転している映像が増えたからだ。

マツダも同様で、マツダ3、CX-5、CX-30など、いずれも海外と思われるシチュエーションで撮影されていた。それがMX-30のCMでは、日本の建築家や音楽家が起用されている。

なぜMX-30のCMは、日本に焦点をあわせたのか。マツダに尋ねると以下のように返答された。

「MX-30はさまざまなお客さまのニーズに寄り添い、マツダブランドの間口を広げるクルマです。その魅力を、これまでのお客さまに、そして新たなお客さまへお届けできるよう、クルマのコンセプトであるわたしらしく生きる、を体現しているアーティストにコラボレーションしていただきました」

日本人で、なおかつCMを職業にしていないアーティストを登場させることにより、MX-30を身近に感じさせる映像に仕上げられている。

外国人ではなく日本人を起用したワケ

従来の外国人が海外で運転する映像をCMで放映する背景には、クルマに注目してもらう目的がある。

日本人が運転すると、心情的にクルマ本体よりもドライバーに目が向き、イケメンだとかカワイイなど容姿が気になってしまう。走っている場所が日本の街中であれば、背景にも目が向く。

しかし、外国人の運転で、海外の街中や自然の中を走る映像なら、ドライバーや背景に関心が集まりにくい。結果的にクルマに集中してもらえるメリットが生じる。

また海外なら、朝日や夕日を浴びながら荒野を疾走する場面など、日本では撮影不可能な映像表現もおこなえる。

クルマを魅力的に見せるうえでも自由度が広がり、外国人の運転で海外を走るCMが数多く製作されてきた。

その半面、外国人と海外の組み合わせは、当たり前の話だが日本を意識させない。MX-30はこの表現方法をあらためた。

背景にはマツダの苦悩があった。

魂動デザインと宣伝方法 裏目に?

マツダは2012年に発売された先代CX-5から、魂動デザインとスカイアクティブ技術に基づく新しい商品ラインナップを発足させたが、日本では販売面で成功していない。

マツダの2010年(暦年)における国内販売台数は22万3861台だったが、最近はコロナ禍の影響を受ける前の2019年でも、20万3576台に留まる。2020年は17万7043台だ。

販売不振の理由が明らかになったのは、現行マツダ2(旧デミオ)の発売直後におこなわれた市場調査だった。

マツダ2はコンパクトカーだから、さまざまな女性にインタビューしたが、そこからは「マツダ2のようなスポーツ性の高いクルマは、わたしには運転できない」といった意見が多く聞かれた。

魂動デザインとその宣伝方法が、クルマ好きではない普通のユーザーから敬遠されていることが分かった。

2014年に放映されたマツダ2のCMを振り返ると、外国人と海外の街並みが撮影され、キャッチコピーは「クリーンディーゼル×マツダデザイン」だ。

ここから「マツダ2のようなスポーツ性の高いクルマは、私には運転できない」という感想も生まれている。

MX-30のコンセプトは、この経験をベースに生まれた。それは「今までのマツダ車に興味を持てなかったお客様にも振り返って欲しい。マツダブランドの間口を広げるクルマを造りたい」というものだったから、CM表現も従来とは違うものになった。

原点回帰 販売方法やCMすべて見直し

MX-30は、いわば先代CX-5から始まったマツダ車の反省を踏まえて開発された。

ボディサイズはCX-30とほぼ同じで、観音開きのドアを採用したから特徴が分かりにくいが、MX-30は従来のマツダ車とはコンセプトが異なる。

スポーティな走りの良さではなく、リラックスできる運転感覚と居住性を重視した。

従来のマツダ車では獲得できなかった顧客ニーズに応えるため、エンジンやプラットフォームを共通化しながら、正反対のクルマ造りを目指している。

そこでTV CMも新しい手法で製作された。

MX-30のコンセプトは「わたしらしく生きる」だから、日本のユーザーに向けたCMとして「わたし」を日本のアーティストで表現した。

さらに販売方法も変えている。

MX-30までのマツダ車は、納車を伴う発売日の数か月前から、予約受注をおこなっていた。

早い段階から受注すれば、生産を始める時には、受注台数、売れ筋のグレード/オプション/ボディカラーなどが分かっている。メーカーは生産計画を立てやすく、生産開始と同時に納車も始められる。メーカーの効率の高さを優先させた。

その代わり受注を始める時には、販売店に展示車や試乗車がなく、一部のグレードは動力性能や燃費数値が未定な場合もある。限られた資料だけで購入の判断を迫られるから、ユーザーや販売店のスタッフを困惑させた。

そこでMX-30では、売り方を従来の方法に戻している。

予約受注はおこなったものの、半月程度に抑えられ、発売された時には試乗もできた。

実車を見られない状態でリスクの伴う商談をおこない、予約受注の後は長々と待たされる不満を解消している。

MX-30のCMが日本人を起用したことも、「売り方を元に戻す」一環だ。つまりMX-30は、車両コンセプト、内外装のデザイン、後方視界、乗り心地、受注や発売の方法、CM製作まで、従来の魂動デザインのマツダ車とは異なる原点回帰の方針を打ち出した。

「こうあるべき」にとらわれないMX-30

マツダのCMを見ると、最近ではCX-5やCX-8も変化している。

発売当初は外国人の運転で海外の街中を走るイメージだったが、今は日本人が運転して日本の自動車専用道路を走る映像も使われている。

先に述べた国内販売の低迷もあり、クルマづくりから販売方法、CMの表現まで、さまざまな部分を見直している。

魂動デザインとスカイアクティブ技術によるマツダ車は魅力的で、その表現方法として外国人と海外ロケの組み合わせも成り立つが、それだけに終始するとすべてが硬直化してしまう。

従来のマツダ車は、内外装のデザインから運転感覚まで、「こうあるべき」という束縛がハナに付いた。

社内的な「こうあるべき」は、どの企業にもあることだが、マツダでは商品、販売、宣伝にまで明らかに滲み出し、ユーザーから見ても堅苦しさを感じさせた。

その結果、マツダ車の売れ行きも低迷している。好きな人にはすべてのマツダ車が歓迎されるが、合わない人は全滅になってしまう。CX-5は嫌いだけどマツダ2は好き、という選択になりにくい。

しかし、MX-30から始まったリラックス路線は、堅苦しさから解放されて自由な雰囲気だ。

従来のカッコ良くてスポーティな路線のほかに、MX-30のコンセプトも加わると、マツダ車を選ぶ楽しさが増して売れ行きも伸びる。それを訴求するCMのバリエーションも、広がりをみせるに違いない。

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みんなのコメント

37件
  • いやいや。
    マツダは必死で経費削減してるよ。赤字減らそうと。
    昨年後半からTVCMは殆ど流れなくなった。
    ここ半年くらい殆ど見ないでしょ?
  • 欧州車の様なメーカーが兄弟車と判るような類似デザインをするのはブランドをハッキリさせたい意図があったからだと思うけど、多くの人達はいい意味で新し物好きだから 日本では敢えてブランドデザインの統一をしなかったんだと思う、アメリカや中国で日本メーカーが欧州メーカーを圧倒しているのが、ブランドデザインの統一は必ずしも必要はなく、統一する必要があるのはブランドイメージの方だと証明してるようなものかな、兄弟車がみな同じ系統の顔してたら、かえって分かりにくくなるのかもしれない、ブランドイメージだと堅実のトヨタ、新メカやレースイメージのホンダ、シンメトリカル四駆のスバル 広告の派手な日産、というような感じかな、じゃあマツダは?ってのが問題なのかな?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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